第54話 友達?

 友達が一人もいない事に落ち込んでいる(らしい?)千奈。


「ま、まあまあ。センナさんなら、友達なんてそのうち出来ますよ!」


 ヒカリが少し困った表情となりながらも、笑顔で千奈を励ましている。


「ほんと? 私、15年もの間、全然一人も全く友達ができなかったのだけど、そんな私でも友達ができるの? 保証してくれる?」


「う……」


 残酷な現実を突きつけられて、ヒカリは絶句している。


「だ、大丈夫です! センナさんはもうすでに、一人は友達を作っているじゃないですか! 私が友達です!」


「は? 友達? ヒカリさん、私と友達のつもりなの?」


 千奈が鋭い目でヒカリを睨みつける。とても威圧感があって怖い。


「あ……ご、ごめんなさい。私なんかが、センナさんの友達など、おこがましいですよね」


 ヒカリはそんな千奈の目を見て、おずおずと申し訳なさそうな態度となったが……


「やったわ! 私、すでに友達ができていたのね! 友達! いい響きね! ふふふ」


 千奈は次の瞬間には、満面の笑みを作って喜んでいた。嬉しかったらしい。

 うん、そうだ。

 色々と勘違いされやすいが、やはりこの子は良くも悪くも正直な性格なのだ。


 笑った顔は本当に綺麗である。千奈もヒカリに負けていないくらい美少女だ。

 それなのに友達が一人もいなかったのが、おかしいのだ。

 そんな千奈の様子を見て、ヒカリもホッと胸をなでおろしている。


「センナさんは綺麗だし、文武両道なので、友達ができなかったのは、きっと運が悪かっただけですね!」


「そうよね。逆らう敵は全て壊滅してきたし、私の普段の行動には、何も問題はなかったはずよ」


「か、壊滅……」


 千奈の言葉を聞いたヒカリは恐怖に慄いている。

 やはり、ちょっと言葉に攻撃力がありすぎるかもしれない。


「あ、それと、その時に兄さんをいじめていた奴らもいたから、片付けておいてあげたわ。他にも、兄さんに関わろうとしている奴ら全員にも、脅しを入れておいてあげたから、安心してね。礼はいらないわ」


 ついでに、僕に友達ができなかった本当の理由も判明しました。


「でも私、なんだかやれそうな気がしてきたわ。もっと強くなって、友達をたくさん作って見せるっっ!」


「あ、いえ、強さの方は、もういいかと……」


 ヒカリの言葉も聞かず、握りこぶしを作って空を見上げる千奈。

 既に方向性を見誤っている気がするけど………まあ、いいか。

 ともあれ、天才である千奈がパーティーに加わってくれた。


 こうして、痛みを感じない体質で『俺』というやばい奴を内に秘めている僕。

 そして死神ヒーラーと呼ばれているヒカリに続いて、友達が一人もいない天才の千奈が我がパーティーに加入することになった。


 なんだろう。どんどん凄まじいパーティーとなっていくような気がする。

 気のせいだろうか。


 ちなみにこの後、恐ろしく強く無表情の毒舌美少女が真の『ロックガルドの悪魔』として町に認定されるわけなのだが、それはまだ先の話であった。

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