第39話 色白紫苑=死の番人 2

「『最初から全力で行こうか!』」


「『鬼の源、原初の姉妹。植物にして、生命にして、輪廻の根源。妖の女帝。生まれながらの人類敵にして、未来の人類守護者なり。輪廻は、生命は、植物は、巡る、巡る、巡った先には命の女帝が其処に居る』」


【第一の道:回帰した先に王は居るリターン・フォレスト・キング


私は【変わりの紫陽花】にその魔法を発動させる事は無く、私自身に魔法陣を刻み、私自身に魔法を発動させる。私がそうすると、私の身体に激痛が走る。本当に痛い…………っ!だからあんまり使いたくないんだよ、【回帰した先に王は居る】は!


私はこの激痛に耐えるべく、掌を強く握っていると、黒いオーラを纏っている【変わりの紫陽花】が私に待ってやるか、と言っているみたいに、突っ込んできた。私は痛みに耐えながらも、突っ込んできて【変わりの紫陽花】の攻撃を避ける。


「クソっ!クソっ!何でこのクソアマに俺の攻撃が当たらないんだよ!!こうなったらもっと激しくしてやる!!!」


【変わりの紫陽花】はそう怒鳴った後、攻撃の技術は滅茶苦茶なのだが、攻撃の速度が早まり、私は避けられずに当たってしまった。


『紫苑!アタシの固有魔法の適応が完了した!反撃開始出来るよ!』


…………!分かった、反撃開始だね!


「ギャハハ!当たった!当たったぞ!」


【変わりの紫陽花】はそう手を叩いて喜んでいる。私はイラッとした気持ちを覚えながらも、戦闘には冷静さが大事だと考え、息を吸い、頭を落ち着かせる。


「ギャハハ!これなら此奴を負かせれる!此奴に勝ったら何をしようかな………首輪を付けた状態の裸で街を歩かせるとか良いな!」


私は【変わりの紫陽花】のその言葉に頭の線がブチっ!と切れた気がした。


『うわぁ、同情するよ。それと同時に尊敬も少しはあるかな。だって紫苑の特大地雷をこうも踏み抜くとは。いやぁ、此処まで踏み抜くのは、ジンの天宝郷千事変以来だね』


ミナの笑い飛ばした様な、明るい声が頭の中に響き渡る。しかし私はそんな事を気にしない。今の私の頭は怒りに染まってしまい、そんな事を考えられない。私は陽太の物なのに…………心も身体も、全て!それなのに、此奴は…………!!


「完膚なきまでにぶっ殺してやる」


私は怒りを込めず、いや、怒りどころか、感情すらも込めずに、冷たく言い放つ。ただ、感情を込めない代わりに、膨大な殺意を込めて放つ。【変わりの紫陽花】は少し身体を揺らしたが、それを気にしないと言わんばかりに魔法を放つ。もしかしたら、自身の身を奮い立たせる為だったのかもしれないが、私にはどうでも良い。



鬼蹄拳きていけん


【変わりの紫陽花】の腹に拳を一閃加えた後、吹き飛ばされる隙すら与えない。私は【変わりの紫陽花】の頭を手で掴んだ後、地面へと解き放つ。私が地面に押し付けると、【変わりの紫陽花】が立っていた場所は、大きなクレーターが出来ていた。


私の追撃は、憤怒はまだ続く。むしろ、この程度で終わる訳が無いのだ。


輪廻の命砲撃リンカーネーション・フル・カノン


私の手に刻み込んだ魔法陣から特大の魔砲が解き放たれる。今立っている此処の階層の地面をぶち抜くのだが、まだまだ私の砲撃は続き、地面の奥の奥まで貫通した。


「アァァァァアアアア!!!!クソ、クソ、クソったれぇ!!!」


地面の奥からそんな叫び声が伝わってくる。痛いでしょ、辛いでしょ、これが私を怒らせた結果だ。だけど私の怒りは、この程度では治らない。【変わりの紫陽花】、お前を完膚なきまでにぶちのめし、殺すまでは。


私は【変わりの紫陽花】に怒りを募らせながら、地面の奥へと続く大穴に入っていく。ミナ、準備は良い?やるよ。


『良いよ!やると思って準備はバッチリだよ!イメージするは、ジンの圧倒的邪悪な力!』


私がイメージするは、花唄さんの暗黒の力。私とミナがイメージをし、その二人の空想を融合させる。喰らいなよ、絶対的な死の刃を!!


『死葬絶空斬』


私が自身の大鎌を振るうと、邪悪的なオーラと、死んだ者達の怨み声が聞こえてきた。やっぱり、あんまり好きじゃないね。この怨み声は。邪力があるからかな、いつもよりも怨み声が大きく聞こえる。まぁ、今は良いや。この程度で此奴を殺せるのだから。


「二つ目だよ、持っていきな!!!」


私は再度、自身の大鎌を振るい、二度目の『死葬絶空斬』を送る。



ザシュッ!!ザシュッ!!



「あ?あ、あ、アァァァァアア!!!腕が、俺の両腕がぁぁ!!!」

「うるさい」


私は【変わりの紫陽花】の声が煩わしく思い、大鎌の一番尖っている部分で、【変わりの紫陽花】の腹に突き刺す。ブチュッ!と音が鳴り、腹から血が流れている。


「フザッケンナァ!!!お前なんかにぃ!!」


【変わりの紫陽花】はそう叫んだあと、自身の切られた両腕を再生した後、その両腕で魔法を発動させ、私に向かって魔法を放つ。


私はそれを大鎌を持っていない方の手で魔法陣を展開した後、防御結界魔法を行使し、防ぐ。そして私は【変わりの紫陽花】に刺さっている大鎌に怨念を注ぐ。そうすると、立ち上がっていた【変わりの紫陽花】の腕は下がった。


「クソ、が…………俺は、死ぬのか。…………何処で、間違ったんだろうなぁ。昔は、ただ単に、戦いたいだけだった。それなのに、どう、して………なのに、俺は自分を、捨てちまった」

「私は【変わりの紫陽花】、貴方の過去を知らない。私からすれば、この組織の一員になったのが間違いだと思う……………だけど、それは私の視点。もしかしたら、絶対に入らなくちゃいけなかったのかもしれない。もしかしたら、それよりも前に間違えて、そのままだったのかもしれない。というか、自身ですら分からないのに私が分かる訳ないでしょ」

「ははっ、その通り、だな。アンタの言う通りだ。何処からか、間違えて、そのまま進んじまって、罪も、苦しみも、辛さも、全て忘れてしまった化け物になっちまった」

「違うよ、貴方は人間でしょ。ずっと間違えているのも、最後に間違っていた事に気付くのも。人間である証だよ」

「そう、か。敵にそんな事を言うなんて、狂ってるだろ。まぁ、いい。一つ、忠告をしておくとしよう。お前がどんなに強くとも、ボスには絶対に敵わない!綺麗に死ねる事を頑張ると良い」


私は【変わりの紫陽花】の言葉を聞き終わった後、【変わりの紫陽花】の腹に刺さっていた大鎌を抜き、【変わりの紫陽花】の首を刎ねる。


「本当に、貴方は悪だよ。最後の最後まで、ね」

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