番外話 英雄✖︎人工神造兵器永遠ノ神

「ちかれた!」

「へぇ、あっそ」

「ちょいちょいちょい!?何なんですか、その反応は!戦友で親友な俺が疲れたって言ってるんだから何か無いの!?」

「草」

「何でそれが出てきた!?エルグファスト!?」


俺の親友が俺の名を呼び、机をバンバンと叩いている。そして俺はそれを冷めた眼で見つめている。そして数秒後、ため息を吐く。アカがこんな馬鹿な事を言うのはいつもの事だから、と諦めたからである。


「で、何をして欲しい訳?」

「ダークネス・ラビリンスを撃ちたい!」

「はい、解散解散」

「ねぇ、待って?何でそんな言葉しか出てこないの?ただのストレス発散だよ?だから、ね?」

「絶対にダメだからな、使うなよ!?」

「何でよ!?」

「世界を生贄に世界を迷宮化する、そんなのがOKされると思っとんのか!?却下に決まっとるやろうが!」

「えーー、ぶーぶー」


アカはそんな事を言った後、頬を膨らませながら、如何にも不満です、という表情で俺を見つめてくる。いや、そんな顔をされても……………


「てかさ、何でそんな事を言ってんだ?いつもは疲れたなんて言ってないだろ」

「民衆だよ、あんのクソ共のせいだ。彼奴等への怒りを抑えるのに疲れてんだよ」

「民衆って………………彼奴等がクソなのは今更だろ?最古にして原初の英雄たるお前が一番分かっていると思うんだが?」

義息子ブーファスが【世界ノ天敵】になった。それが彼奴等が原因だった、それで十分だと思うが?」

「っ!?…………………そうか」


アカの口から出た言葉、その言葉に俺は驚きを隠せなかった。あんな良い子が、俺たち英雄の中で、誰よりも命を尊ぶあの子が、真剣に向き合っているあの子が堕ちたのだと知ったから。いや、そうだったから、堕ちてしまったのかもしれない。


そういや、言ってたな。アカが……



___英雄はイカれてないと成り立たない___



本当に、そうみたいだ。何で、あの子が堕ちなきゃいけないんだ。嗚呼、分かってる。あの子が堕ちたのは俺の、俺達の責任だ。英雄なんて、クソッタレな職業。苦しみなんて分かっていた筈なのに………無責任な悪意を押し付けられる痛みを数えきれない程に経験してきた筈なのに。


そして何より、俺たちの間違いは、罪は、知っていた事を見て見ぬふりをしていた事だ。何が、【世界ノ守護者】だ…………!!こんな絶望まみれの、腐り切った世界を変えようとしないなんて、何が英雄だ。


「責めるなよ、エルグファスト。罪を感じているのは、贖罪を求めているのは、全員、同じだ」

「そっかぁ、そうだよなぁ。結構な奴等が可愛がってたしな。………………………なぁ、アカ」

「なんだ、エルグファスト」

「俺、やっぱり英雄には向いてねぇなぁ」

「腐り切った世界を見て見ぬふりをしていた事か?しかしそれは俺たち全英雄も同罪だ」

「違えよ。いや、確かにそれもあるけどな。俺ってさ、英雄になったのは友の為なんだ。そして、初恋の相手でもあった。だけどいつの日か、その子の笑顔は無くなってしまった。だからもう一度、その笑顔が見たくって、世界を救った」


俺は其処まで言い切ると、息を強く吸い込んだ。いつ思い出しても、苦しい、辛い。時偶、夢に見る。命を賭けて戦ったのに、大切な奴を誰一人救えなかった愚かな男の道を。


「だけどさ、笑顔が戻る事は無かった。当たり前、だよなぁ。もう、死んでたんだから。とっくの昔にな、死んでたんだよ。死体を操作するネクロマンサーの仕業で動いていただけなんだと」


俺は泣きそうな、震えた声でそう告げる。そうすると、アカは身体を少し揺らした後、『そうか』と言いながら俺に視線を向ける。


「でさ、話は戻るけど、俺は友の為に英雄になったんだんだよ。だから、正義の欠片も存在していない。だからなんだろうな、民衆共が憎くてしょうがない」

「俺もそうだよ。俺だって大義とか、正義とかで英雄になった訳じゃない。あれを放置してたら世界が崩壊してた。そしたら彼奴等との宴とか、そういう楽しいのが出来なくなっちまう。だから世界を救った。まぁ、その救った奴等に、大切な奴等が殺されちまったんだけどな」


アカがそう言った後、この場を沈黙が支配する。


「あぁもう!このシリアスな空間をやめにしよう!」

「あぁ、分かったよ。俺達らしく、馬鹿みたいに明るく行こうぜ。後、ダークネス・ラビリンス以外なら撃っても良いって事にしようぜ!」

「へぇ、良いの?」

「ぶっちゃけさ、めっちゃ腹たってるんだよ、民衆に。だから撃とうぜ。今回くらいは困っとけば良いんだよ」


俺は先程の会話で相当な鬱憤が溜まったので、そう言い放つと、アカは俺の言葉に衝撃を受け、固まった後、思いっきり腹を抱えて笑い出した。


「アッハッハ!民衆に諦念を感じているエルグファストに其処まで言わせるとは!其処まで怒りを向けられる民衆が哀れに思えてきたね」

「じゃあ何だ?撃つのを止めるか?」

「いやいや、冗談キツイよ、エルグファスト。俺がどれだけ怒りを、憤怒を抱えてると思っている訳?やるよ、やるやる。……………てかさ、普通のヤツじゃつまんないよね。だったらさぁ、とっておきの嫌がらせ魔法を開発しようぜ」

「ハハっ!良いぜ、やろうか!」










_______________________

□人工神造兵器

ミナ、ルアが人工的に英雄を生み出すために造られたなら、エルグファストは人工的に神を生み出す為に造られた。そして成功タイプにはそれぞれ名前があり、エルグファストの場合は、人工神造兵器永遠ノ神タイプ・エターナルと呼ばれており、エルグファストを生み出した研究所の研究員からはミログレフと呼ばれていた。


補足:ミログレフはその世界の花であり、花言葉は操り人形と反逆。


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