第62話 テスト終わりの開放感は異常
「……」
「なんかすっごい死にかけだな」
「どっかの仁にめちゃくちゃ勉強をさせられたからじゃない?」
「俺、そんなに悪いか?」
ジンは零と天矢を交互に見ながら、そんな事を言う。そしてその後に頼まれたからやっただけなんだけどなぁ、と呟く。
「学校は終わったし、どっかに遊びに行くか?」
「行く!」
ジンは天矢の答えに、そんなに行きたかったのか、そんな事を考えながらも、自身のカバンを背負う。
「此処のポテトうまいな」
ジンはハンバーガー屋のポテトをうまうまと言いながら食べている。ジンはこれまで、降臨してから色々なジャンクフードを食べてきたが、’此処までいいポテトは初めて食べた。
「そう言えば自己採点はどうだったんだ?お前のことだからしてるんだろ?」
「ん?……ああ、一応している。俺の採点が正しければ、全五教科大体90点代ってとこかな」
「やっば」
千里は自分から聞いてきたはずなのに、割と、いや、だいぶ引いたような声と視線を向ける。
「そんな事は今話す事じゃねえだろ。やっとテストから解放されたってのに……なんで勉強の話を聞かなくちゃならねえんだよ」
「そうだな。この話はまた今度にしようか」
ジン、千里、零は天矢の発言に苦笑いを浮かべながらも、テストの話題は心の中にしまっておく。
「あっ、このポテト美味しいな」
「それ俺さっきも言ったんだけど……」
ジンは千里の言葉に信じていなかったのか、と言いながら呆れの視線を向ける。
「いや、信じていなかった、って言うわけじゃないんだぜ?ただ、仁ってこう言うジャンクフードには疎いと思ってたからさ、ゆうてかなって」
「千里、それはそれでひどいと思うよ?」
「あ……すまん」
「別にそこまで怒っていないから良いよ。今度になんか奢ってもらおうって思ってただけだから」
「ねえ!俺ってば中学生!余裕は無いんだぜ!?」
「冗談だよ、冗談」
ジンの、見るからに作られたであろう、爽やかな笑みに対して、千里は「うっわ、なんか胡散くせえな」と言葉を発する。
「胡散臭いとは失礼な……俺のどこが胡散臭いんだよ」
「仁が作り笑顔をする時って大体胡散臭くなるぞ。言われた事はないか?」
「いや、特に言われた事はないぞ。あるとすれば腹黒っぽいとしか……」
「それはそれで問題な気がするんだが」
ジンは千里のその言葉に、そんなにか?と思いながらハンバーガーを貪る。
「腹黒って……どんなことを言われたんだい?」
「んく……言われたこと言えば、何を考えてるのかわからない、人のことを陰で悪口言ってそう、とか」
「悪口言ってそうはその人が言えることではないと思うんだけどね」
「まぁ、俺もそれはそう思うよ」
ジンは昔にそう言われたことを思い出し沁み沁みしていると、零からそんなことを言われ、ジンも同意する。その事を言った奴は悪口が苦手、と言っていたにも関わらず、ジンに対してそんなことを言ったのだから。自身の苦手な相手は自身と理解していなかった。其処も含めて苦手なのだ。それに、人によっては、とても傷つくであろう。
「悪口を叩くやつなんてそんなもんだろ。自分がそう言われたら傷つく癖に、自分が言われた時のことなんて考えずにいうんだからな」
「めっちゃズバズバ言うな。体験談とかか?」
「昔に友達がそう言うので傷ついててな。だからそういうのが一番気に入らんくてな」
「ああ、竹下さんか。確か今は天矢の恋人とかだっけ?」
「そ、だから余計に気に入らねんだよ。
「そんなに心配とかしなくて良いんだぜ?俺はああ言う程度のやつらに心を動かされるとかないし」
「それでも、だ」
ジンは天矢のその言葉に心配性だなあ、と思いながらも、自身の周りの、本当に大切な人たちだなと安堵の息を漏らす。昔のジンの周りには、ヤマや、フェン、べロスと出会う前は、どうしようもない者たちで構成されていたから。この心配という暖かさが、本当に心に沁みるのだ。
そして、その考えに到達すると、ジンは、今って本当に恵まれているんだと思い、瞳の奥底から水が出そうになる。
「どうした、仁。なんか感極まった風になってるけど」
「ごめん、少し嬉しくなっちゃったんだ。昔はこんなにも恵まれてなかったら。今ではこんなに恵まれてるんだなって、そう実感できただけなんだ」
「そうか……いやあ嬉しくなるなあ!仁が俺たちのことをそう認識していてくれたなんて」
「調子にのるな、バカ千里」
「馬鹿って何よ!?勉学は割と良い方なんだけど!?」
「あーはいはい、そうですね」
「なぜにそんな棒読みなのよ!?」
千里と零のいつも通りとも言えるその会話に、ジンは自然と笑みが溢れ、クスッと声に出して笑ってしまった。
「まあ、困ったと時は遠慮なく頼ってくれよ?全力で協力してやるからな」
「いつもは俺に対して勉強関連はお世話になりっぱなしだけどな」
「それは言わないお約束だろ!?」
「悪いが、そんなお約束は知らないんだよ」
天矢はジンの言葉に、勘でわかってくれよお、と言葉をこぼし、ジン、千里、零は天矢のその言葉に対して、笑う。
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