第23話 仲間を集めよう
こうして僕らは、仲間集めを開始することにした。
「あの、すみません。僕とパーティーを組んでくれませんか?」
「ん? トオル? うわああああ! 魔王の手下だぁぁぁ!」
できるだけ人当たり良く勧誘してみたが、相手は絶叫して逃げていく。
前回のレオン戦で僕が『魔王の手下』という歪んだ噂が広まっているのだ。
正直、げんなりしてしまう。どうして誰も信用してくれないのか。
全員がヒカリみたいに話を聞いてくれるわけじゃないんだな。
「き、気を取り直して次に行きましょう。きっと話を聞いてくれる冷静な方もいますよ!」
ヒカリは笑顔で慰めてくれた。
この子は本当に女神だな。
そうだな、頑張ろう。この程度でくじけるものか。
僕は気を取り直して別のプレイヤーにも話しかけた。
今度は二人組の男達だ。
「仲間? ああ、いいよ。こっちも仲間を探していたんだ」
今度の二人組は仲間になってくれそうだ。
「いいのかよ? このトオルって奴は、魔王の手下という噂だぞ?」
「いや、多分あの噂はでたらめだ。あの時は俺も見ていたが、こいつは魔族から攻撃を受けていた。味方の証拠だ」
一人が異を唱えるが、もう一人がうまく説得してくれる。
ヒカリの言ったとおりだ。きちんと見てくれている人はいるんだ。
しかも、この二人は両方アタッカーのようで、レベルが5だ。
これは戦力面でも期待できる。
「ちょうど俺達もロックガルドまで行きたかったんだ。よろしくな」
「はい、よろしくお願いします!」
ヒカリが明るい笑顔で挨拶をする。
彼女の人当たりの良さから、きっと現実世界でも人気者なのだろう。
「でも、すげえよな。このヒカリって子、回復魔法を全部覚えているぞ!」
そのルックスもさることながら、能力面でもヒカリは非常に魅力的だ。
もしかすると、彼らはヒカリが目当てで仲間になることを了承したのかもしれない。
「ん? ちょっと待てよ? ヒーラーのヒカリ? その名前は、どこかで聞いたことがあるような……」
しかし、一人が思い出したかのように、何かを言おうとした。
「さ、さあ! これで仲間も揃いました! ロックガルドへと参りましょう!」
それをヒカリが元気のいい声でかき消す。
なんだろう。ヒカリはやけに焦っているようにも思える。
ひょっとして、なにかを隠してる?
「で、では、行きましょう!」
ヒカリが率先して町の外へと出ていくので、僕は慌てて追いかけた。
「ま、待ってよ、ヒカリ」
とりあえず、ロックガルドへの旅路が始まったらしい。
新たに加わった仲間二人も、後に続く。
ステータスで二人の名前を確認してみた。
彼らの名前は『アモンド』と『リック』だ。
やや直情的なほうがアモンドで、僕が味方だと判断できていた冷静な方がリックである。
二人とも職業は戦士。頼りになるアタッカーだ。
そういえば、この人たちも1000時間プレイした中二病の猛者なのだろうか。
「俺たちは『巻き込まれ組』なんだ」
「巻き込まれ組?」
「ああ、巻き込まれ組ってのは……」
リックが巻き込まれ組について、説明してくれた。
巻き込まれ組とは、中二病の千時間プレイヤーに引きずられてこっちの世界に来た人の事を呼ぶらしい。
そういう人は、意外と多いかもしれない。
「君たちを巻き込んだ張本人は、どうしたの?」
「あいつは真っ先に心が折れて、今は引きこもっているよ」
魔王も言ってたが、中二病は逆境に弱い傾向があるようだ。
リルみたいに一線を越えている人間か、あるいは僕みたいに事情がある人間でなければ、この世界では積極的に動けないのかもしれない。
逆に言うなら、巻き込まれ組の方が良識はある可能性が高い。
中二病じゃないから、ブーストの恩恵を受けられないせいで、この世界では不利かもしれないが、常識人だからこそ話が通じやすい部分もある。
この部分はある意味でのトレードオフと言えるかもしれない。
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