第23話 帰還とドキドキ
私は空間を解き、ダンジョンに戻ると、どっと疲労感が溢れてきた。いや、当たり前か。短期間にあれだけの無茶をしたんだ、これだけの疲労で済んだのが幸いと言うべきなのかな。
「花唄さん!ありがとうございます。守っていただいて………………無事では無いみたいですけど」
「うん、結構な苦戦をしちゃったからね。それに逃しちゃった」
空間を解いた私に色白ちゃんが近づいてきた。いやぁ、優しいねぇ。私と色白ちゃんって出会ってからそんなに時間が経っていないと思うんだけどねぇ。私がそう考えていると、色白ちゃんの後ろから域外君が声を掛けてきた。
「花唄さんが逃したんですか……………相当な化け物だったんでしょうね」
「まぁ、そうだね、確かに凄かった…………まぁ、もうすぐで殺せそうだったんだけど」
「だとしたらどうして?」
「少し邪魔をされてね……………あのダンジョンイレギュラーと戦った事で大分消費をしてきたし…」
「していたし?」
「邪魔をしてきた奴、相当な実力者だった。今の私が万全の状態でもやられていたのは私の方だった。もしかしたら傷をつけれるかも、それ程の実力者だったよ」
私がそう言うと、色白ちゃんと域外君は驚いた様な顔をして硬直した。何故、そんなに驚いているのだろうか、もしかして私はどんな怪物でも捻れる化け物とでも認識していたのだろうか。だとしたら失礼以外何者でも無い。私はその考えに至った途端、怒りが沸いてきた。
『はぁ、落ち着けよ。そういう情報とかは彼奴等の特異能力が教えてたからな…………そういう感じでは無いと思っていたが、並大抵の怪物なら容易に捻れる。そう思ってたんだろ』
そっかぁ、それなら良いや。私とジンがそんか会話をしていると、『コツコツコツ』と集団の足音が聞こえた。その足後の方向に振り向くと、結構ボロボロな花音と班の人達がそこに居た。
「花音〜、お疲れ様。私さ、ダンジョンイレギュラーを逃しちゃったんだよね。花音は?」
「嘘!?未亜が逃したの!?私も追い詰めたっちゃ追い詰めたんだけどさ、全身が真っ黒い奴に邪魔をされて逃げられちゃった」
「花音もなの!?私も黒い奴に邪魔をされちゃったんだよね」
私と花音はそんな会話をし終わった後にダンジョンの入り口へと向かっている。当たり前だよね、ダンジョンイレギュラーが二体出現したとかいう異常事態が起きたんだ、これ以上講義参加者たちにダンジョン探索(仮)とかしている場合じゃあ無い。
私達は講義参加者たちがダンジョンを早く出られる様に怪物が出た瞬間から殺している。私は刀で、花音は薙刀で切り裂いていく。それから数分後、ダンジョンの入り口付近に着くことが出来た。(とは言っても入り口まで300mはあるのだが)。私と花音は少し息を吐くと、天井から巨大なゴーレムが降ってきた。
「はぁ、此処ってゴーレムとか居ないよね?」
「うん、居なかった筈だよ。特にこんな巨大なゴーレムは」
「てことはさぁ、このゴーレムって……………」
「「ダンジョンイレギュラーだよね」」
「本当に困ったもんだよ、今日だけで3回もダンジョンイレギュラーが起きるって何事?ダンジョンイレギュラーのバーゲンセールじゃんか」
「うーん、あの真っ黒い奴が何かやってそうではあるんだけどね」
「まぁ、そんな事を今考えても仕方がない。一撃で潰そうか」
「うん、分かったよ」
『『
私が刀を、花音が薙刀を振う時、強烈な衝撃波と魔力圧が周囲を襲った。無事ゴーレムを倒せたとは言え…………………周囲への影響力やっぱりやばいなぁ。強いんだけどさ、周囲への影響が強いと考え物だよねぇ。
私はそう考えていると、ダンジョンの入り口に着いたので、講義参加者たちとはお別れをする。私も家に帰ってジンに甘えたいんだけど…………………山上探索者協会支部に行かなくちゃいけないんだよねぇ。はぁ、めんどくさ。
