第24話 英雄候補VS■王帝(ジン)
むむむ、マスターったら、撫でてたら寝ちゃった。昔とかもそうだ、俺が撫でると結構な頻度で寝ちゃうんだよね。ルアを撫でた時もそうだったし、ルアが特別かと思ったんだけど……………々特別だったのは俺の手だったという事か。俺はそんな事を考えながらマスターの頬をぷにぷにする。
「マスター?起きなよ、起きないとイタズラをしちゃうよ?ほら、ほっぺぷにぷにって」
俺はそう言いながらマスターの頬をぷにぷにと触る。嗚呼、なんという事だ、この柔らかさと心地良さ。その全てが俺を狂わせていく。俺はそんな事を思いながらマスターへの頬を触れるのを激しくしていると、『んむぅ』という可愛らしい声を出している。
俺がそう何度も突いていると、やはり起きた。
「あのさぁ、ジン?流石に私の頬で遊び過ぎじゃない?めっちゃぷにぷにされたんだけど」
「マスター、違う、違うぞ。俺は遊んでいた訳では断じて無い」
「えぇ?それじゃあ何をやってたのさ」
「俺はマスターの頬が気持ち良くて癒されていただけだ」
「うわっ」
俺が自信満々にそう言うと、マスターはちょっと引いた様な視線を俺に向けている。しかし俺には無問題だ。俺はコレをやり過ぎてその視線を向けられるのは慣れてしまったからな。
「そんな事よりも!」
「いや、私的にはジンが私で癒されていたとかいう、変態要素にそれどころじゃ無いんだけど」
「だ〜か〜ら〜!!そんな事良いの!マスターが強くなる為にするよ。模擬戦!」
「ふぅん…………………良いよ、受けよう」
俺はマスターの返事を貰ったので、指を『パチンッ』と鳴らすことで、自身の心象 世界を変化させる。俺が変化させた世界には平原が広がっていた。
「先行はマスターにあげる。だからさ、来なよ」
「うん、わかった。遠慮なく行かせてもらうよ」
マスターはそう言うと、その場から消えた。俺は背後に裏拳をすると、消えた筈のマスターがそこには居た。この感じ、スキルの『縮地』を使ったか。あのダンジョンイレギュラー戦に使用していた『縮地』とはまるで別物。…………………なるほど、スキルへの魔力伝達速度と練度が上がっているのか。
それならば効果が上がっていることにも説明がつく。
俺はそんな事を考えながら、『縮地』を使用して何度も襲いかかるマスターの攻撃を防いでいる。うーん、何を狙っているんだろう………………へぇ、そういう事か。一番の得策はコレを受けない事なんだろうけど、良いよ。受けてあげよう。
「良いよ、撃ちなよ」
俺がマスターに向かってそんな事を言うと、マスターが『縮地』をしながら用意していた魔力の弾幕を俺に喰らわせてきた。ふゅー!いいねぇ、魔力隠蔽もしているし、威力も高い。今のルアは気付けず、大ダメージを喰らってたんじゃ無いの?まぁ、俺には無意味なんだけどね。
俺が使用したのは唯の魔力の壁。魔力による防御壁とか、そんなもんじゃ無い。ただただ魔力を使っただけの薄い魔力。しかし、俺の魔力は幾年もの間、磨き上げられてきた、そんな魔力だ。マスターみたいな人間種の魔力とは格が違うんだよねぇ。
「早すぎ、でしょ。私が放った時には魔法陣とか、そういうのは無かった。なのに、どうして」
「魔法陣が無かった?ハハッ!当たり前じゃんか。俺は防御魔法とか、使ってないんだぜ?ただの魔力の壁だ。いやさぁ、魔力って練度や格が上がるとさ、こんな芸当も出来るんだよね」
「もう一つ、聞きたいことがある。どうやって貼った。ジンと私の魔弾が放射されて当たるまで刹那の一瞬しか無かった!それなのに魔力の壁を貼るなんて事は出来なかったでしょ!」
「ん?嗚呼、そういう事ね。マスターが言ってるのはさ、自分をサポートしている時は劣化しちゃうんだよ、どうしてもね。だけど、自分自身で発動出来る様になったらさ、刹那の一瞬なんて遅すぎるんだよ」
