第51話 捨てた資格、拾った意味

「あ、やっと戻って来た!もうすぐ授業だよ?」

「すまん。少し、な」


俺は未亜の言葉にそう返事をする。


『あなたは未亜のことをわかっていない』


俺は優香が言ったその言葉が頭に残り続け、闇を生み出している。そりゃあ分んねよ。俺は俺であって未亜ではない。


はー!やめやめ!こんな暗いことばっかり考えてたら頭が変になっちまう。俺は頭に存在している闇を一旦放っておくことにして、次の授業の準備をすることにした。確か次の授業は国語だったよな。国語のファイルと教科書、ノート、ワークはこれと。






「それではこのワークの35〜42を四人班で考えてください。時間は十分です」


なになに?問1「ダンジョンがあり続けている。それを知った作者の気持ちを答えなさい」


「いや知らんて。毎回思うんだが、これは作者じゃないとわかんなくないか」

「それは作者に聞いたらしいよ?まぁ、他のは聞いていないみたいだけど」

「ふーん、そうなんだ。…………分かんねえな」

「まぁ、前授業いなかったからね。その答えは失望した、らしいよ?利益のために危機を重要にしなかったみたいだから妥当じゃない?」


失望ねぇ…………前からわかっていたことだが、人間ってどうしてこんなにも愚かしいのやら。俺が英雄だった原初の時代も、旧時代も、愚かなのは変わっていない。なんで俺はこんな奴等を守る選択をしたのやら。俺はそんなことを思いながら教えてもらった答えを書く。






時は進んで昼休憩。



「ほらよ、未亜。弁当だ」

「わー!ありがと!ジンのお弁当って美味しから好きなんだよね。…………あ!そうだ!ジンもこっちで食べよ」

「遠慮しておくよ。流石に女子に囲まれて食べる度胸はないや」

「えー!」

「いや、そんな声を出されても………………そんなにむすっとすんなよ。また今度、一緒に食ってやるからさ」

「ほんと!?約束だよ」


俺は未亜とそんな会話をした後、未亜の席から離れ、この学校の食堂へと向かう。俺は行く途中に、この学校の広さに驚きながらも、食堂に到達できた。俺は弁当を片手に持ち、海原がいるであろう席を探す。………………あ、いた。


「すまん、少し遅くなった」

「いんや、俺たちも今まさに買って座ったとこだから気にせんくていいよ」

「そう」


俺が席に着くと、周りの皆が手を合わせた。俺もそれに合わせ、手を合わせる。戴きます、そんな言葉を口にして、俺はは弁当を周りは食券で買ったものを食べ始めた。


「そういえばだけどさ、竜白と花唄さんとの関係ってどんな感じなの?」

「普通の友人だよ。それ以下でもそれ以上でもない」

「うっそだぁ、花唄さんのあの顔、絶対にただの友人にする顔じゃないでしょ。分かんないの?花唄さんは絶対に…………」

「俺に対して好意を抱いている、だろ?そんなのは昔からわかってるんだよ。だけど怖いんだよ。俺が彼奴の重荷になるんじゃないかって」

「なるほどねぇ…………竜白、君っていいやつだけど、結構面倒臭いね」


海原千里の友人、源零が俺に対してそんなことを言い放つ。そうシンプルに言われると、結構くるものがある。でも、俺が面倒臭いのも事実。いやマジでなんで俺ってこんな性格になっちまったんだろ。


「そんなに気にしなくていいと思うけどなぁ。人って欠点を誰しもが抱えてるものだし、そんなに気にするんだったら、その欠点を消すぐらいに自身を磨き上げればいいと思うよ」


なぜだろうか。欠点を消すぐらいに磨き上げる、いつそれを忘れてしまったのだろうか。いや、そんなことはどうでもいいか。覚悟は決めた。俺が殺し、流れた血は消えることなどない。無慈悲に、理不尽に奪ってきた命が回帰することはない。ならば今こそ向き合う時なのかもしれない。罪から逃げてきた俺が今度こそ。


「覚悟を決めたみたいだね。先ほどとは面構えが全然違う」

「うん、そうか?……………‥ご馳走様。俺は先に戻っとくな」








「疲れたー!ジン、甘やかして!」

「はいはい、家に帰ったらな」

「うえーーー、やだぁ、めんどくさい。ジンが背負って帰ってよ」

「さっさと立って帰るぞ」


俺はぶーぶー言ってる未亜の手を取り、教室へ出る。なんでそんなに冷たいの?という声が聞こえるのだが、流石にここで背負ったらまずいことになるので、勘弁してほしところである。


「ジンのケチィ!」

「いや、ケチって言われても…………未亜」

「うん、わかった。ジンがやって。私はやれないから。でもね、ジン。建物は壊さないでよ?後が大変なことになるからね」





「悪く思うなよ、森の女帝が邪魔なのが悪いんだからな」

「違うだろ、悪いのはお前らだろ。勝手にお前らの罪を彼奴白峰に押し付けんじゃねえよ」


ジンは未亜を狙った暗殺者の得物である魔力を使用して放つ銃、魔銃の銃口を拳で握りつぶした。


「………………!?」

「甘いんだよ」


暗殺者は自身の得物を失ったことに驚愕はしたが、即座に次の攻撃、肉弾戦に持ち込むべく、自身の拳を握り、ジンに向かって振り下ろす。流石暗殺のプロといったところだろうか。並大抵のものよりも遥かに上手い。


ジンは目の前の暗殺者の拳を避けた後、暗殺者の腹に重たい一撃を拳で入れる。


当たり前だろう、この暗殺者たちの前にいるのは、最強で最古の王帝にして、魔境と言われた原初の時代を生き抜いた猛者なのだから。


今の時代の、平和の世界と言われいる世界に住んでいる者にとって、ジンの存在は重たすぎるのだ。


「さぁ、来いよ、暗殺者ども。未亜を狙った罰。受けさせてやるよ」




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