第52話 これが僕の最高の報酬
町に戻ると、僕らはミリアたちと合流した。
「すまない。結局、私たちは何の役にも立てなかったな」
解決したことを報告すると、二人は揃って頭を下げて来た。
ちなみにリックの手は誰かに回復魔法をかけてもらったようで元通りになっていた。
「いや、今回の件は全て俺のせいだ。トオル、すまなかった」
特にリックは自分が真っ先にやられた事について、かなり責任を感じているようだ。
「お前の事を役立たずと言ってすまない。お詫びをさせてくれ。何か欲しいアイテムはあるか? それとも、武器や防具がいいか?」
「いや、あの、僕もあまりたいしたことはできなかったし、気にしなくても……」
そもそも今回、ハイドラを倒したのは人質のはずの千奈本人だし、活躍していたのは主に『俺』であり、『僕』ではない。
あ、でも……一つだけリックに求めるものがあった。
「それじゃあさ。一つだけ、お願いを聞いてもらっていいかな?」
「ああ、なんでも言ってくれ」
「ヒカリに、謝ってほしいんだ」
「えっ!?」
その言葉に最も驚いていたのは、ヒカリだった。
「そうだったな。ヒカリ、色々と酷い事を言ってすまなかった。俺は君の事をきちんと理解できていなかったんだ」
「そ、そんな……リックさんは間違っていません。私は死神ヒーラーで、皆さんに取り返しの付かない事を……」
「まあまあ、いいじゃないか。ほら、ヒカリ。せっかくだし、仲直りしなよ」
「…………そうですね。あの、私の方こそ、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
そうして、リックとヒカリが握手をする。
うん、これでいい。モヤっとした部分が晴れた。
アイテムとか武器なんていらない。
これが僕の最も見たかった光景で、最高の報酬なのだ。
「トオル。この町を救ってくれてありがとう。元気でな」
「うん、そっちこそ」
そうして、僕らはミリアたちと別れた。
町を救う……か。
僕みたいなのがそんな大きなことができたなんて、夢みたいだ。
僕が目指すヒーローに少しだけ近づくことができたのかもしれない。
まあ、ほとんど『俺』と千奈のおかげなんだけどね。
千奈を探すために来たこのロックガルドだが、本当にとんでもない事に巻き込まれてしまったものだ。
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