初恋(ファーストラブ)編
第0話 叶わぬ想いの始まり
小学校の頃、私はクラスに馴染めないでいた。
騒がしい教室から離れ、いつも図書室で時間を潰す。そんな毎日を繰り返していた。
寂しいと感じていた。私も友達の輪に入りたいと、そう思っていた。
だけど、話す勇気がなくて、一人ぼっちの日々が続いていた。
私には友達と呼べる存在が居なかった。あまり好きでもない本に囲まれ、肩身の狭い思いをしていたのだ。
◇
小学五年のクラス替え。この年に
霧江は転校生として私のクラスに来た。まだ馴染めていない、という共通点から興味を持っていた。
ある日、いつも通り本の檻の中にいると、霧江が図書室に入ってきた。
どこか、落ち着いた様子で緊張が解けたようだった。
私は思った。彼は私と同じなんだな、と。
クラスに馴染めずに此処に逃げてきた、似たものだとその時は感じた。
けれども、私は話しかけなかった。自分と同じだと分かっても、話しかける勇気がなかった。
そんなこんなで、私は霧江と一方的に出会ったのだ。
◇
中学校に上がった頃、接点ができた。同じクラスで、班が同じになったのだ。
チャンスだと思った。この時は、好きという気持ちは感じて無かったけど、仲良くなりたいとは思っていた。似たものどうし友達になりたいと思っていた。
意外にも霧江も私のことを知っていた。いつも図書室にいたのと、同じクラスだったから覚えていたのだ。
私と霧江はすぐに仲良くなった。やはり、似たものどうしだったのが大きい。
一度だけだけど家にも行った。考え方が似ていて、会話もしやすかった。
◇
ある日、霧江が他の女の子と仲良くしているのを目撃した。
その時だ。その時、霧江がクラスに馴染めたことへの安堵よりも、胸の痛みが勝ってしまった。
なぜ、胸が痛むのか。この瞬間に自覚したのだ。
私が霧江のことが好きだと。
これが、私の初恋。叶わなかった想いの始まりだった。
思えば、図書室で見かけたあの日から既に始まっていたのかもしれない。
◇
結局、卒業までに想いを伝えることは出来なかった。
しかし、私は知っていた、霧江とは同じ高校なのだ。だから、私は焦っていなかった。ゆっくり、徐々に距離を詰めていこうと考えていた。
◇
高校の入学式。私は霧江と登校した。
「緊張するね」
「大丈夫、すぐに友達できるよ」
これが、私の物語の始まりだった。
あとがき
ご視聴、ありがとうございました。
エピソードゼロいかがだったでしょうか。深雪の物語の前日談、楽しんで頂けたら幸いです。
デッド・エンド・ロール ~最狂のタイムリーパー~ 無口 @tetunomikado
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