第61話 地獄の刑罰「ハリセンセーン!」

「はい、で?何か言うことはあるか?」

「さーせんした!」


ジンは椅子に肘を置き、手を右頬に当てながらそんな事を言う。ジンの言葉は毒があるのだが、顔は呆れたような、そんな顔をしていた。


「反省しなければいけない事は分かるか?」

「はい、テスト期間なのに勉強したのは、一緒に勉強した時だけだという事です」

「そうか……分かっているなら良い。そんじゃ俺は帰るな!」

「待ってよ!本当に頼む!一生の頼みなんだよ!じゃ無いと俺死んじゃう!勉強教えてくれよ!じゃないと俺は親に怒られるんだよ!」


ジンは話は終わったな、と思い、椅子から立ち上がり、自身の鞄を持って帰ろうとするのだが、天矢に足を掴まれながら頼み事をされる。


「やめろ、離せバカ」

「嫌だ!俺が離したら仁は帰るだろ!?」

「当たり前だろ。前にも言ったが、そう簡単にできる勉強なんてないんだよ。だから素直に勉強していればよかったのに……」

「無理!」


ジンはそれは何時もの事だと思いながらも、自然と額に皺が浮かぶ。ジンは天矢の言葉に割とイラついてるからだ。その理由は、テストでいい点を取りたいって言っているのに、努力をしていないというのになるだろう。ジンが存在し、人として転生した時代は努力を怠ったら死ぬ時代だったから。今の平和の時代にはそんな必死の努力は必要無いとは分かっている。


ジンは一瞬の間、自身の暗い感情、怒りが暴走してしまいそうになるだが、自身の理性を強く保って怒りを鎮める。


「そんで?何が勉強をしたいんだ?」

「公民!」

「公民ってそんなに難しいか?歴史とか、地理とか、めっちゃゴチャゴチャしている中では、あっさりしている方だろ。それに数学とか勉強しなくて大丈夫なのか?お前ってそれも苦手だっただろ」

「今はそれよりも公民を勉強したいの!」

「そうか……そんじゃあ問題を出すぞ。日本にある中央銀行、日本銀行、略して日銀は政府の銀行。銀行の銀行。それ以外にもう一つ、ある役割がある。それはなんと言うか。銀行の語句を入れて答えろ」

「え?何それ」


ジンは天矢のその言葉に驚愕を露わにする。そして此奴マジで勉強をしてないんだな、と思う。これ最近授業でやったところだろ、とも。


「よーく分かった。お前が本当にしてなかったのは。少し覚えてほしいものだがな」






「ごめん、言っちゃ悪いんだけどさ、お前バカ?」

「なんでそんな事を言うんだよ!?なんでそんな罵倒を簡単に言うんだよ……」

「いや、悪いとは思ってるよ。でも公式を覚えていないのは本当にバカだろ」

「だからそれを含めて教えてくれたらなぁ〜って」

「公式はもう覚えろしか言えないのよ。暗記ゲーだから。社会とか理科と同じでこれは暗記しろとしか言えないのよ」


ジンがそう言うと、「救いはないんですか?」と助けを求めるような、そんな声を漏らすのだが、ジンは「ない」ときっぱり言い切る。何度もやったら覚えられると思うんだけどなあ、と思いながら。


「ああ、なんと悲しきかな……このアイス美味しいな」

「お前はサラッとアイスを食うな。まだ勉強中だろ」

「たくさん頭を使ったら糖分が欲しくなるの!つまりしゃーない」


ジンはあまりその感覚が理解できず、「は?」と言う声を抑える。


「それを食い終わったら勉強の続きをするぞ」

「えーー。俺はもっと休憩をしてたいのに……」

「アホか、これでも小さな所を飛ばしながらやってるんだよ。これ以外休憩を挟むとテスト範囲を全部やれないんだよ」


ジンは呆れたような、そんな態度を分かりやすく露わにしながら、その言葉を口にすると、天矢は絶望したような表情を浮かべる。


「非道!鬼畜!」

「俺はお前のためを思ってやっているんだが……そんだけ言うなら俺帰っていいか?」

「はいすんませんした!」


天矢はジンのその言葉に危機感を覚えたからなのか、すぐ土下座を披露する。天矢が披露した土下座は勢いが強く、音が大きかったので、割と痛かっただろう。


「いつまでしてんだよ……わあったから其れをやめろ」

「ありがてえ、ありがてえ!」

「だからいつまでそうしてんだよ!」


ジンは天矢がいつまでも土下座を続かせているのに怒ったのか、天矢の脳天にチョップを入れた。


「さっさとやるぞ」

「へい!了解!」






「今日はこれで終わりな」

「これで終わり?……やった!解放された!」

って言っただろ。まだ続くに決まってるだろ」


ジンはそう言った後、「それに一回テスト範囲を終えたとしても、何回もやって覚えなくちゃだし」と呟く。今日と明日、テスト範囲をやったとしても、それだけでは全然覚えれないからだ。ジンや未亜みたいな記憶スキルを持っているのなら別かもしれない。ジンと未亜は勉強で使ったことはないが。


ジンは天矢のしょぼんとした顔を見ながら、帰るために鞄に筆箱や教材などを入れて準備をする。


「帰んの?じゃあな」

「ん、じゃあな」


ジンと天矢はそう挨拶をした後、天矢の家の玄関をガチャリと開け、外の出てから閉める。


「俺が帰ってからも勉強してくれるとありがたいんだがな……やらねえよな」

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