第20話 千奈もこの世界に飛ばされていた!

 自身を変わり者というヒカリの言葉は気になるが、今は気にしないでおこう。

 とりあえず、励ましてくれた礼をしなければならない。


「ありがとう。元気が出てきたよ」


 ずっと落ち込んでいても仕方がない。

 大事なのは切り替えることだ。


「よかったです!」


 そんな僕を見て、心から嬉しそうに笑うヒカリ。

 うん、やっぱりいい子だ。そうに違いない。


「ヒカリもプレイ時間が1000時間に到達することで、この世界に飛ばされたんだよね? そうなると、上級者かな?」


 先ほどの考察から考えて、ヒカリは中々の熟練者と見た。


「はい、一応それなりにやり込んでいた方にはなります。この世界に来てからは、三ヵ月になりました」


「へえ……ヒカリはこの世界での先輩ってことだね」


 ヒカリは僕よりもさらに三ヵ月前にこの世界に来ていたのか。

 この世界の住民としての経験が豊富という事だな。

 それによく考えたら、1000時間もプレイして初心者という奴はいない。

 まあ、ここに僕という例外が一人いるけどね。


「まあ、この世界に召喚された人は、全員が1000時間もプレイしているから、みんな上級者に決まっているよね」


「いえ、そうでもありませんよ。実はこの世界に召喚された時に『誰かが一緒にいた』場合、その人も巻き込まれる形でこの世界に召喚されてしまうのです」


「へえ、そうなんだ」


 つまり、上級者だけでも無ければ、中二病でもないのに、この世界に召喚された人も多いって事だ。


「その場合、召喚された人は初心者だとしても、そのままこの世界に来てしまう事になりますね」


「なるほど、巻き込まれてこの世界に来る人もいるんだね。かわいそうだね」


 巻き込まれた人にとっては、完全にとばっちりである。本当にかわいそうだ。

 たまたま一緒にプレイした時に相方が1000時間を超えたせいで、こんな痛みが支配するゲーム世界に召喚されてしまったのだ。

 僕は巻き込まれてしまった人々に深く同情した。


「………………あっ!」


 そこで重要なことに気が付いた。

 さっきまで他人事のように同情をしていたが、僕が1000時間を超えた時、一緒にプレイしていた子がいなかったか?


「千奈!」


 そう、妹の千奈だ。

 現実世界で唯一僕の味方になってくれた子だ!


「ど、どうしました?」


 慌てて駆けようとしたが、その手をヒカリに掴まれる。


「ごめん! 僕、行かなきゃ。千奈が危ないんだ!」


「お、落ち着いてください。何があったか話してください!」


 ヒカリになだめられる。

 そうだ。焦っても同じだ。

 一度落ち着いて、ヒカリに事情を説明することにした。

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