「未亜?顔に『めんどくさい』って書いてあるよ?仕方ないから我慢しようね。講義が終わっただけとかならすぐに帰れたんだけど…………………あそこまでダンジョンイレギュラーが起きるとね」
「まぁ、それは分かってるよ。だけどそれでもめんどくさいなって思っちゃったの。…………………」
「未亜?そんなに悩んでどうしたの?そんなに考え込むなんて珍しく」
「私の考え込む姿がそんなに珍しい?………いや、ちょっとね。あれってさ、本当に自然のダンジョンイレギュラーなのかな」
「へ?それってどういう…………………まさかッ!?」
「多分花音が考えていることを私も考えていると。多分なんだけどさ、あのダンジョンイレギュラー、自然な物じゃないよ。前に白峰さんからダンジョンイレギュラーの情報が載ってある本を見たんだけど……………その本の中にはダンジョンイレギュラーとは本来の個体よりも強くなったり、居ないダンジョンに現れたりするんだけど、魔力の流れは同じはずなんだよ。でもあれは違った、魔力の流れが歪過ぎる」
「もしかしたら白峰さんや未亜が使っている別の力の線は?」
私は花音のその言葉に『否定の意』を示す形で顔を横に振るう。
「あれは魔力だよ、正真正銘のね。だけどまぁ、未発見の奴だったかもしれないからね…………可能性の一つとして頭に入れておいてよ」
「うん、分かった」
私も花音はそんな会話をしていると、山上探索者協会に着いたので、白峰さんが居るであろう支部長室に向かっていく。
〜同じ話の流れなのでカット〜
「ふあ〜〜、疲れたよぉ。おかしいって、なんでこんなに短い期間で二回も危機に瀕するのかなぁ」
「あはは、お疲れ様、マスター。頭ナデナデしてあげよっか?」
「うん、お願い」
「え?ちょ、えっ、まじ?本当に言ってんの?」
「もしかして冗談だったの?だとしたらカナシイナァ、私って騙されちゃったんだぁ」
「本当にショック受けてる?めっちゃ棒読みだけども」
「はぁ、受けてるよ。愛しの相棒に疲れている中、騙されちゃったんだから」
「いと、しの……………………」
「ん?どうしたの?………………うぷ!?ちょっとぉ、急に撫でないでよ。ビックリするじゃんか」
私がそうプリプリと起こってみるが、ジンの私を撫でる手は止まることを知らない。ちょっと不安になるが、私の頭を撫でる手は優しいので、抵抗はしない。というか出来ない。ジンの私を撫でる手ってさ、優しいとかもあるんだけど……………私をグズグズに溶かす様な手つきもあるんだよね。
そして私がジンに撫でられるのを抵抗しないもう一つの理由。ジンの手が私の手に触れるたびに………心地良い、そして心臓がドキドキして身体が熱くなってしまう。私の身体は何か異常事態が起きてしまったのかな……………………だけど良いや、今はこの感覚に酔いしれたい。
私は撫でられたことで朧気になった思考を持ち合わせながらジンの顔を見る。俗に言う、『上目遣い』をしていると、ジンが私の耳元に口を寄せ、囁いた。
「可愛い」
今の私の蕩けた思考には、それが一番欲しくて、クリティカルヒットでもあるその言葉は私の脳を確実に抉っていた。だから、仕方ないのだ。そのジンの囁きで意識を失ってしまう事も。
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□双和武天撃
花唄未亜が風式花音との技を作りたいという事で編み出した技。特殊な能力が必要、ということは無く、魔力を合わせるのと、一定の力を持っている事が条件。まぁ、その魔力を合わせるのが0.0000003秒以内、一定の力が素で海を割るとか出来ないと無理なんですけどね。
作者の感想:これが両方とも中学生ってマジ?
ジン(■の時代に5歳で英雄になった人)
「ジーーーー」
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