第27話 師匠と弟子

私は中学校が終わった後、山上探索者協会支部に来ている。何故かって?私の勘が言っているのだよ、なんか面白いことが起こるだろうなって。私がそう考えていると、受付あたりから声が聞こえてきた。其処には域外君と、私に怒鳴ってきた男の人が居た。






「ハッハッハッ!おい、お前さぁ。お前が連れてる女、とっても良いなぁ。お前なんかにゃ勿体無い。だから俺の女にしてやるよ!」

「は?お前、何を言ってるんだ?」

「おいおい、分かってねえのか?この状況がよぉ!」

「分かってはいる、だけど何で受けなきゃいけねえんだよ」

「いやいやいや、分かってねえなぁ。俺に逆らうとどうなるのかがなぁ!!!」

「へぇ、どうなるの?」


俺と筋肉質でハゲな探索者の先輩が言い合っていると、花唄さんが此方に来て、ハゲ筋肉を威圧している。なんか花唄さん機嫌悪くねぇか?


『気のせいだと思いますよ』


そうか?俺より長生きしているルアが言うなら……そうなのかもな。


「域外君、私が許可します。全力でこのクソハゲをぶちのめしなさい」


やっぱり花唄さん機嫌が悪いだろ!?俺は花唄さんにビクビクしていると、ハゲ筋肉が喋った。


「こんな小僧に俺がぶちのめされるかよ!!強さは良いが、目は三流以下だなぁ!」


え?お、ちょ、マジ!?このハゲ筋肉、あの状態の花唄さんに上から話しかけたぞ!?バカかよぉ……俺、このハゲ筋肉が勇者に見えてきたんだけど。


『ならば花唄さんは魔王ですか?この事を言ったら怒りますよ、花唄様は』


え、えぇ?言ったのはルアでしょ?…………それでさ、話は変わるけど、あのハゲ筋肉って花唄さんに勝てる?


『100%無理だと断言しましょう。例え今の状態から進化しても無理でしょう。それくらいに実力差が離れているのです。とは言っても、向上心がカケラもないあの男では、進化も無理でしょうけどね』


「それでは、両方とも合意という事で模擬戦場に移動しましょう」


俺はルアの言葉に『やっぱりなぁ』と思っていると、花唄さんがそう言った。えぇ!?全然聞いてなかった……………………まぁ、いっか。あの程度なら簡単に勝てるし。


『確かに今のままでは余裕で勝てるでしょう。しかしあの男は切り札を隠し持っているようです。花唄様ならば圧勝が出来るでしょうが、今のマスターでは少々ピンチになるかもしれません』


あのハゲ筋肉がそこまでの手札を持っているとは思えないんだけど…………………分かった、警戒をしておくよ。俺とルアがそんな会話をしていると、模擬戦場に着いた。そして俺とハゲ筋肉が位置に着くと、花唄さんの声が響く。


「スタート」


その声が鳴ると、ハゲ筋肉は愚直なまでの一直線で突っ込んできた。力は中々、だけど遅すぎる。俺は突っ込んできたハゲ筋肉の腹に拳を加える。俺の拳は思いっきりめり込み、勢いよく吹き飛んだ。これが場外負けのヤツじゃ無くて良かったな。もしそうだったらすぐに負けてたぞ。


「ざっけんな、ざっけんなざっけんなざっけんな!!!!!!どいつもこいつも俺を舐めた目で見やがって。殺してやるぞ!」


ハゲ筋肉はそう発言した後、自身の亜空間倉庫から己の愛用武器と思われる大剣を取り出し、再度俺に向かってくる。俺は『馬鹿の一つ覚えみたいに突っ込んでくるなぁ』と思いつつも、その大剣攻撃をきちんと避ける。


やっぱり遅いな。いやまぁ、だろうな、と言う感じではあるのだがな。あの何も武器を持っていない状態であの遅さだったのだ、この大剣に自身の身体能力をアップする効果か、大剣を持てば身体能力が上昇するスキルでは無いと、俺には追いつけない。





32度目の大振り、か。全くさぁ、構えも力も全然使い方を分かっていない。そりゃあさ、俺みたいな能力から教えてもらっているやつだったら結構チートになるよ。だけどだよ、それでもコレは無いでしょ。教える人がいなかった?ノンノンノン!独学だったとしてももうちょっと技術が高いよ。


多分だけどさ、このハゲ筋肉は魔力が常人よりも少し高いから、それと言って敵は現れなかったんだろう。そしてもう一つの考察、これが技術の上昇が見込まれない原因。強敵と戦って来なかったって事。いや、正確には【避けてきた】と言うのが正解かな?


俺はそう考えながら大剣を避ける。まぁ、ハゲ筋肉の切り札を切らさないのが得策だしね。さっさと倒すとしますか。俺はそう考えると同時に、魔法をイメージする。俺は紫苑とは違い、魔法はそこまで得意じゃ無い。まぁ、ルアから魔法初心者と言われるくらいだからなぁ。


だから魔法を態々イメージしなくては発動出来ない。しかしだからこそ、魔法への効果を明確に出来ると言うもの。本来、魔法という物はイメージすればするほど、魔法が強固になる。しかし今の殆どの魔法使いはイメージを出来ていない。発生速度を優先しているからだ。その点に関しては、俺が何枚も上手だ。


まぁ、発生速度が化け物かって言うぐらいに速いのに、イメージもキチンと出来ているという花唄さんみたいな化け物も存在しているのだが。そんじゃあイメージを………………衝撃は強烈で、ダメージは薄く!


『明薄ノ衝撃波』


俺がそれを発動すると、ハゲ筋肉は勢いよく吹き飛んでいった。その勢いは、先刻までの拳による殴りとは比にならない程に。俺は『ふー、終わったぜ』と思っていると、ハゲ筋肉がブツブツと呟いた後、ある札を取り出した。


『マスター!!!それを止めてください!それが切り札です!』


「はぁっ!?もう終わったんだぞ!?」

「ハハッ!気づいたか。しかしもう遅い!召喚」


仮想天黒竜アジ・ダハーカ










_______________________

□魂底防御

文字通り、魂を防御する魔法。効果は使用者の魔法熟練度に比例している。そしてこの比例は、『魂底防御』の魔法では無く、すべての魔法である。


補足:数百年程度では実用化が出来ないほどに、必須熟練度が高い。

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