恋竜命愛編
第47話 家内ダラダラ天国
「ねぇ、ジン?少し離れてくれないかな?」
「なんで?秋になってきたから暑いとか、そういうのじゃ無いと思うんだけど」
「いや、それ以前の問題だよ…………!ジンの分の布団は用意してあるでしょ?なのに私のベットに来なくても良いじゃん!」
「だってマスターとくっついてた方があったかいし…………………くっついてた方がドキドキして良いでしょ?」
俺はマスターに向かってそう言い、マスターに更にくっつく。マスターはそんな俺の行動に少し呆れの視線とため息を吐き出し、俺を退かそうと、自身の手で押し返そうとするのだが、俺は魔力、邪力、竜力で身体を強化して無理矢理退かさないようにする。
「うわっ、ジンってば私と離れたく無いからって身体能力を強化してるよ……………流石に変態臭いよ?」
「知ってるか?マスター。英雄ってのは大体変人、変態なんだよ?つまり生前が英雄だった俺が変態なのは仕方の無い事なんだ」
「何処が仕方の無い事なの………まぁ、ジンも久しぶりの人肌を感じたいだろうし、良い……ひゃっ!?ちょっと!まだ私が言ってる途中でしょ!?」
「むふふ、マスターが許可したからねぇ。良いでしょ?」
俺はマスターの両手を布団の中で、俺の両手と絡め合う。マスターの手、本当に暖かい。心象世界以外で人肌に触れるのなんて……………何兆年ぶりだろうか。その中でも、此処まで心が惹かれて、元から居る場所なんだって、そう思わせてくれたのはマスターが初めてだった。
「まぁ、良いけど……………ジンにはいつも世話になってるから。ジンだから許してあげる」
「……………………そう」
「ん?どうしたの?ジン…………何で私の手を少し強めに握ったり、元の力に戻したりしてるの?」
「気分」
「いや、私は具体的な理由を求めているんだけど。そんな抽象的な理由を言われても困るんだよ?」
うるっさいなぁ、照れ隠しだよ。そんぐらい分かってよ、マスター。いや、分かってもらったら困るのは俺なんだけどさ。俺はその照れている恥ずかしさから、少し俯いてしまう。
「顔が赤いけど……………もしかして照れてる?いやはや、いつもは私が照れてるから何処か新鮮だね。それにジンって照れてる顔って可愛いもんなんだね」
「うっさい、マスターも顔を赤くさせてやろうか」
「わー、怖い脅し文句だなぁ」
此奴……………!絶対に全然怖く思ってない!まぁ、いつもはマスターの方が照れる比率は多いし?結果的にはマスターを多く照らさせている俺の勝ちだね!でも、このまま負けっぱなしは少しムカつくからね……………
ちゅっ
そんなリップ音が、マスターの頬にキスをした事で、この部屋に居る俺とマスターの耳に響き渡る。マスターは驚愕なのか、困惑なのか、キスをされた右頬を押さえた後、数秒間固まってしまう。いや、情報を処理出来ていないだけなのかな?
「え?は?…………………ちょっ!?じ、ジン!?な、何をして………!?」
マスターは自身の顔を一気に赤くさせた後、そんな事を言った。むふふ、マスターが悪いんだよ?俺相手に可愛いなんて言ったから。それに俺、言ったからね。
「どうしたの?マスター、そんなに顔を赤くしちゃって」
「分かってるでしょ?ジンが私の頬にキスをしたからだよ」
「いやぁ、ごめんねぇ………マスターが少し揶揄ってきたからお返しをしたんだけど……」
「お返しの度合いが高すぎるでしょ……!」
「マスター、いや……だった?」
「別にそういう感じじゃ……」
「なら良かった」
私はジンのその言葉にため息を吐く。その言葉に込められている不安に気付かなかった私にだ。ジンと一緒に居れば居るほど分かる。ジンの本質は寂しがり屋なんだっていう事が。最初からこうだったのか、後天的にこうだったのかは知らない。でも、英雄だからって言うのはあるだろう。
英雄だから、命を落とす。
英雄だから、心が世界の理不尽に染まってしまう。
英雄だから、命を賭けなくてはならない。
英雄だから、大切な人達を失う。
そんな苦しみを生前から待ってたんだ、今の時ぐらい、今の、私に甘えてる時ぐらいは、良いよね。私はそう考えながらジンが握っている手を離して、ジンの後頭部に手を回した後、ジンの顔を私の胸に押し当てる。
「わぷっ!?ちょ、ちょっと!?……………マスター、この姿勢、恥ずかしいんだけど……………マスターの胸が当たってるし………離してもらえると助かるんだけど?」
「胸が当たってるは知ってるよ………寂しがり屋のジンの為に私が甘えさせようとしてるんだよ。だから離さないよ」
私のその言葉にジンが身体が少し震える。しかし一秒でもしたらその震えは収まり、大人しく私の懐の中に入っていった。
「ねぇ、マスター」
「何?ジン」
「俺の昔から悩んでいる事、ぶちまけて良い?」
「良いよ、思いっきり、話して良いよ」
「俺が昔に英雄だった、それは言ったよね?」
ジンのその言葉に私は静かに頷く。
「でも、俺は本当に英雄なのか、それに迷ってるんだ。………………いや、違うか。仲間や友を見捨ててまで世界を、人類を守護する事に勤めてしまった俺が、今此処でのうのうと生きて良いのか。それに悩んでるんだ。彼奴の時もそうだった。それに英雄かどうかははっきり決まってる。英雄じゃない」
「何で?英雄って言われてたんだでしょ?」
「血を流す事でしか解決出来ない、他者を殺す事でしか平和に出来ない英雄なんて何処に居る!?大切な奴等を誰一人として守れない英雄が………何処に居るんだよ…………いつもはこんな事を考えない。だけど、マスターが無茶をした時、脳裏に過ったんだよ。そんな考えが……」
ジンはそんな辛そうな声でそんな事を言う。私はそれにどう反応したら良いのか、少し迷うのだが、私は決心をしてある言葉を掛ける。
「ジンが世界的に見て英雄かどうかは知らないよ。私はジンが英雄の時、私は見てないからね。でも、私の英雄なのは確かだね。私はジンに救われたから」
「……………っ!?
「それ、何?」
「ロシア語。降臨してすぐに学習した」
「はやっ!?うーん、私もロシア語を学習するべきか」
「しなくて良いよ!」
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