第67話 割と身内会議
「どうなってるんだ、ジン君」
「それってどういう意味?白峰さん」
陽菜がそう言った後、未亜が疑問の言葉をかける。ジンが何をやったのか、その事を言っていないからだ。
「言ってないのか……ジン君を久遠神社の怪物を倒しに行かせたというのは言っただろう。そこでやらかしたんだよ、己を中心として自爆したんだ。その代償として、久遠神社は跡形もなく無くなってしまった」
陽菜のその言葉に、未亜はジンに向けて「何をやってんのさ」という呆れたような声を向け、優香は頭を抱え、花音は腹を抱えて大笑いをする。
「で、どうだったの?ジンが其処まで大事するなんて相当強かったんじゃないの」
「まあ、そうだな」
ジンは未亜の言葉に肯定の意を込めて頷く。自称土地神の怨霊を思い出しながら。
「本当に強かった。それだけじゃなくて戦いにくかったしな」
ジンの苦手な能力、それは欲望である。綺麗なくせに、薄汚くて、闇に塗れている。そういう訳が分からない感じが、苦手だ。
「あれ、人為的に生み出されたもんだぞ」
「人為的?特異能力で生み出されたとか、そんな感じなのか?」
「そういう事じゃねえよ。人の内部分を生贄として生み出されたものだ」
「ジンさん、それが何か知ってるの?」
ジンは優香の言葉に拳を握る力が強まっていく。こんなシステムだとは知らなかったとは言え、あんなシステムを生み出してしまった自身を戒めるように。
「
「技術的特異点のシステム……どういう事?」
「人の生を愚弄して、侮辱する。何処まで行っても腐り切った、ゴミのようなシステム。そして俺が生み出したシステムでもある」
そのジンの言葉に、この場に居るジン以外の者達に動揺が走る。そしてそれと同時に疑問が生じる。どうしてそのようなシステムを作ったのか。
今のジンからは想像が出来ないからだ。割と結構な頻度で毒が籠った言葉を放ってきたり、腹黒い事があったりするが、基本的にジンは善側の超越だ。
「俺って昔からこんな性格な訳じゃ無いんだ。昔はもっと視野が狭かったんだ。だから上側の奴等に従った。その結果がこれだ」
「なるほどね……本当に面倒臭いシステムを生み出したね、ジン。対策とはあるの?」
「解放する術はない。倒す術なら圧倒的な攻撃力を放つ事」
ジンは自身が言っている事ながらも、滅茶苦茶な事を言ってる事に気づいていた。圧倒的攻撃力、つまり殆ど対策の術が無いと言っているものだ。いや、攻撃が通じるだけマシ、というものだろう。
「シンギュラリティシステムを止める事ならば、対策案はある」
「え?あるの!?それって一体……」
昔のジンは、縋っていたかった。神々という、心など、人を利用する為に存在している者達に。昔のジンも分かっていた、こんな奴等を信用するのは危険だという事に。それでも頼らなければならなかった。心が壊れてしまうから。
そんな愚かな、昔のジンでも危険意識はあった。このシステムが暴走したらどうしよう、という危機感が。
神々に隠れて、シンギュラリティシステムに、その機能を仕込んだのだ。
「俺にシンギュラリティシステムを作るように依頼してきた者共は、壊れる事のない完璧な厄災装置を望んだ。しかしその時の俺はその厄災装置を危ぶんだ。だから、上連中に隠れて、シンギュラリティシステムを破壊できるようにした」
「その方法は……」
ジンは先程よりも滅茶苦茶な事を言っている事を自覚しながら、それを口にする。
壊せる可能性など、極めて低い。
昔のジンは一応、破壊できる装置を付けただけだ。当たり前だろう、そう簡単に壊れては、破壊できる機能を付けたのがバレてしまうから。
そしてシンギュラリティシステムの最も恐ろしい点、それは宇宙の98極84載365正……つまり約100極倍のエネルギーが核に収納されているのだ。このエネルギーが収納されてるシンギュラリティシステムを下手に壊すと、大規模な爆発が起こり、この世界が終わる。
下手したら
だから、この方法しか無いのだ。
「シンギュラリティシステム、その概念そのものを壊す事」
「概念……?それって壊せるの?」
「未亜、前に言っただろ。概念だろうとなんだろうと、壊せるものは壊せる。ただ、難易度がクソ程高いってだけで」
「確かに言われたけど」
「あれをやればシンギュラリティシステムが壊せる」
ジンのその言葉に、未亜は思いっきり顔を歪ませる。概念を壊す方法、それを知っている者からすればその反応は当たり前だろう。
少し前の頃、ジンが未亜に話した、『世界とは完璧で歪な、とても脆いピースで埋まっている』という事が関係してくる。そのピースが抜けると崩れてしまうのは、ジンなどの重要な勇気の概念だけでは無い。人々に認知などされていないモノもそれに入る。
「あのさ、未亜とジンだけで喋られてもわからないんだけど」
花音はそんな疑問をジンにぶつける。
「概念を破壊して再生させる。それが概念超越を壊して殺す方法だ」
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