俺はマスターに対してそう言い放った後、マスターに拳による打撃攻撃を喰らわせた。今のマスターでは決して反応できない速度。今のままでは決して捉えることは出来ない。しかし、この速さを見ることが出来る様になった時、マスターは絶大な進化を得るだろう。
俺はそう考えながらマスターに何度も攻撃を放つ。何度も何度もマスターは攻撃を喰らうが、一度も倒れ伏す事はなかった。それを見る度に俺の脳内には、戻ってきた記憶の中にあるロッドがチラつく。俺はソレに少し気にしながら攻撃を続けていると、マスターが俺の攻撃を防御した。
「ハハッ!ようやく進んだか、次のステージに!!」
「おかげさまでね。てことで、喰らいなよ!!!」
俺はマスターの成長に心から楽しんでいると、マスターから蹴りをもらった。いや、態と受け止めた、の方が正しいかもしれぬな。しかし………………あの蹴り、威力もスピードも高い。今のマスターならあの巨大ゴーレムを技一つ使わずに倒せるな。もしかしたら魔力圧だけでいけるかもしれないけど……まぁ、別に良いや。マスターが強くなった、これだけがこの場にある真実だ。
俺はそう喜びながら次の攻撃をする。先刻は物理の打撃攻撃ばかりだったからなぁ、そろそろ魔法を使おうか。あの魔法も良いが………………決めた、この魔法にしよう。
『多重天斬』
俺は俺の横後ろに魔法陣を展開し、魔法を発動する。この魔法は多数の斬撃を繰り出す魔法である。しかし多くの斬撃を出現させ、放射する為、威力は控えめになってはいるが…………………俺の魔力量と練度で容易にカバー出来る。さてさて、マスターはどう出るのか。
俺はそんなワクワクを心に潜めず、ギラギラとした瞳で『ニヤリ』と笑っている。そしてマスターは俺の斬撃魔法を刀で防ぎ、切り裂く。……………は?
うーん、マジかよ。このマスター、いとも簡単かのように切り裂きやがった。
いや、違うからな!?俺のこの魔法は切り裂きやすいとか、そういうんじゃ無いからな!?加減とかもしてないのに……………いや、魔力量を全部注ぎ込まなかったという点では、そうなのかもしれないけど。俺はマスターが俺の斬撃魔法を切り裂いた事で少しの混乱状態に陥ってしまったが、すぐに立て直す。一発でダメなら………………それらを収束させるか!
「斬撃収束」
『
俺が斬撃を収束したのを放つと、マスターはその危険性を感じ取ったのか、即座にその斬撃から避ける。そしてマスターが避けた所は『ズガァァン!』という音を鳴らして地に斬撃の跡を刻み込んだ。やっぱり避けるか、マスターって勘が結構強いんだよねぇ。俺はそう考えながら『ふゅー』と口笛を吹くと、マスターの叫び声が聞こえた。
「こんの、バカジーーーーーーン!!!!!!!何処の世界に自身の宿主を殺せる技を放つ能力があるの!?」
「何処の世界にって…………此処にいるじゃんか」
「自覚あったんだ、良かった………………いや、ならないんだけど!?自覚あるならなんで撃った!?」
「いやぁ、マスターを成長させるためだよ。だからさ、これはノーカン、ってことで」
「いや、ならないんだけど?」
マスターはそう言いながら魔法を展開させる。あの魔法陣………………やっばい位に殺意マシマシじゃんか。まぁ、最初にやったのは俺だしねぇ。しょうがない、その魔法を受け止めるとしますかね。
『
マスターはその魔法を発動させると、途轍も無い質量を持った魔法が俺に近づいてくる。俺はその魔法を『不可侵領域』『世界の独立』『時空防御』『天の制御権』『地の制御権』『無の制御権』。この六つの能力を使い、マスターの魔法を全力で防ぐ。
そして次の瞬間、『ピカッ』とこの心象世界を埋め尽くす程の光に呑まれた。
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