第36話 目指せ組織壊滅!

「ふっふっふ。よく来てくれたね、花唄くん」

「まぁ、そうですね。呼ばれましたから」


私は白峰さんに呼ばれたので、山上探索者協会支部支部長室へとやってきた。そして扉を開いた瞬間こんな事を言われた。今度は何をやってるんですか、この人は。


「というか、花音に優香。それに色白ちゃんに域外君を呼び出して何をするつもりですか?」


そう、この部屋にいるのは、私と花音と優香、色白ちゃん、域外君である。私的にはこのメンツで何をするんだ、という感じではある。いや、だってさ、こんなアホみたいな戦力を集めてるんだよ?誰でもこうなるって。


「嗚呼、花唄くんの疑問は尤もだ。何で此処まで集めたのか、集めた本人である私でさえ分からない」

「ねぇ、未亜。こんなのが支部長って大丈夫なの?ぱp……探索者協会会長が騙されてたりしてない?」

「花音、残念ながら正当な結果だよ。仮面を被ってた訳でも、賄賂で買った訳でも無い。真っ当に受けて受かったんだよ」

「ちょっと?目の前に居る相手に向かって言い過ぎなんじゃないのかな?」

「あんまり怒らない方が良いのでは?白峰さんの年だと、額に皺が出来ますよ?」

「私はそんな歳じゃないよ!まだ28歳だよ!」

「いや、二十代後半に入っているからその歳なのでは?」

「ぐぬぬ、ぐぬぬぬぬぬぬ!!」

「ま、白峰さんでイジるのは此処までにしておきますよ。それで?何故私たちを此処に集めたのですか?」


私が白峰さんにそう問い掛けると、白峰さんは疲れた様にため息を吐いた後、再び口を開いた。


「何故花唄くん達を集めたのか、だったな。ある組織の壊滅、それを他の探索者支部から依頼されてな」

「もしそうだったら白峰さん一人で片付くのでは?白峰さん、意外と強いですし」

「意外と強いってのが癪に触るが……………まぁ、そうだ。普通の組織なら私一人で片はつく。しかしな、構成員と所有している特異能力が問題でな」

「構成員と特異能力が?」

「ああ」


白峰さんは私の疑問に頷いた後、説明をし始めた。まず、幹部以下、通常戦闘員以上である隊長格の中でも強力な構成員を話し始めた。






一人は【変わりの紫陽花】


闇、邪属性を得意としている第32部隊隊長。その闇、邪属性の得意度は、街一帯に強烈な闇魔法を展開出来る程である。範囲は他の隊長格と比べると狭くなるのだが、効果は他の隊長格よりかは幾分か高い。その効果は幹部並みである。


しかし、身体能力は然程高くないので、其処で幹部の連中達と差が出来たと思われる。






二人は【心底の向日葵】


熱、火、陽、炎、焔魔法を得意としている58部隊隊長。【熱血の向日葵】の脅威点は、幹部、ボス、隊長達を加えても、一番の属性種類を持っている事になる。


とは言っても、これだけ数多の属性を持っているので、十分に鍛錬が行き通っているでは言えない。けれども、並大抵の探索者よりも練度は上である。





三人は【無意味のクローバー】






第102部隊隊長。この【無意味のクローバー】は得意魔法どころか、使用できる魔法は何一つ存在していない。


それなのにどうして脅威と呼ばれているのか。それは純粋にして純正な拳や脚。素の身体能力なのに魔力纏いをした者達よりも身体能力が更に上。


そして何が一番脅威か、それは模倣技術だろう。本来ならば、魔法、霊力、天力、邪力、聖力………そんな力が存在してこそ出来る技を単なる技術だけで真似たのだ。


猿真似では断じてない。60%の中途半端な模倣でも、99%の一歩手前の模倣でもない。100%の完璧模倣でも無い。100%の完璧模倣を更に超えた110%模倣でも無い。限界の、限界の限界の限界の限界を超えた150%模倣である。






四人が【閉じ込められたアスチルベ】





拘束魔法を得意としている第21部隊隊長。


他の隊長格と比べると、大きな戦闘能力は存在していないのだが、サポート、支援能力に秀でている。そして特異能力に内包されているであろう、一定体力、又は一定力以下の場合、無条件拘束が可能とされる。


そして何が恐ろしいか、それは部下である隊員達との連携能力にあるだろう。先程行った通り、個々の戦闘能力は大して大きくは無い。しかし部下達と連携をする事で、敵を錯乱させ、勝機を導き出す事が可能となるのだ。






五人は【救えない救世主のアセビ】






得意な魔法は生贄、代償魔法を得意としている15部隊隊長。【救えない救世主のアセビ】の脅威点の一つ目は無条件の代償、生贄対象にする事が可能と言う点である。


本来の生贄、代償魔法は両者の同意、つまり契約が成立しないと行使が出来ないのだが、【救えない救世主のアセビ】は相手の合意なく発動可能なのだ。見てきた経験か、感じてきた経験か、はたまたそのどちらか。その経験から此処まで生贄、代償魔法を進化させてきたと考察出来る。


そして二つ目が地形への代償、生贄魔法行使が可能と言う点である。先程も言ったのだが、生贄、代償魔法の行使は両者の同意が必要である。


なので、自然である地形と会話を出来なければ、この代償、生贄魔法は行使できない。しかし【救えない救世主のアセビ】は両者の合意などは必要ない為、地形などに代償魔法、生贄魔法を行使出来るのだ。





六人は【壊れてしまったアイビー】





精神操作魔法、精神破壊魔法を得意としている第28部隊隊長。


第28部隊隊長と同時に、組織の中で記憶精神改造協定会の会長を務めている。


【壊れてしまったアイバー】は精神操作魔法、精神破壊魔法を行使して成功する可能性が高いのは、頭である。とは言っても、腕、太腿、腹、背中、どれを触っても少しは可能性が存在している。


本来の精神操作魔法、精神破壊魔法は頭でなくては発動が出来ないのだが、【壊れてしまったアイビー】が研鑽に研鑽を重ねた結果、精神破壊魔法、精神操作魔法が進化したのだ。


そして【壊れてしまったアイビー】の何が脅威か。もちろん、精神操作魔法、精神破壊魔法が厄介というのもあるが、戦闘能力、それも身体能力が異常なまでに高い。


【無意味のクローバー】程では無いのだが、それでも隊長格の中では次点を担っているぐらいには、身体能力が高い。







「これが隊長格達?…………控えめに言ってさ、強すぎない?」

「だからこそ、君たちを呼んだんだろう」

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