第32話 双霊邪VS鬼の暴虐

「月光一刀流」


『月輪』


私が月光一刀流、月輪を巨鬼に向かって解き放つのだが、巨鬼の身体には傷がほんの少し生まれるだけだった。やっぱり硬いね。


「全然効いてない……………もっと魔力を込めなきゃ駄目なのかも」


『いや、魔力を込めて斬るのは得策じゃないぞ。まぁ、その手段もあるんだが、あの巨鬼の装甲は魔装だからな。魔装を貫通出来るのを使えば良い』


ジン………帰ってきてたんだ。朝に遊びに行くって言ってから全然連絡取れなかったからビックリしたんだよ。というかさ、魔装を貫通する一手なんか持ってないんだけど。


『…………………どうしよう』


えぇ…………魔装貫通と魔力込め以外には無いの?


『魔力操作の応用で出来なくは無いんだけど………今のマスターじゃキツイ』


本当にどうしたら良いんだろう。私はそうやって頭を抱え、悩んでいると、後ろの方から突き撃が飛んできて、巨鬼に少しだが傷を付けた。


「やっぱり傷が出来た。未亜!!多分だけど、私の場合は霊力を、未亜の場合は邪力を纏わせたら攻撃が通じるみたいだよ」

「え!?邪力って武器に纏わされるの!?」

「えぇ?魔力が纏わされるんだから出来るでしょ」

「そうなの!?」


『マスター……………俺と模擬戦をした時、俺が俺の愛刀に邪力を纏わせてたの見てたでしょうが』


あ!!そう言えばジンがやってたね。失敬失敬、てか、私はそれが出来るのだろうか。いやさ、やりはするよ?だけど少し不安なんだよね。


『それより更に高等技術の魔邪統合を成し得ている癖に何を言うか。まぁ、マスターなら大丈夫だよ』


え?えぇ!?あの魔邪統合ってそんな高等技術だったんだ………………私はジンの言葉に驚きながらも、私なら出来るというジンの言葉を信じ、私の中に流れている邪力を愛刀に流し込む。そうすると、私の愛刀の白い刀身は紫黒色のオーラを流し始めた。


「よし!初めての武具邪力付与纏い達成だよ!!」

「うーん………………何で今まで其処に到達出来ていなかった謎なんだけど。未亜は力の纏いとか不得意とかじゃ無くて、得意な筈なんだけど」

「ふふっ、それはね…………ただ単に思いつかなかったから!!」

「なるほど、ただの馬鹿だったという事ね」

「シンプルな罵倒!?酷く無い!?」

「酷く無いから安心して良いよ」


私と優香はそんな会話をしながら巨鬼に向かって攻撃を開始する。優香の槍で突いたり、私の愛刀で切ったり、巨鬼に順調にダメージを与えていく。


「抉り貫け」

「空さえ斬り落とす」


『血潮突誓』


『空星斬』


優香が自身の槍で抉り、私は愛刀で切り裂いていく。しかし抉り、切った側から再生されていく。そしてそれだけでは無く、魔力量が増大されている。首とか落としても余裕で再生するし……………あの毒蛇さえ首を切り落としたら死んだんだけどな。


「どうするの、未亜。あの鬼、私達が攻撃してるけど全く体力が減ってないよ。それどころか魔力が増えてるから私たちが不利になってるし…………弱点とか無いの?」

「もしそんなのがあったら私が即座に攻撃して倒してるよ。あの巨鬼はダンジョンコアを食べたから体内にダンジョンコアがあると思うんだよ。というか、あるにはあるんだよ。もう見つけたし」

