第28話 空想ノ偽物VS英雄候補

うっわぁ、なんてモンを持ってんだよ。確かに隠し玉は持ってはだろうなって思ってたけどさぁ。アレを出してくるとは思わんやん。というか、アレを出してきたとなると、真っ黒い奴ブーファスが裏に居るよなぁ。身内の汚れは身内が綺麗にするべき、だよな。


そんじゃあさ、マスター、やるよ。俺はそう思念を送る。


『了解。てかさ、あの怪物、ジンと少し似てない?』


そう言う諸々の話は後でするよ。


『分かった』











全く、あの毒蛇の時と言い、ダンジョンイレギュラーな時と言い、なんでこんなに強い怪物がやってくるんだろう。しかもあの怪物、ジンと何かしら関係があるみたいだし。ま、それは今はいっか。これが終わったらジンが教えてくれるみたいだしね。


「域外君、後は任せて」

「花唄さん!?確かに貴方なら勝てるでしょうけど………………」

「君の命を賭けるのは此処じゃない。少なくとも、ね」

「だから、やるんですか。何で其処までやるんですか?俺と花唄さんの仲は講師と講義参加者のだけですけど」

「君が私の後輩だから、かな?それにこのままじゃ周りに大きく被害が出るからね。それと、私は死なない。勝ってみせるさ」


私は域外君とそんな会話をした後、魔力と邪力を身体に纏わせ、目の前の竜に向かって拳をぶつける。硬い…………………っ!例え全力では無いとは言え、結構な力を込めて殴ったんだけどな。まぁ、ダメージは入ってるみたいだし、攻撃を続けてみるか。


私はそんな事を考えながら拳や足を振るう。鉄でも殴っているのだろうか、金属音が何度も聞こえてくる。いや、鉄とかだったらもう破れているか。


『命ノ大空』


私は魔力に空の属性を付与し、魔法を行使するのだが、大ダメージにはなり得なかった。やっぱりだ、この竜、一定内のダメージを殆ど抑えてる。例えると、あの『命の大空』を100ダメージだとすると、あの竜はその100ダメージを1ダメージに抑えたのだ。


これは…………………あの竜の性質かな。全く、あの男性………………あんな奴にそんな丁寧に言う必要が無いか。彼奴はハゲだけで充分だね!あのハゲは本当にめんどうくさいのを持ってきてくれた。後で鉄拳制裁をしておこう。


『うへー、恐々。あの男に同情を禁じ得ないぜ。知らない所に目覚めたと思ったら、知らない奴に鉄拳制裁されるんだもん』


は?それ、どういう意味!?あのハゲ、自分で動いて行動したじゃんか!?誰かに身体を動かされてたとでも言うの?


『お、正解正解。目の前の竜に思いっきりされてたな。まぁ、あの男にあの竜を持たせたのは真っ黒い奴だからな。元凶は彼奴だろ』


私はジンの言葉に驚愕が隠せなかった。確かに私はあの男が嫌いだった…………だけどそれは操られていた表向きの姿で、その表面だけ見たら助けたく無い。しかし操られていない裏面は何も関係が無いから助けたい。


私はそんな葛藤に悩んでいると、ジンから思念が飛んできた。


『俺はマスターが何で悩んでいるのか分からない。だけどそんな俺でも一つ言えることがある、自分の心を信じれば良い。助けないも、助けるも、自分で選べば良い』


ジンのその言葉で覚悟が決まった気がした。私は亜空間倉庫から愛刀を取り出す。そして柄を持ち、刀身を鞘から抜き出す。鞘から飛び出た私の愛刀の刀身は白く、煌びやかに輝いていた。私は自身の愛刀の柄を両手で持つと、目の前の竜は冷や汗を掻き、後ろに退いた。


「ちょいちょい、どうしたのさ。私から急に逃げるなんてさ。もしかして想像して怖くなっちゃったのかな?私に斬られるのが」


私がそう『ニヤリ』という笑みをしながら挑発すると、目の前の竜は誰が見ても怒ってると分かるくらいの咆哮をした。ま、やっぱりなってくるよね。ジンも割とプライドが高いし、どうかなぁ、と思ってたんだけど、正解だったみたいだね。


私は『してやったり』と思っていると、目の前の竜は私に向かって爪を振るってきた。私はそれを受けずに刀身で『ツルリ』と受け流した後、目の前の竜が振るってきた手に向かって斬撃を放つ。そうすると、竜から悲鳴と斬った場所から血が噴き出てきた。


目の前の竜から噴き出た血は人間の物とは違い、青色の血だった。やっぱり一定の範囲外だとその性質は効かないのか。よし、斬れるのは分かった。反撃開始と行こうか。


私は足を踏み出し、竜の周りを走りながら斬る。竜は私を脚で潰したり、爪で攻撃しようとするが、私は走りまわっているので、当たらないのだろう。そしてそれと同時に竜と比べると、小さいのもあるかもしれない。


私がそう考えながら『ザシュッ』と竜を斬っていると、竜はボロボロな身体で私を睨みつけた。うーん、何をするだろ。身体はボロボロだけど目は全然と言って良いほどに衰えてないし。私がそう疑問を覚えていると、竜は魔法陣を展開した後に小竜が召喚される。


何がしたいんだろ、私はそう思いながらも小竜を切り裂いていく。私が切って切って切って切って、切ってるうちに模擬戦場は青い血だからけになっていた。そして私も模擬戦場と同じく、青い血に染まっていた。あーあ、これは帰ったら洗濯して風呂に入らないと。


私がそう思っていると、竜は口を開けた後、周りの魔力を収束させる。わお、すっごい魔力。どんな威力なのか、見てみたい、感じてみたい気持ちはあるけど…………………後ろに守らなきゃいけない人がいるんでね、それを撃たせる前に殺させてもらうよ。


『天囚六輪覇道門』


「第三門!開門」


伊薔薇屠殺斬いばらとせつざん


私がその剣技を発動させると、竜の首を切り裂いた。そして竜が怪物石に変わる所まで見てから、男の方に向かっていく。









_______________________

□明薄ノ衝撃

気絶する事だけに特化した魔法。しかし作中で使用した域外陽太は加減をし過ぎて、ただ吹っ飛ばすだけになってしまった。


□ 天囚六輪覇道門

魔力に天と王の属性を付与する事で使用可能な剣技。分類的には魔法剣になる。しかし未亜は意識しなくても無意識にやっているので、ただの剣技だと思っている。


補足:ジンはこの事に気づいている。


ちなみにだが、洗脳された男を殴ったとさ。前からの鬱憤があったから仕方ないよね!

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