第15話 アシッド・ナーガ(偽)VS鬼才毒使い 3

「夕日に染まった赤い薔薇、海に染まった青い薔薇、夜に染まった黒い薔薇、光に染まった白い薔薇、月に染まった黄色い薔薇、生命に染まった緑のの薔薇、大地に染まった茶色の薔薇、透明に染まった無色の薔薇。絶対的なる七原色と厄災の無色が揃う。それではこの八の薔薇の前で踊り狂おう。悲劇喜劇の始まりだ」


『八色薔薇ノ厄災舞』


私がその魔法を発動させると、八色の薔薇の花びらが召喚され、毒蛇の方向にと向かっていく。赤い薔薇が炎を、青い薔薇が水を、黒い薔薇が闇を、白い薔薇が聖を、黄色い薔薇が稲妻を、緑の薔薇が風を、茶色の薔薇が土を、透明の薔薇は刺し傷を。その全ての薔薇の花びらが毒蛇に襲いかかっている。この魔法。やっぱり、キツイなぁ。


私の魔力量が上がったとはいえ、莫大な量のまりょくが必要なのだ。わかっていたとはいえ、魔力必要量が高すぎる。気を抜いてしまったら倒れてしまいそうだ。魔力が増える前は全部が失敗で、行使したら倒れてしまった。その時と比べたらマシになっているのだろう。


まぁ、キツいのは変わらないんだけど。私がそんな考えていると、私の目の前に毒蛇が放射した毒が向かってきた。私はその毒を赤い薔薇と黄色い薔薇を使って防ぐ。私は念の為に何重も重ねていたのだが、その防御壁は最後の一枚しか残っていなかった。やっぱりか、毒に込められている魔力の濃さが高い…………ッ!


魔力があんだけあるんだ。やっぱり毒にも魔力を込めてくるか。私の毒では対抗出来ない、しかし私の手札スキルの中で防御を突破出来るのは少ない。本当にどうきたものかな、私はそう考えながら毒蛇に近づいていく。一番効くのが殴るとかの物理攻撃だし、殴るか。私はそう思い、毒蛇の顔を思いっきり殴る。


しかしその時、私の中で何かが弾けた。いや、弾けたというよりかは、『ポンッ』と蓋が開いた様な感覚だった。私はの感覚に任せ、拳を振るうと、先刻の殴りよりも威力が出た殴りだった。なに、これ…………?魔力だけじゃなかった。なんなんだろう、これは。私の通常よりも黒い魔力よりも、もっとドス黒い魔力に似たモノ。


そして初めて特異能力を使った時以外は感じていなかった全能感。私はその感覚に酔いしれそうになって気づいた。私、まだ魔力以外の力も纏っているという事に。私は今、魔力操作以外を意識していない、それなのにどうしてコレを保てているのか。多分だけど、私の能力がやってくれているのだと思うんだ。たまに私の能力って意思があるんじゃ無いのか、って思う事があるくらいだし。


私はその邪悪な力を意識しようと思い、目を閉じる。もしかしたら毒蛇の毒でやられてしまうかもしれない。というか絶対に攻撃をしてくる。短い付き合いだけど分かる、そういう容赦は存在していない。だけど大丈夫だって、自信が持てる。私には特異能力相棒が付いているから。


私は相棒の事を安心して、信頼して目を閉じる。そして魔力以外の力を探す。そして十秒後、ようやく掴む事が出来た。私がそれを内から外へと引っ張り出していく。私の中に秘められているもう一つの力を確認し終えたので、目を開けると、私の周りに紫黒色の力が漂っていた。


これが私の力、これが私の闇。そう思いながら紫黒色の力へと手を伸ばす。その行動をすると『バキン!』という音が鳴り、紫黒色の力が私の中に吸い込まれていく。そして吸い込まれていく量が増えていく度に強くなっている、そんな感じがする。そして紫黒色の力が吸い込まれ終わった時、私の生物としての格が、一つ上がった気がする。


私は地面を『コツッ、コツッ』と音を鳴らしながら歩いていく。毒蛇はその私の様子をみて警戒をしている。当たり前だ、目の前の生命が異常な事態になったんだ。私だって警戒するよ。本当にさ、生物としての勘って馬鹿にならないよね。私はそう考えながら笑みを浮かべ、同時に圧も与える。


「先程の紫黒色の力を吸収した事で進化した魔力の圧だよ。結構重いでしょ?」


私が毒蛇にそう問いかけると、毒蛇の警戒が全開になったのか、私に向かって全力で毒を放射してくる。だけど私は焦らない。魔力と紫黒色の力を融合させる。これは感覚なんだけどさ、ノーモーションじゃあ融合出来ないんだよ。だから考えた。そして思いついた、密着させれば良いと。


私は右手と左手を合して融合をする。魔力と紫黒色の力は『バチバチ』と音を鳴らしながら圧を強めている。そして数秒後、それを完成させる事が出来た。それは刀、今の私が出来る事が、造る事が出来るとっておきの武器だ。もちろん私は武器を振った経験など無い。だけど問題は存在していない。


私は毒蛇に向かって再び笑みを浮かばせる。そして次の瞬間、私は太刀を横一閃に振るう。ただ振っただけ、それなのに私に迫ってきていた毒は消え失せていた。私は再び歩き出した。私が毒蛇に向かって歩いていると、毒蛇は私に恐怖したのか、後ずさっている。


しかし私は歩みを止めない。どんどん歩き、距離が縮まり、残りは150mとなった頃、毒蛇は極大の魔法陣を展開した。とっておきの魔法…………なのだろうか。今の私なら止められる……………だけどそれはつまらないよね。


「良いよ。その魔法、受けてあげるから放ちなよ」


毒蛇は私のその言葉に怒ったのか、怒りの鳴き声を出しながら魔法を放つ。すごいね、確かにあの毒とは比べ物にならないや。私が紫黒色の力を吸い込む前だったらどうしようも無かった。だけど今の私なら…………………縦に一閃、その攻撃は毒蛇の極大の魔法を斬った。


「ありがとう、毒蛇。貴方のおかげで私は強くなれた。貴方が居なければこの力を見つけれなかった。怪物には礼を言いたく無いけどさ…………これだけは礼を言っとくよ」


私は先刻よりも魔力と紫黒色の能力を刀に纏わせて一閃を喰らわせる。そうすると毒蛇の首が吹き飛んだ。そして私は毒蛇の生命反応が無くなったのを確認してから広場から去っていく。






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【花唄未亜の初強敵戦、善戦勝利】






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□八色薔薇ノ厄災舞

魔法辞典に載っている魔法とかでは無い。花唄未亜のオリジナル魔法。色々な魔法適正を持った花唄未亜だからこそできる魔法。


補足:ちなみに■■も『えぇ?主人って魔法を作る才能まであるの?それに粗はあるっちゃあるけど、磨き上げれば特大の魔法になるだろうし。マジであの英雄よりも才能あるじゃんか』と言ったらしい。


□亜空間倉庫

大体の探索者なら使える基本スキル。スキルとは想像を絶する努力と途方もない経験が必要だが、このスキルは別である。ちょっとの努力と経験で取得可能。ちなみに広さは人によって変わる。









と思われているが、魂によって変わるだけである。魂を操作出来る奴であれば、収容量を変えられる。しかし魂を変えられるのは極小数だそうな。

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