第21話 ダンジョンイレギュラー
私と花音の班は分かれて探索(仮)をしているのだが、花音からいきなり連絡が飛んできた。
『未亜!私の方にこの階層、いや、このダンジョンでは現れない怪物が現れた!多分だけど、ダンジョンイレギュラーだよ。そしてもう一つ、未亜の方にも出ると思う』
「分かった、警戒しておく。それじゃあ切るね」
私と花音はそんな会話を『思念到達』というスキルでしてから連絡を切る。私は息を吐き、警戒を全面に出していると、魔力の流れがおかしくなってくる。ちっ、やっぱりコッチにも出たか!私はそう心の中で悪態を吐きながら、いつでも戦える様に構える。
私がその構えを取ったことで講義参加者達からは不審な目で見られたが、域外君と色白ちゃんは私の意図に感づき、警戒と戦闘態勢をした。それから数秒後、周辺の魔力がこれでもかと集まった魔力の塊から怪物が出現する。これが……………ダンジョンイレギュラー……!
「人型の怪物か……………私、初めて見たよ。まぁ、人型の怪物だろうと関係ない、潰す」
私はそんな強そうな口調で怪物に喋っているが、本心としては嬉々半分、焦り半分と言った所か。この怪物はまぁまぁ強い、そんなレベルだ。しかし此処は広大な迷宮、と言うわけではない。階層主の部屋に出たら多少は広くはなるのだが、道中はそこまで広いという感じでは無い。此処でもし、ナーガの時みたいな力を出したら、此処が崩壊してしまう。
本っ当に面倒くさいなぁ!私はその声を心にしまってから殴ると、怪物も同じタイミングで殴り出したので、怪物と私の拳が触れ合った。その時、この空間に衝撃波が流れた。やっぱりこの程度の力でも衝撃波は発するか。それにコイツ、私の今の弱点を分かってる。今の私には講義参加者達が付いているから全力を出せないんだよね。
私はそう考えながら心の中で『めんどくさい』を連呼していると、怪物は周辺の魔力を塊にし、具現化したのを『怪物召喚』の器にしたようだ。怪物は召喚した怪物を講義参加者達に向かわせているので、私は『縮地』で瞬間移動をし、前に造り、常備してあった刀で切り裂く。
「貼れる奴だけでいい!結界を貼れ!じゃやいと私はお前等を助けれない!」
私が召喚怪物達を刀で捌きながら講義参加者達にそう叫ぶと、次々に結界を貼っている。私は順調に切り裂いていると、此処一帯にある効果が付与された。なんだ、コレ。私は疑問を抱えながら切り伏せていると、ジンから思念が飛び、答えを教えてくれた。
『この魔法は【硬装剛壁】、空間や結界を硬くする魔法だな。ソレを此処一帯に付与する事で頑丈にしたんだろ。域外陽太が発動し、色白紫苑が強化したみたいだ。これなら戦えるぞ、マスター』
自分達の保身だけだと思っていたのに……………此処までやってくれるなんて。私は自然と顔に笑みが溢れる、戦闘の楽しみでは無い。私の後輩にあんな頼りになる探索者が居るからだ。私が会ってきた探索者の中で信頼して信用に当たる
あの2人よりも強いのは勿論居る、しかしあの強さを驕らない、それは殆どと言って良いほど居ないから。人って言うのは、常人が何をしようとも敵わない、そんな力を手にした時、驕らずには居られない。だから、信用で、信頼に当たるのだ。私は自分の刀を強く握り、ほんの少しだけ力を放つ。
「この周辺の硬さ、これなら力を放って斬れる!」
『
「第一門!開門」
『
私の膨大な魔力を刀に込め、刹那の一瞬だけ、魔将具物として昇華させた刀を振るった。その時、召喚された怪物達の首は斬り飛ばされ、怪物石と変わった。そしてそれからコンマ1秒も経っていないうちに暴風が巻き起こる。はぁ、風属性を魔力に付与したのは間違いだったかもしれない。
