第51話 大きなおっぱいと小さなおっぱい

 なぜヒカリがこんなところにいるのか気になったが、今はそれどころではない。


「おっと。再会を喜んでいるばあいではありませんね。さあ! 早く脱出しましょう!」


「わ、わかった!」


 足が復活したので、これでハイパーボードを起動できる。

 僕たち三人は、一斉にハイパーボードに乗って天井から脱出した。


 そのまま安全な位置まで離脱すると、ちょうどそのタイミングでハイドラのアジトが大爆発を起こした。


「ふう、ギリギリだったね」


「よかったです」


 僕たちは着陸して、三人で揃って息をついた。


「でも、どうしてヒカリがあの場所にいたんだ?」


「ごめんなさい。私、どうしても役に立ちたくて、ハイドラに捕まったフリをして潜入してみたんです。でも、実際は手が拘束されてしまって、何もできませんでした」


 な、なんという無茶なことを……! ヒカリらしいとは言えるが。


「とはいえ、最終的には役に立てたのでよかったです! やはり、私の中の死神は最強ですね!」


 最近はヒカリも自らの欲求を隠す事をしなくなってきたみたいだ。


「それに、最近は回復魔法ができなくて、欲求不満だったのです。久々にすっきりしました。とても気持ちよかったです。ふふ」


「誤解されるような言い方は止めようね!? 千奈が完全に引いているよ!」


「はっ!? 失礼しました。トオルさんの妹のセンナさん……ですね? 私はトオルさんの仲間で、ヒカリといいます。よろしくお願いしますね!」


「え、ええ。よろしく。兄さん、この人の事なんだけど……」


「ああ、僕が説明するよ」


 千奈にヒカリと組むことになった経緯を話した。

 回復魔法が得意なこと、死神ヒーラーと呼ばれて、強制的に回復魔法をかけてしまう部分も説明した。


「ふーん。死神ヒーラーね。まあ、問題は無いわ」


「そ、そうか。よかった」


 強制的に回復魔法をかけるのは大問題だと思うが、それでも千奈は気にしないらしい。

 まあ、ありがたいことだ。

 ヒカリを追い出そうとするよりは、よほどいい。


「敵なら殺そうと思ったけど、兄さんの味方なら歓迎するわ。よろしくね」


「はい! よろしくお願いしま……ええっ!? 私、殺されるところだったんですか!?」


 こらこら、初対面でいきなり殺すなんて単語をちらつかせるんじゃない。


「大丈夫。あなたが悪い女じゃないのは、匂いで分かるから」


 だから、匂いってなに!? なんでそんなのが分かる?

 いや、ヒカリを悪く言わないのは助かるんだけどね。


 千奈には独自の嗅覚みたいなのがあるのかもしれない。

 まあ、ヒカリが千奈に受け入れてもらえてよかった。

 僕は安堵の息をついて、ヒカリの方を見た。


「うっ!?」


 そこで気付いてしまった。

 彼女はとてもみすぼらしい格好をしている。


 おそらく奴隷として潜入する時に服を取られてしまったのだろう。

 具体的に説明すると、薄い布の服が一枚だ。


 そして、その薄い布のような服からは、ヒカリの豊満な胸の形がくっきりと見えていたのだ!


 以前に抱きしめられた時に薄々気付いていたが、彼女は着やせするタイプのようだ。


 どうやらこの世界、服装やアクセサリーはキャラメイク通りだが、体形や顔は、もとの世界に準じるらしい。


 はっきり言ってしまうと……ヒカリさんは、おっぱいがとても大きかったのですっっ!


 こ、これはいかん。変な気持ちになってしまいそうになる。

 目を……逸らしておこう。


「兄さん?」


 逸らした目線の先に千奈が!

 まずい、この子もとても薄い布の服を着ていたはずだ!

 だが……


「…………」


 お、おお。なんと素晴らしき『絶壁』か。

 まさに神が作りたもうた神秘なる平ら。

 これを見ても、なにも感じない興奮しない。


 むしろ、和む。実に和むぞぉぉ!

 僕の邪なる心がどんどん浄化されていく。

 さすが愛しの我が妹。ありがとう、千奈。


「兄さん、何を考えているの?」


「な、なにも考えていないヨ?」


「ふ~~~~~~ん」


 気付いたら、千奈が鬼のような顔をしていた。怖っっ!?


「むむ。お二人で、何の話をされているんですか??」


「ああ、説明するわ。兄さんね、ヒカリさんの胸をいやらしく眺めて興奮して……」


「よさんかぁぁぁぁぁぁ!」


 まあ、なんにせよ、みんなが無事でよかったよ。

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