「そうなの!?だったらなんで攻撃しない………待って、弱点が無いって言った?ダンジョンコアが弱点って分かってて、場所も見つけてるのに?」

「その弱点が弱点になり得てないから言ってるんだよ」

「弱点になり得てない?」

「そう、多分なんだけど……………巨鬼がダンジョンコアを食べて進化を越えた進化をした時かな。一つだった筈のダンジョンコアが10個に分裂してるんだよね。そしてその一つ一つが通常のダンジョンコア並みのエネルギーを発している。まぁ、それだけなら良かったんだけどさ、何故か。本当に何故かその弱点であるダンジョンコアの属性が移り変わってるんだよ。分かりやすく言うと、この攻撃しか通じませんよっていうのがね、途轍もない速度で入れ替わってるの」

「それってどれくらいなの?」


私は信じられない、というよりも信じたく無い事実を優香に告げる。


「0.0003秒」

「ちょ!?ウッソでしょ!?」

「残念ながらさ、嘘じゃないんだよ。本当に絶望的だよね。まぁ、策がない訳じゃないんだけど」

「それ………本当?本当じゃなかったから締めるからね?」

「死んだら締まらないと思うけど?」

「その時は地獄で締める!」

「うわ、流石に怖いよ、優香。そんなんだから私よりもモテないんだよ」

「一様モテてます!未亜が以上なまでにモテすぎているだけです!」

「はいはい、そう言う事にしておいてあげるよ」

「そう言う事じゃ無くて事実なんですけど!?」






ーおまけ




「久しぶりじゃん、ジ〜ン!」

「あ、■■師匠じゃんか。久しぶり」

「いや、だからさぁ!!アタシはジンの師匠じゃ無いって何度言ったら分かるのさ!?」

「ふふ、それは無理な相談だね。今の俺の徒手空拳の道を教えてくれたのは■■師匠だからな」

「諦めましょう、■■童子ミナ。こうなった時のジンはアホみたいに頑固なのは貴方も知っているでしょう?私たち英雄の中では一番の長い付き合いなんですから」

「お姉ちゃんよりこのアホとの方が長い付き合いだなんて……………悲劇!!!!」


■■童子ミナは膝をつき、手を地面に置いて嘆いている。ジンは今でこそ落ち着いているとは言え、■の時代の時は相当なトラブルメーカーだったのだ。そしてそのトラブルメーカーと一番長い付き合いなのだ。ジンのこの扱いは当然と言っても良いだろう。


「■■師匠……………大丈夫?膝ついちゃってるけど」

「誰の………誰のせいだと思ってるの!?」

「…………………誰の?あ、お菓子食べる?」

「………………………食べる」


■■童子ミナは声に悔しそうな色を混ぜながらそう言った。■■童子ミナはジンの事を面倒臭いと思いながらも、お菓子の腕は認めているのだ。


そして■■童子ルアは自身の想い人と、妹のそんな様子を見ながら苦笑いをし、目の前に出されたお菓子に手をつける。


「悪くは無い」

(本当に悔しい………………お菓子の腕とかもだけど、私の好みを把握されているのが悔しい。それはこのコーヒーもだ。私がコクがあって苦味が濃いのが好きだってバレてる)


■■童子ミナはそんな事を考えてはいるが、その美味しさで顔が緩んでいる。


「そっかぁ、美味しかったか。良かった、成功して」

「美味しいとは言ってないでしょ!?というか、ジンの事だから味見はしてあるんじゃ無いの?」

「そりゃあ味見はもちろんしてあるけど………もしかしたら■■師匠の味覚が変わって好みの味じゃ無くなっているかもじゃん」

「何載年居ると思ってるのよ。今更味覚が変わる事なんて無いと思うけど……?だけど、もしそうなったら………また好みを把握してね」

「分かってるよ、何度も■■師匠の好みを把握してあげる」


■■童子ミナは自身の髪を退け、耳を触る。それは照れている時にやる癖だ。


■■童子ルア■■童子ミナの様子を見て頬を膨らませる。羨ましいと思っているのだ。


もし■の時代からの戦友がコレを見たらこう言うだろう。


『やっぱりお前英雄タラシじゃんか』


と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る