しかしこれだけの力を出しても傷がつかないとは…………………ふふっ、本当に凄まじいな、域外君は。私は周囲を硬くするのは出来ないからなぁ。いやまぁ、魔力にモノを言わせれば出来なくは無いのだが、精密な魔力操作によって完成されたその魔法と比べれば弱いの一言しか無い。コレに関してはジンに後で教えてもらわなくちゃ。少し憂鬱だね。
私はそうため息を吐きながら、ダンジョンイレギュラーの怪物に向かって睨み付ける。あんまり魔力の威圧を出しすぎるとダメだから…………加減して。私はそんな事を考えながら魔力威圧をすると、ダンジョンイレギュラーの怪物も魔力威圧をしてきたのか、魔力による圧が周囲を襲う。
コイツ、態々私が魔力威圧をした時に合わせて魔力威圧を重ねたのか。魔力威圧で周囲に被害を与えたいから…………………魔圧拡散をしたのか。はぁ、ソレ、そうそう出来る訳じゃ無いんだけどね。本当に末恐ろしい、あの毒蛇みたいに進化しない様にさっさと殺すとしますかね。
私はそんな事を思いながら全身に魔力強化をしてからダンジョンイレギュラーの怪物に走り進む。私はダンジョンイレギュラーの所まで到達し、早く殺そうと首を切ろうとするが、私の勘が危機を予感し、咄嗟に
「花唄さん!?」
「大丈夫大丈夫、ノーダメージだから。安心しなよ」
私は口からそう言ってるが、結構危なかった。咄嗟の判断で不可侵領域を展開しなかったら…………考えたくも無い。まぁ、最低でも四肢の二つは飛んでいたとでも言っておこうかな。はぁ、なんで近いうちにこんなに危機に遭遇するのかな。ジン、サポートをお願い出来る?私が本気で行かないと不味い。
『オーケー、分かった。空想領域を展開するか?』
そうだね、お願い。このままやってたら此処が崩れちゃうから。私がジンにそう思念を送ると、私とダンジョンイレギュラーに結界を貼り、その空間を広大な空間に繋げる。はぁ、本当に困ったね。此処ってさ、私の魔力で稼働しているから長時間はキツいんだよね。あの毒蛇戦の時みたいに魔力が上昇するとかがありそうっちゃありそうなんだけど…………どう?ジン。私の魔力の急激成長は見込めそう?
『俺が故意で発動するのはキツい。だけど戦闘中に成長する可能性は全然ある。だからさ、マスター。頑張って限界を越えてくれ』
ははっ、ジンってば、随分な無茶を言ってくれるじゃんか。そう簡単に越えれたら苦労はしないんだけどね。私はそう考えながら深呼吸をし、ダンジョンイレギュラーに構えを取り、魔力で強化した足で地面を蹴り飛ばす。そしてそれからただ一直線の正拳突きを振るう、ダンジョンイレギュラーはそれを素直に受け入れた。
何故?私の頭の中でそんな疑問が駆け巡る。まぁ、悩んでいる暇は無いか。私がそう思い、ダンジョンイレギュラーを睨みつけると、心の底から私で遊んでいる様な顔で笑っていた。何を……?
『マスター!避けろ!』
ジンからそんか焦りを感じた様な思念が飛んできたので、周りをよく見ると、背後に巨大な魔力玉が存在していた。まさかアレがあるから笑っていたの!?クソっ、やられた!
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□不可侵領域
大きな魔力を消費して発動できるスキル。一般探索者ではハズレスキルとか言われているが、上澄の探索者では当たりスキルと言われている。このスキルの内容としては、ある一つの攻撃特徴(魔法、スキル、特異能力、特典、超能力…………etc)を設定して行使する。このスキルのストックは一つしかないのも初心者探索者にハズレスキルと言われる理由の一つである。
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