第40話 域外陽太=欲望の鬼帝

「なるほど、お前らが俺の相手か、よろしく頼むよ」

「我等はよろしくするつもりは毛頭無いがな」

「ははっ!そりゃそうだな」


俺は目の前の男の言葉に頷いていると、突然、魔法が発動された。


「そりゃあ敵なんだからそうしてくるよな。だけど、無駄なんだな」


俺は自身に降り注いでいる火関係の魔法を右手を上げ、魔力結界魔法を展開する事で防御をする。


「オレッチの陽魔法を防ぐとは、中々じゃんか」

「向日葵、勝手にやってくれるな。私がまだ居たのだぞ」

「ん?大丈夫っしょ。アスチルベは防御とか、そういうのが得意だし」

「そういう事では……………まぁ良い。説教は後でするとして、先は此奴を潰す事だ。殺しはするなよ、情報を確保しなくてはならんからな」

「分かってるからそんなに言うなよ。あ、四肢を潰すのは大丈夫?」

「それくらいなら大丈夫だろう」

「そんじゃあ、行くっしょ!」

「本当に物騒だな、お前らは」


【心底の向日葵】が俺に向かって拳を振るってくるが、俺はそれを受け流し、俺に向かって振るってきた方の腕を掴み、【閉じ込められたアスチルベ】に投げ飛ばすのだが、【閉じ込められたアスチルベ】はそれを避けた後、微量だが、魔力の籠ったナイフを飛ばしてきた。


俺はナイフの一つを掴み取った後、そのナイフで飛ばされてくる他のナイフを叩き落とす。


「右腕、いただきっしょ!」

「言っとくけど、分かってるからな」


俺は背後に振り返り、【心底の向日葵】の脇腹にナイフを刺した後、妖力で衝撃を発生させ、腹を削る。


「うっえー!どうなってんだよ、反応速度やばすぎじゃん!」

「やっぱりアホだな、向日葵。身体の動きで理解できるだろうに。それに魔力に近い物を練っていた事にも気付かなかったのか?魔力関係はお前の得意分野だろう」

「これは仕方ないっしょ!オレッチが得意なのは魔力だけだし。それに近い物とは言っても、分からないものは分からないっしょ!」

「特に努力してなかったからだろ。努力してたら感知はできる」

「はぁ!?此奴ムカつくし!グチャグチャにしてやる!」

「でも、事実だろ?」


俺がそう言うと、【心底の向日葵】は顔を赤くさせて怒っている。というか、どうなってんだよ、彼奴の再生は。別に特段と魔力技術が優れている訳じゃない。だけど、再生速度が速すぎる………!


『体質だと思いますよ、マスター。【心底の向日葵】程に適正属性が多い者に会った事がありますが、全員が超スピードの再生でした。適正属性が多ければ多い程、其れ等を使用する為の魔力は多くなり、身体への負担が大きくなります。だからでしょうね、超スピード再生なのは』


へぇ、そうなのか……………なぁ、思ったんだけどさ、魔力に属性を付与するじゃんか。あれとは何か違うんだ?


『魔力付与と適正属性の違い、ですか…………一番は扱いのしやすさでしょうね。魔力付与は並大抵の才能と努力では不可能です。その点、適正魔法は少量の鍛錬で使える様になりますから、その違いでしょうね。しかし、私みたいな英雄となると、適正属性よりも、魔力付与の方が効力は高くなりますが』


俺はルアの言葉になるほど、と思っていると、【心底の向日葵】が魔法陣を展開してきて、魔法の光線が放ってきた。魔力の込められてある量は凄まじいけど………………魔力操作が粗過ぎるな。これなら、俺でも切れるだろ。俺はそんな事を考えながらも、自身の手元にあるナイフを両手で持ち、魔力、妖力を込める。


本来なら他の力も入れたりするのだが、このぐらいの魔法ならばコレで十分である。


俺は自身の特典に内包されてある『第六感シックス・センス』を行使して、感覚を研ぎ澄ませる。………………よし!掴んだ!あの魔法の角の居場所を!


欲妖武闘よくようぶとう


『破翠』


俺が魔法に向かって一閃を喰らわせると、魔法は魔力の塵になり、世界へと解き放たれた。


「あ、ありえないっしょ!?ありえないっしょ!?何でオレッチのスーパーな魔法が壊されるんしょ!?そもそも壊されるなんて、ありえるん!?」

「はぁ、だからいつも言っているであろう、向日葵。魔法の勉強を、力の勉強をしろと。魔法というのは壊される事もある。しかしそれは魔力技術が離れ過ぎている場合のみだ。お前の魔力技術は良くて並大抵よりも少し上。此奴はそれよりも上に行っていた、それだけだろう」

「はぁ!?オレッチの魔法がそんな程度な訳ないっしょ!?オレッチの魔法が世界最強なんだし!」

「そうか、【心底の向日葵】。お前が其処まで言うのであれば、高みの魔法を見せてやろう」


俺は自身の上で魔法陣を展開した後、俺の特異能力と特典に内包されている能力を混ぜ合わせ、極限の魔法を創り上げる。俺には紫苑の様な圧倒的魔力センスも無ければ、花唄さんの様な常に進化し続ける変化力も、風式さんの様な魔力変換も、神道さんの超緻密魔力操作も、白峰さんの周囲魔力干渉も持ち合わせていない。


そんな今の俺が使える、最大で最強の魔法。


特異能力の欲望と、特典の災害を組み合わせる。


「さぁ、楽しめよ。とっておきのアトラクションだ」


俺は【心底の向日葵】と【閉じ込められたアスチルベ】にそう言い放つと、災害魔法を撃ち放った。


無垢なる災害ディアノルト・ディザスター

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る