第29話 コピー

「あの竜ってジンを元にしてたの!?」

「そうだね」


私はあの後、家に帰り、眠りについてジンの心象世界へと再び来た。それで話を聞いてたんだけど……え、えぇ?確かにジンを元にしてたかなら魔力の波長が似てるのも理解でき………………ん?少し違和感があるんだよね。


「あのさ、ジン。あの竜、ジンを元にしてたんだよね?いわばコピー品だと思うんだけど、なんでジンの魔力と一緒じゃ無いの?」

「完璧なコピー品を目指そうとしていたなら出来た。だけど完璧な一緒にするつもりは無かったみたいだ。その方が俺に勝てる可能性とか出てくるしね。俺と同じだと、良いとこ引き分けだよ。俺と一番変わっている例を挙げるとすれば、性格だね」


なるほど、そういう事だったんだ。確かに性格とか全然違うもんね。私がジンの言葉にウンウンと頷いていると、ジンはまた喋った。


「まぁ、俺のコピー品とは言っても、失敗作だろうけどね」

「そうなの!?その失敗作でも結構な強さしてたけど…………………」

「そうだよ、そんぐらい全盛期の俺の力が強かった、それだけ」

「ふーん……………………そういえばなんだけもさ、何でジンは失敗作って分かるの?」

「それは………………まずはあれを作った奴を言わなくちゃね。前にさ、ダンジョンイレギュラーの時に真っ黒い奴が居たでしょ?そいつだよ。ちなみに名前はブーファス。それでなんで分かるのか、だっけ。それはね、俺と彼奴が________」












「義理の親子!?!?」

『そうなりますね。花唄様の能力と、ダンジョンイレギュラーを花唄様から逃した者がです』


俺はルアからそんな事を告げられた。いやさ、確かに花唄さんの能力からは不思議な感じがしたから、ルアみたいに喋れる能力とは少し違うのかなぁ、とは思ってたけども!こんなゴチャゴチャだとは思わんやん!ん?待てよ?何でルアはそんな事を知っているんだ?


『マスター、私達遙か昔の人々がどうやって能力になったか知っていますか?』


へ?どゆこと?だってルアが前に言ってたじゃんか、転生してなるって。だから殆どの能力が常人からの転生なんでしょ?


『それは今の時代、ですね。本当に初期の能力はそうではありません。偉業を成さなくては、駄目なのですよ。そしてその初期からの能力は自身の生前の能力、英雄として生きた力を反映させるのです』


へぇ、そうなんだ。でもさ、結局、何が言いたい……………………そういう事?花唄さんの能力も、ルアも、ダンジョンイレギュラーの味方をした奴も、全員が全員、遥か昔から生きていたって言う事?だからよく知っている訳か。


『そういう事です。そしてだからこそ辛いのです。あの子は皆の為にと生き、命を賭け、戦い続けた。それなのに降ってくるのは希望や幸せでは無く、更なる絶望だった。そしてボロボロになるまで戦ったとしても、守った民衆から来る言葉は罵倒や否定、恐怖だったのです。そしてあの子は【人類ノ守護者】としての仕事は放棄してしまった。だけどこれは仕方ない事だと思っています。私達英雄はその辛さをよく知っていた。それなのに分からなかった。私は、私は……………!!』


ルアから悲痛な声が聞こえてくる。どんなに辛くとも、悲しくとも、泣きたくとも、吐きたくても、苦しくても、顔に虚構を貼り続けた。その結果がこれか。なるほど、ルアが昔、英雄はクソって言っていた気持ちが分かった気がする。確かにクソだ。


英雄とだけで【人類ノ守護者】としての仕事がやってくる。一度人々を守った。強大な者から守れる力がある。だからってだけで戦えってか?名前も、性格も、顔も、知らない、関係も無い奴なんかの為に?


まぁ、それ以上に民衆がクソだけどな。当たり前だろう、自分達の事を守っている英雄に向かってボロクソに言うんだぞ?どうして言える、どの口が言っている。守りに守って限界を迎えたら捨てるんだろ?これだから、民衆は嫌いだ。これだから人間は______


『マスター!!!落ち着いてください。また爆発しそうになっていましたよ。マスターが人間は醜く思い、嫌っているのは知っています。ですけど、色白様の様に嫌いのが全てじゃ無いでしょう?今それを爆発させれば、とんでも無い事になりますよ。もう一度、大切な人を失いますよ』


俺はルアのその言葉で一気に正気に戻された。あー、またやらかしそうになった。俺の顔が徐々に暗くなっている気がする。一度、寝るか。それが良い。













「なんと言うか、暗いね」

「わぉ、その一言で完結されるとは思っても見なかった」

「だってさ、この雰囲気のままやっちゃうと躊躇いが出ちゃうじゃんか。あの真っ黒い奴、ブーファスと戦う時に。それにさ、ケジメは付けなくちゃでしょ?」

「…………………!ふふ、そうだね!」


私がそう言うと、ジンは驚きの顔をした後、思いっきり笑った。


「ありがと、未亜」


ジンは私に向かってそう言った。………………っ!うるさくなってる、心臓の音がうるさく。顔もどんどん赤くなっちゃって……………なんでジンに呼ばれただけでこんなになっちゃってるんだろう。


「あれ?マスター、顔が赤く……………ぶほぉ!?」

「うっさい、うっさいバカ!」

「いや、どうやって枕を出して………がぼぉ!?」


私の枕攻撃は勢いよくジンの口に当たった。













_______________________

高度空斬撃ハイ・トゥエンター

多重天斬の斬撃を収束し、一方方向に放つ斬撃魔法。並大抵の者では抵抗出来ず、斬られるだけだ。前回出てきたアジ・ダハーカ(笑)の装甲すらも容易く切り裂く。なんでこれを自身の宿主に撃ったんだろうと作者も考えている。


補足:この斬撃のイメージは呪術廻戦のすっくん(両面宿儺)

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