第41話 ヒカリとの別れ

 僕たちは一度ミリアのアジトに戻ることにした。

 話によると、仲間がもう一人いるらしい。


「もう一人の仲間はリックという名前だ。覚えておいてくれ」


「え!?」


 僕とヒカリが同時に驚きの声を上げる。


「リックって……あのリックだよね?」


 声のトーンを落としてヒカリに話しかけた。

 リックとは少し前にパーティーを組んでいたところだ。

 あの時は、ヒカリの体質がリック達の怒りに触れてしまって、パーティーが解散してしまった。


 そうなると、ヒカリがここにいるのはまずい。

 今回もヒカリが一緒なら、パーティーに加えてもらえない可能性が高い。


「きっと私は、このパーティーには加わらない方がいいです。トオルさんだけでも、ミリアさんのパーティーに入ってください」


「ちょ、ちょっと待ってよ。それなら僕もミリアたちのパーティーには入らない。二人で別の方法を考えよう」


「ダメです。妹さんには時間がありません。もし、私が変に関わろうとしたせいで、トラブルになって、妹さんを助けるのが間に合わなくなってしまったら、私は一生自分を許せなくなります」


 確かに早く千奈を助けなければならない。

 いつあの子が酷い目にあわされるかわからない。


 ミリアは敵についてかなり調べ込んでいるようなので、彼女たちのパーティーに加わった方が勝率は高いだろう。

 悔しいが、ヒカリの言うやり方が確実だ。


「分かったよ。でも、一時的に離れるだけだからね。千奈を助けたら、またすぐにパーティーを組もう」


「…………はい」


 ヒカリの返事に時間がかかったのが気になった。

 やはり、本当は僕と一緒にいたいのではないだろうか?


 せっかくパーティーを組めたのに、自身の体質が原因で離れることになるのは、ヒカリにとって辛いはずだ。


「あの……すいません。やっぱり私、抜けさせてもらいます」


 そう思っていると、ヒカリが大きな声でミリアに話しかけていた。

 その言葉を聞いたミリアは、一瞬驚いたように目を開いたが、すぐにその目を閉じる。


「そうか。分かった。確かに無茶な作戦だからな」


「…………ごめんなさい。成功を祈っています」


 ヒカリは一瞬だけ悔しそうに拳を握り締めた後、申し訳なさそうにその場を去っていった。

 彼女が本当は離れたくなかったのは、言うまでもない。悪いことをしてしまった。


 ヒカリがこのことを気にして、一人だけで無茶な行動に出たりしないか心配だ。

 ヒーラーが一人では、とてもじゃないが戦闘なんてできない。

 でも、心配しても始まらない。ここはヒカリの理性を信じるしかないだろう。


「トオルはどうする? 確かにハイドラは強敵だ。勝てる保証はない。やはり、やめた方が利口かもしれないぞ」


「いや、僕はこの作戦に乗らせてもらう。千奈を助けないといけないんだ」


 こうなっては、一刻も早く千奈を助ける事が先決だ。

 戦いが終われば、改めてヒカリとパーティーを組めばいい。


 そのままミリアの後についていくと、一軒の小屋にたどり着いた。ここが彼女の隠れ家らしい。

 扉を開けると、そこにリックの姿が見えた。

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