第10話 呪いのダンジョン

私が目覚めてから数日が経った頃、退院が可能なぐらいに体力が回復してきた。というかもう退院しているのだけど。それにアレは初めて魔力を使った事による魔力切れだったからそこまで重症って言う訳じゃなかったんだけどね。私はこの数日間の間に魔法の本を読んでいた。そのおかげで魔法の知識がとても頭の中に入っている。


しかしどうしてなのかなぁ。感覚、感覚なんだけどね?何故か能力の使える幅が広がっている気がするの。特異能力とは違う能力が身に備わっていく様な感覚が。うーん、よく分からないや。私はもう退院出来たことだし、白峰さんに聞いてみようかな。でも直接行くのは迷惑が掛かりそうだしなぁ。


あ、そうだ!電話をすれば良いんだ。私はそう思い立ってから数秒後、スマホを取り出して教えてもらった白峰さんの電話番号を入力する。『プルルルル、プルルルル』という音が3秒くらい鳴り続けていると、白峰さんのスマホと繋がった。


『何の用かな?花唄未亜。何か私に聞きたい事でもあったのかな?』

「あ、はい。私の中から何故か特異能力以外の能力の感覚があるんですよ。コレって何の能力とか分かりますかね?魔法とも違った感覚なんですけど」

『ふむ、なるほど。それはスキルという物だ。特異能力とは違い、後天的に得ることが出来る能力だよ。しかし随分と早いな。私はスキルが発現するのは結構後になると踏んでいたのだがな』

「へー、これってスキルって言うんですね。ソレを聞きたかっただけなので切りますね。白峰さんも忙しいでしょうし」

『ま、待ってくれ!私はまだ花唄くんと喋って時間を潰したいんだ。サボr………………』


私は白峰さんが喋っているのを最後まで聞かずに電話を切った。けどまぁ、良いよね?白峰さんはまだまだ仕事があるみたいだし。それに仕事をしていなかったのを私に擦り付けられたら溜まったものじゃないしね。私はそう考えているとダンジョンに着いた。先日に取った探索者資格カードをダンジョンの管理員に見せてからダンジョンの中に入る。


今日は単なる散歩のつもりでダンジョンに入るつもりじゃあなかったんだけどねぇ……………………白峰さんとスキルの話をしていたらダンジョンに潜りたくなっちゃったんだよね。私がそう思いっているとゴブリンが襲いかかってきた。私はその襲いかかってきたゴブリンの首を千切り取る。一応私に血が付かないように魔力で防御をする。


全てを防ぐ魔力防御………………それは魔力効率が悪すぎて、私の全魔力を使っても数秒が限界。だから血に限定した魔力防御を貼る。そうする事で最低限の魔力で血を被るのを防ぐ事が出来る。私が殺したゴブリンを『亜空間倉庫』というスキルで収納すると新しいゴブリンがやってくる。ざっと五十くらいだろうか。


「うーん、このゴブリン集団どうしようかな。物理だと一体一体倒さなくてはならないから面倒臭いんだよね。そうだ!これなら一気に殲滅できるよね。それじゃあね、ゴブリンくん達。『毒時雨』」


私が私の頭上に毒の塊をスキルで召喚してから、毒の方向性をゴブリン達に向ける。そして毒の塊を一気にぶつけるのではなく、分裂させて一つ一つをゴブリン達にぶつける。私がソレを発動させると毒の針がゴブリン達に突き刺さる。突き刺さってから1秒もしないうちに倒れていった。生命反応が無いので、死んでいるのだろう。


わぁお、結構強力な毒なんだろうな、と思ってたけど此処まで強力だとは思わなかったね。最弱の怪物であるゴブリンと言えども、状態異常の耐性や身体能力は一般男性以上なんだけどなぁ。この毒は絶対に一般人に向けて放ったらダメなヤツだ!いやまぁ、殆どのスキルが人に向かって撃ったらダメなヤツなんだけどね?大丈夫なのは回復系だけかな?


私は前にバフ系なら大丈夫なんじゃないの?て思ってたんだけど、魔力も無い人間にソレを撃ったら大変な事になるらしい。バフ系のスキルや魔法は魔力のある人じゃないと耐えられないのだ。魔力が存在しない生身の状態でバフを喰らうと、身体に耐えられない負担が襲いかかって死んでしまうらしい。魔力がその負担を抑える物になっているのだとか。


私が鼻歌を歌いながらそんな事を考えていると次の階層に行く為の階段に遭遇した。うーん、コレって行っても良いのかなぁ?一応白峰さんには20階層までなら行っても良いって言ってたけど。……………うん、言っちゃお!私はそう思った後に光も無い、真っ暗な階段を通ると、如何にも毒だよねと思えるくらいの紫色の水があった。


うーん、コレ完全に毒水だよね。しかも此処って一直線の道だからコレを通らなきゃダメなんだよね。はてはて、私はどうしたら良いのやら。私がうーんと声を鳴らしながら悩んでいると、天啓が降りてきたかの様な考えがやってきた。私のスキルの毒系に耐性系があったと思うんだよね。この毒は大丈夫なのかは知らないけど。


私がそう考えながら毒水に向かって指を突っ込む。しかし私の指は無傷だった。いやぁ、この階層は楽勝でクリアしてしまった。毒耐性のポーションとかを使って渡るのだろうか?もしそうなら私がズルをしたみたいで少し申し訳ないなぁ……まあいっか!





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□ダンジョン

地球に存在する6割の怪物の発生地点。本来なら即座に破壊した方が良いのだが、怪物を解剖する事で怪物石が獲得できる。その怪物石がとても便利でソレを収集する為にダンジョンを生かしている。


イッチは『ソレには人間の欲の醜さが現れている』との事。それ以外にもダンジョンが何故出て来たのか聞いてみると『呪いだよ呪い。本当に面倒臭い物を残してくれやがった。彼奴が結局、一番厄介だったんだよなぁ』と言っていた。


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