第22話 ヒーラーが一番大事!

 ヒカリの特技について質問をすると、彼女は快く答えてくれた。


「はい! 私、回復魔法が得意です! もし怪我をしたら、言ってくださいね! 先ほどのように、しっかりと回復しますよ!」


 先ほどは回復魔法をかけてもらったが、やはりそれが得意分野らしい。

 RPGにおいて、『回復』とは非常に重要な戦術だ。

 回復さえしっかりできる人は、負けが無い。


 どのようなRPGでも『ヒーラー』と呼ばれるユニットが存在して、大抵のプレイヤーは優先的に育てていたり、戦術の要にしていたりするものだ。


 このダメージワールドでもヒーラーを仲間にするのは、非常に有効かつ、心強い。

 特にこの世界では『痛み』のせいで、ダメージを受けると、集中ができなくなり、戦闘力が大きく下がってしまう。

 より回復の重要度が増すのだ。


 まあ、僕は『痛みに対する耐性』があるので、その部分では関係ないけど、それでもヒーラーがいたら、安心できるのは間違いない。

 レオン戦みたいに腕を切り飛ばされたりしても、すぐに修復できる。

 しかも、このゲームにはMPという概念が無い。

 つまり、攻撃魔法も回復魔法も唱えたい放題なのだ。


 ただし、決して過信してはいけない。

 なぜなら全ての魔法には『詠唱時間』というものが存在する。

 その名の通り、魔法を唱えるための時間だ。


 回復魔法はその全てが10秒以上の膨大な詠唱時間が必要となる。

 つまり、即座に回復できるわけじゃない。


 よくあるのが、回復魔法を唱えようとしている間にやられてしまうパターンだ。

 そして、詠唱には『短縮コマンド』というものも存在する。

 詠唱中に特定のコマンドを入力すると、詠唱時間が短くなるのだ。


 短縮コマンドは複雑だが、たくさん入力すれば、それだけ詠唱時間は短くなる。

 多くのコマンドをどれだけ素早く入力できるかで、ヒーラーとしての腕が決まる。


 簡単にまとめると、優秀なヒーラーは素早く呪文を唱えられるが、初心者は呪文を唱えるのに時間がかかってしまう。

 果たして、ヒカリの回復魔法の腕前は、どれくらいなのだろうか?


「あと、驚いてください! 私は回復魔法なら何でも使えますよ。なんとあの『リレイズ』も使えるのです!」


「なんだってっ!?」


 リレイズとは、最高レベルの回復魔法である。効果はなんだっけ?


「リレイズの効果は、もし戦いで死んでしまっても、一度だけ自動で生き返る魔法ですね。この魔法をかけておけば、とても安全に戦えますよ!」


 最高の保険となる魔法だ。ヒカリの回復魔法の技術は非常に優秀と見た。

 ただ、ヒカリのレベルを見てみると、まだレベルは3だった。僕とほとんど変わらない。

 ヒーラーとして、あまり戦闘には加わっていないらしい。


 魔法はレベルではなく、『熟練度』というシステムで新しい魔法を習得できる。

 つまり、たくさん魔法を唱えていれば、本人のレベルとは関係なく、強力な回復魔法を習得できる。


 ヒカリはよほど回復魔法の練習をたくさんしたのだろう。

 レベルが低いからといって、ヒーラーとして無能だと判断してはいけない。


 だが、ヒカリがヒーラーだというなら、ここで一つ問題が発生する。

 僕がヒカリを守らなければならない。


 つまり、戦闘では僕の実力が大きく勝敗を分かつ事になる。

 ただ、普段の僕の腕では、戦闘中にヒカリを守る事に不安が残る。

 これについての解決方法は一つだ。


「ねえ、ヒカリ。とりあえず、このモースで、もっと仲間を集めてみないか?」


 仲間を見つける事だ。

 数が揃えばレベルが低くても、なんとかやっていけるはずだ。


「なるほど。仲間は最高で四人まで作れます。そして、四人パーティーを作るのがセオリーでもあります。そちらから、当たっていきましょうか?」


 ヒカリも納得してくれたようだ。

 ゲームと同じで仲間を集めるのは、攻略においてかなり重要らしい。


 まずは仲間探しを始める方向で決定だ。

 できれば、前衛で戦える強力なアタッカーが欲しい所である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る