第26話 英雄候補VS■王帝 3

ジンは刀を取り出した後、その刀で振る。私は咄嗟に自身の刀でジンの斬撃を消そうとする。しかし、私が力を入れても全然と言って良いほどに消されない。先刻の拳や蹴りより……………断然重い!?私は魔力と邪力の出力を上げ、刀に纏わせて消す。


本当に………重い斬撃だった。私が成長し、進化しているのと同時にジンも成長している。いや、違うか。正確には開放されてっている、が正解かな。だけどさ、此処まで強いなんて……予想外にも程があるでしょ。私は額から冷や汗を流しながら、ジンを見つめる。


そうしていると、いきなり私に斬撃が襲ってきた。これは…………さっきの斬撃魔法!?私は驚きながらも、斬撃魔法に対処していて、気づいた。この斬撃魔法、先程よりも更に強くなっている。そして次の放射の瞬間には、更に強化されている。伊達に高位存在じゃ無いという訳ね。


(少し、賭けるとしようか)


「炎」


一華天庵火いっかてんえんか


私がそう呟くと、私の刀に黄色の炎が付与され、強化される。そしてその上から魔力と邪力で強化し、思いっきり振るう。私が振った先には『ドガァァン!!!』という爆発が鳴った後、煙が生じていた。


「だから甘いって言ってんだよ」


私の懐からジンの声が聞こえたと思ったら、私の胸にジンの紫黒色をした刀が刺さっていた。そして次の瞬間、私の体内はジンの邪力に侵食してきた。そしてジンは追撃と言わんばかりに、紫黒刀に魔力を纏わせ、衝撃波を発生させる。私はその衝撃波で大きく吹っ飛んだが、刀は抜けた。


まだまだこれから、そう思いながら立とうとすると、膝をついてしまった。


「かはっ!これ……………邪力か!?」

「ハハっ!正解だよ。分かってると思うけど、俺の能力性質は邪悪だ。まぁ、他にも闇とか遺産とかあるけどな」

「結局、何が言いたいわけ?」

「ん?嗚呼、すまんな、マスター。話が逸れた。話を戻すと、俺の能力性質は邪悪。此処までは言ったよな?だからこそ、と言うべきなのか、俺はトップクラスに邪力と相性が良い。だから邪力の侵食とか出来るわけ。すごいでしょ?邪力と向き合い、長くの研鑽を重ねた俺だからこそ出来る技と言っても良い。まぁ、生前に出来なかったのが気に食わないけどな。生前も能力の時も性質は変わらないし」


ジンはそう私にペラペラと喋っている。例え宿主と能力の中だとしても………………喋りすぎじゃない?本来のジンってさ、もっと慎重というか、冷静な感じだよね。もしかして久しぶりの戦闘で気分が上がっているのかな。私はそう考えながら刀を握る。


「おいおい、マスター。それで戦うつもりか?例え今が精神体だったとしても、戦い続ければ現実にも影響が出るよ?」

「なんでそんなのを自身の宿主にに使ったのよ。心配するくらいなら使わないで欲しかったんだけど」

「ハハ!それは無理な相談だな……………ちょ!?おま、マジかよ!?どんだけ天才なんだよ、マスター」


ジンが何故驚いたのか、それは私がジンの邪力を掌握したからだ。とは言っても、体内のだけなのだが。


「そんなに驚く?体内だよ?」

「あのねぇ!体内だからと言っても、そうも簡単に出来るもんじゃ無いの!一応その可能性も踏まえて、邪力に干渉耐性を付与していた筈なんだけどね。天才ってなんで毎回こんな偉業を成し遂げるんだろう」

「知らないよ。私自身が天才だって言うのは認めるけどさ、偉業を成し遂げた覚えはないね」

「それマジで言ってるの?………………だ〜か〜ら〜!それやってるのが偉業だって言ってるんだよ!!!」


ジンは私……………では無く、私に発現した私の眼に言っているのだろう。私ではどうなっているのか分からないが、変化してはいるらしい。成功、か。いや、これはジンの邪力を使っちゃった。本来ならばジンの邪力を使わない事が成功。つまり成功とは程遠いのか。


私は刀を構える。そひて次の瞬間、私の刀とジンなら刀が触れ合う。もっと鋭く………っ!もっと素早く……………っ!私は精神を集中させ、刀を振るうたびに進化させる。そして進化する度に見えてくる、ジンの魔力の流れが。いや、違うね、ジンの魔力だけじゃない。全ての魔力が見えている。


「炎」


『一華天庵火』


私は先程に避けられたのを再び付与し、再度刀を振るう。そしてジンは今度こそ不味いと思ったのか、私の刀攻撃に自身の刀を合わせ、振るう。その瞬間、膨大な量の魔力と邪力が周囲を襲った。しかし私たちはそれでは足りず、何度も何度も打ち合いをする。


本当に凄まじいね。隙あれば魔法を撃ち込もうと思ったけど…………………撃ち込む隙間なんて微塵もない。全く、どっちが化け物なんだか。私はジンが先刻言った言葉を思い出しながら刀を振るう。私が考え事をしていたからなのか、腕を切られて、切り落とされた。


「ぐっ!?腕を切り落とされる痛みってこんな感じか………………結構痛いね」

「でしょ、結構痛いんだよね。とは言っても、心象世界の効果で痛みは和らげてるんだけどね」

「これで和らげてるんだ…………………実際の痛みってどんなに酷いんだろ」

「勘違いしないでよ、マスター。実際の痛みはこの痛みより低い。ただ、魂の直接攻撃だから酷いってだけだよ。これくらいなら『魂底防御ソウル・ウォール』でなんとかなるんだけど、マスターは持ってないからね」

「その配慮、ありがとうね」


私はジンと会話をしてた時に再生した腕で刀を振う。しかしジンはそれを予想できていた、と言わんばかりに土魔法を展開し、防御した。


「この土魔法、硬いね」

「それを容易に切り裂いているマスターが言いますかね。それにしてもさ、会話をしている最中に襲ってくるなんて、可愛くないねぇ」

「私が可愛い時なんて無いでしょ、何を言ってるの?」

「え?めっちゃあるじゃんか。俺のお手製の菓子を食べてニコニコしている時とか、俺に頑張ったねって魔法やスキルの獲得とかを褒められた時とか、すっごい笑顔だよ?」

「わーーーーー!!!!してない、そんなのしてない!!」

「掻き消したのに何を言うか………………あ、そろそろか。もうすぐで目覚めるよ」


ジンが私に向かってそう言うと、私の意識は真っ白に染まり、落ちていった。私が次に目覚めると、私自身の部屋だった。あーーー!ジンのお菓子を食べそびれた!











_______________________□戒玉弾

これまでの自信の罪を自覚し、戒める事で強くなる魔法。しかしジン程の強力な戒玉弾を放つとなると、強大な罪と戒めが必要になってくる。


□悪天の誓い

今まで自分が誓ってきた数の分だけ身代わりが存在する。しかしその誓いは自分の為では無く、相手の為という条件がある。


補足:使用者条件の一つに、邪悪属性、悪属性、闇属性のどれか一つ持っていなければならない。

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