デッド・エンド・ロール ～最狂のタイムリーパー～

第6話 予想外のジタイ

　二年生（三回目）は新鮮だった。

　霧江（きりえ）と同じクラスになれたことは本当に嬉しい。

　ただ、朝日には注意しなければならない。どこで出会ったか分からない以上、常に霧江のそばにいなければならない。もともと、そのつもりだったが。

　今は新しいクラスのホームルームで自己紹介をしている。あまり、話したこと無い人が多くて、少し緊張してしまったが、霧江にカッコ悪いところは見せて無いだろう。

　次は霧江の番。一年の時の自己紹介は三回聞いたが、二年の自己紹介ははじめて聞く。といっても、そこまで変わるものでも無いだろう。

「出席番号十一番、霧江（　）優斗（ゆうと）です。趣味はアニメを見ることです。よろしくお願いします」

　緊張して、少し声が震えていて可愛い。ごく普通の自己紹介だが、あまり目立ちたくないという気持ちが伝わってきて、守ってあげたくなる。

　少し取り乱してしまったが、二年生のスタートとしては良好だろう。とりあえず、自己紹介中の朝日（あさひ）を睨みつけてやった。

　二回目と一回目では二年生のクラスメイトとほとんど変わらなかったが、今回は大きく変わっている。だから、このクラスの雰囲気はとても新鮮に思えた。

　◇

「あのさ＿＿」

　放課後、霧江と一緒に帰っていると、霧江が話を切り出した。

「どうしたの？改まって」

「えっとね、今日、気になる人が出来たんだよね」

「__っ！それって＿＿」

　まさか、朝日と言うわけではないよな＿＿。

「同じクラスの望月（もちづき）朝日さん」

　どうしたものか。頭が痛い。

　特に今日話したわけでも無いのに気になってるってことは、一目惚れということだろうか。

「どうかしたの？」

　私の強張っていた顔を見て心配したのか声をかけてくる。息を整え霧江に向き直る。

「それで？」

　落ち着いた口ぶりだが、内心はかなり焦っている。

「あ、えっと＿＿とりあえず、友達になりたいと思ってるんだけど。どうしたら良いかな？」

　敵に塩を贈るようで気が進まない。そうだ、ここは丁重に断ろう。

「ごめんね。私、あまり望月さんと話したことないから、力になれないと思う」

「そっか＿＿」

　うっ。心が痛い。

「＿＿でも、相談になら乗ってあげるから」

　霧江の残念そうな顔を見たら咄嗟に口走っていた。

　次の日、昨日言ったことを今更後悔しながら登校している。

　付き合わせないためには、二人の接触を避けることが第一だ。だが当の霧江が朝日に会いたがっているのが難点だ。

　接触を露骨に邪魔をすると、霧江に嫌われかねない。だからといって朝日に「はい、どうぞ」とあげるわけにはいかない。

　接触したらもう終わりといっても良いだろう。なら、私はどうするべきか。

　そんな事をずっと考えてるものだから、時々霧江に不思議そうな顔で見られた。

　学校に到着した。登校中に色々考えたが霧江は恥ずかしがり屋なので、積極的にアピールをするとは思えない。ましてや、そこそこモテる朝日なんて、ハードルが高いはずだ。実際、一回目と二回目で告白したのは霧江ではなく朝日だ。

　ただ、相手からの接触なら霧江も話しやすいだろう。そこだけは注意しなければならないだろう。

　一旦、霧江と別れて自分の席に着いた。

　まぁ、朝日から霧江に話すことなんてあるわけないだろうけど。

「おはよう、霧江くん」

『！？』

　朝日が霧江の席まで行き挨拶をする。

　なぜ？霧江と朝日に接点なんて＿＿。

　席が離れているため、会話の内容は聞き取れないが、楽しそうに話していることは分かる。そんな中に入って行ける勇気が私にはなかった。

　霧江が私から離れていく、そんな気がした。

あとがき

　ご視聴、ありがとうございます。

　深雪が感じた疎外感、それは一回目や二回目よりも間近に感じたはず。