第53話 要望:放課後デート 2
「いやぁ、ケーキ美味しかったねぇ」
「……そうだね」
「いつまで顔を赤くしてるの?ジン。そろそろ収めなよ」
「恥ずかしいのは恥ずかしいの……」
「それはそうかもしれないけどさ……流石に周りからの視線が痛いんだよね。それに……少し嫉妬しちゃうし」
私は最後にそう呟くと、ジンは目を見開き、パチパチとさせる。そして漸く言葉の内容を理解出来たのか、更に顔を赤くさせた。ジンの様な顔が良い男が顔を赤くさせている。なんか、くる所があるよね。ギャップ萌えって言うのかな?
「いやぁ、本当にジンは可愛らしいですなぁ。自分では独占欲丸出しなのに、自分が独占欲に当てられると照れちゃうなんて」
「うっさいよ……次、何処かに行くんじゃ無いの?無いなら帰るけど」
「ごめんね、次行こうか」
私がそう言うと、ジンはため息を吐きながら私の手を握る。いつもならば、この照れたジンは、私の手を引っ張って行くのだが、今回は私主導のデートなので、そんな事はしない。というか、出来ない。
「うるっさ」
ジンはそう呟きながら顔を顰める。ジンって竜だからなのか、聴覚とかの五感が強いんだよね。だからこのゲームセンターみたいなうるさい所は苦手みたい。まぁ、そういう私もジンが降臨してから五感が強くなったから、あまり此処には行ってないんだけど。
「未亜はうるさく無いの?」
「前から来てたのもあるし、私はジンほど聴覚は良くないしね。それに五感低下の魔法を私自身にかけていると言うのもあるし」
「はっ……!その手があったか!」
「ジンってなんか変なところで抜けてるよね」
「ぐぬぬ……おっ!マシになった……けど」
「けど?」
「まだうるさい」
私はジンの言葉に苦笑いを浮かべながらも、このゲームセンターで遊ぶために進む。
「これがコイン変換をする機械だよ。ここに500円玉を入れると……」
ガラガラガラと機械からたくさんのコインたちが落ちて来る。
「なるほど……このコインがあれらを動かすのか。ねぇ、未亜。少しやりたいのがあるんだけど、良い?」
「うん、いいよ」
私はそのジンの言葉に頷くと、ジンは私の手を引っ張って連れて行く。ジンって大人な風に見えるのに、こういう娯楽とかだと子供っぽくなるんだよね。まぁ、それはジンが生きた時代に娯楽らしい娯楽がなかったからだと思うけど。
「未亜、これだよ、これ!」
私はジンが言っているものに向かって目を向けると、あるクレーンゲームが目に入った。うわぁ、よりによってこれかぁ。このゲームセンターの中で一番難しいやつじゃん。アームの力が弱いからぬいぐるみが取りにくいんだよねぇ。私はジンに他のに行こうよと声をかけようと思ったのだが、ジンはやる気満々だったので、声をかけれなかった。
「うぇっ!?落ちちゃった……今度こそは!」
6回目
「なんでぇ?」
12回目
「……」
21回目
「アーム、君力なさすぎでは?」
28回目
「どうして……どうして」
34回目
「はぁ……はぁ」
今35回目に突入したけどさ……ジンの顔が虚無顔になって来てるんだけど。うーん、これは結構まずくなって来ているかもしれない。いや、お金はまだあるんだけどね?これ以上時間を潰すわけにはいかないし……ジンが割としんどそう。いや本当に。
「ジン、少しいい?……ありがと。これはこうやってやるんだよ」
「……!ありがと、未亜!」
ジンはそう言った後、私に抱きついて来た。相当辛かったのか、私の胸の中で涙声で声を出している。
「もう絶対にやりたくない!」
まぁそりゃそうなるよね!?
「バナナオレ美味しいなぁ……はぁ、疲れた」
「その、ごめんね?楽しんでもらおうと此処に来たんだけど……」
「楽しかったは楽しかったよ。最初はね」
私はそのジンの闇に乗った顔に苦笑いを浮かべる。
「まぁ、楽しかったよ。だから、ありがとうね」
「……!そう、なら良かったよ」
「けど」
ジンのその言葉に些細な悪寒が走る。私はソレに直面する前に顔を逸らそうとするのだが、ジンに顔を抑えられる。
「未亜?」
「はぁ……分かったよ。けど、何?」
「それとこれとは別だよ。俺が疲れた分、未亜をたっぷり甘やかさないと……」
「やっぱりそんな感じだよね……もう帰る?」
「もうちょっと此処を堪能してから」
「そう、分かった」
ドンカンドンドンカンカン
『フルコンボだドン!』
「よしっ!」
「おぉっ、12回目でフルコンボだね。一番低い難易度でだけど」
「わざわざ言わなくてもよくない!?素直に褒めてくれてもいいだろ」
「はいはい、スゴいですねー」
私はそう言うと、ジンはむクーッと顔を膨らませた。まぁ、この後に散々可愛がられるんだから、このくらいは勘弁して欲しいとこではある。
そしてそれからジンが10曲をやった後に、背を伸ばした。
「うーん、遊んだなぁ。もう帰っていい?」
「そう……分かった」
「いつもと違うところに行ったからか、疲れたなぁ。未亜」
「いや、未亜って言われても……」
私はジンののその言葉に感づいてはいた。しかし、恥ずかしさからなのか、私の口からは少しの抵抗を見せる。無駄だと知っていながら。
「そういうのは良いからさぁ。さっさと俺の膝に座ってくれる?」
「恥ずかしい」
「可愛いから大丈夫だって」
私はどういう理論なんだよ、と思いながらも、ジンに背中を預けるのだった。
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