第42話 リックとの再会

「リック、待たせたな。仲間を連れてきたぞ」


「お、お前は、トオル!?」


 僕の顔を見て驚くリック。まさか僕とは思わなかったのだろう。


「えっと……久しぶりだね」


 とりあえず、友好的な雰囲気を出してみた。

 リックは以前ヒカリのことを悪く言っていたので、僕の印象としてはあまり良くない。


 それでも、ここで喧嘩でもしようものなら、速攻で追い出されてしまう可能性もある。

 そんなことになってしまったら、せっかくのヒカリの行動が水の泡だ。


「ふん。お前も無事にこの町にたどり着いていたみたいだな」


 リックからもあまりいい印象を持たれていないようだ。

 それでも、ここはできる限り嫌われないようにしておきたい。


「アモンドは、どうしたんだ?」


「あいつは、もう戦えないよ。あの時の恐怖が今でも頭から離れないらしい」


 そうか。リックからの印象が悪い理由が分かった。

 アモンドが再起不能になったのは、完全に僕達のせいだからな。


「ごめん」


「別にお前のせいじゃない。そっちこそ、あの女はいないのか?」


「今はいないよ」


「なら、安心だな。あのイカれ女がいたら、まともに作戦も立てられないからな」


 リックの言葉を聞いて、皮肉にもヒカリの作戦は間違っていなかったことが証明された。

 もし、この場にヒカリがいたら、僕はパーティーに入ることができなかっただろう。


 だからこそ、明日の作戦は確実に成功しなければならない。

 リックはヒカリに対して辛辣だが、それはハイドラせいで余裕が無いからだと思う。今は緊張感でピリピリしているだけだ。

 逆を言えば、ハイドラさえ倒せは全て解決する。そう思いたい。


「リック。君とトオルは、知り合いだったのか?」


「ああ。だがミリア。俺はこいつを仲間に入れるのは反対だ。こいつはレベルが1だ。そして、実力は素人となんら変わらない。これでは無駄死にするだけだぞ」


「……あ」


 しまった! その辺りは考慮していなかった。

 リックの印象が悪かったのは、僕の性格とかではなく、単純に実力不足だったのだ。


 僕の弱さは、以前リックに見られている。

 ミリアのステータスを見てみると、レベルは20だった。これはすごい。

 リックの方もレベルが15まで上がっている。

 これはレベルが1の僕と比べると、実力の差があるのは明白だ。


「確かにリックの言う通りだ。だが、トオルは一度ハイドラを撃退しているんだ。それに彼の妹は奴らに捕らえられている。助けに行きたいと思う気持ちは、分かるだろう」


 ミリアは僕のレベルが1という事を最初から分かっていたらしい。


「仮にもハイドラを撃退した実績があるのだから、何かの役には立つはずだ。足りない部分は私達がフォローしてやればいい」


「分かったよ。まったく、甘い奴だ。俺たち巻き込まれ組の悪い癖だな」


 ミリアも巻き込まれ組だったのか。

 ともあれ、納得してもらってよかった。

 やはり巻き込まれ組は良心があるようだ。

 その思いに答えるためにも、絶対にハイドラを倒さなければならない。


「よし。明日に備えて、今日はもう休むとしよう」


 千奈……明日には必ず助けに行く。

 待っていてくれ。

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