禁断の決闘"二度打ち"

 気付くと、元の場所に戻っていた。下半身がスースーするので自らを見ると、腹出し天狗装束──魔装を身に着けた状態になっている。下着が無く、股間部を隠すのは前垂れだけという中々にヤバイ恰好なのだが吸収効率を高める為には仕方がない……それでも恥ずかしい物は恥ずかしいのだが。これでは風が吹いただけで丸出しになってしまう。外では気を付けよう。

 それはともかく、何をすればいいのか分からずしばらくその場に突っ立っていると、大人の女性が話しかけてくる。彼女はこの場で契約の指導を行う教官の一人だった。


「契約は終わったか。天狗か?」

「あ、はい。鴉天狗っす」

「秋空雲雀、契約妖魔は鴉天狗……と」


 タブレットに何かを打ち込んでいる。どうやら契約内容の登録を行っているらしい。国にとって魔法師の能力把握は重要な課題の一つなのだ。

 今言った通り、私の契約した相手は『鴉天狗』。教員曰く毎年十人程度が契約するポピュラーな妖魔らしい。まあそういう事だ、私にはそこまで才能が無いのだろう。

 さて、気を取り直して先程出来た友人を探す。しばらく見回しているとすぐ脇に彼女が現れる。どうやら今終わったらしい。

 緑色の和服。他のそれと比べると露出度が低く、何だか特別そうだ。


「朝露咲良、終わったか。その姿だと……神格か?」

「神格……神様っすか? はえー、凄いっすね」


 咲良はどうやら才能がある様だ。彼女はしばらく周囲を見回し、やがて教官に告げる。


「鳥高……さん、です。関西の山の神、と言っていた、です……」

「鳥高神、ね……見つけた。間違いなさそうだな」


 教官が咲良から聞いた名前をタブレットに打ち込む。

 彼女の持つタブレットには全国の神社や祠の情報が入っており、簡単に検索出来るのだという。咲良の契約した相手はどうやら神戸の神様らしく、同名の山と神社がある事が確認された。


「神格だからといって鍛錬は怠るなよ。毎年勘違いする者が出るが」


 日本においては"八百万の神々"と呼ばれる程に多くの神々が存在する。その為、神格との契約者もそれ程珍しいものではないのだと。ただし多い分信仰が分散してしまい一部の神を除いて力も弱いので日本の魔法師が海外のそれと比べて特段強力という訳でもないそうだ。

 それはきっと私へのフォローでもあったのだろう。だが、それは何の意味もなさない。何しろ私は……


「雲雀、さんは……どうだった、ですか?」

「あ、私は鴉天狗だったっすよ~」


 ヒラヒラと舞って見せる。頭に被っている頭襟の両サイドについている白いポンポン、背に生える黒い翼、そして下着で押さえられていないせいで胸がゆらゆらと揺れる。そんな事をしてしまったので前垂れがめくれかけ、咄嗟に手で押さえる。早く慣れないと。この学園には今、男も居るのだから。

そういえば、その唯一の男子はどんな魔装になったのだろう。そう思った時だった。



「快人! 早速私と決闘しなさい!」



 部屋の一角からそんな声が聞こえてくる。

 私達がそちらの方向を見ると、そこには未だ制服を着たままの男に指をさしている赤毛の少女の姿があった。

 彼女の姿はしっかりと朱色の和装──やはり露出は多い──に変わっており、きちんと契約を済ませた事が窺える。今の声を発したのも彼女の様だ。

 彼女が今言った"決闘"、それはこの学園で全生徒に対し認められている権利であり、お互いに何かしらの物を賭けて魔法で実戦形式の演習を行うという制度である。

 生徒の魔法技術の向上を目的としたこの制度は、割と頻繁に利用されているらしい。教官の表情は一切変わっていなかった。


「……っ、お、おう! やってやろうじゃねえか比奈! 子供の頃からの恨み、ここで晴らしてやる!」


 男性初の魔法体質、藤堂快人がその決闘に応じる。

 しかし、どうも彼はまだ契約を終えていない様に見える。魔法が使えなければ決闘も何もない筈なのだが……


「じゃあさっさと契約すませなさいよ」

「いや、もう終わったが」

「……はあ⁉」


 どうやら終わっていたらしい。しかし何故彼は魔装を着ていないのだろうか。


「アンタ魔装は⁉」

「無い、らしい……俺にもよく分からんが」

「──ッ‼」


 その言葉で、比奈、と呼ばれた女子生徒は一気に顔に怒りを浮かべる。


「わ、私がこんなに恥ずかしい恰好をしてるのに……許さないわ‼」

「はあ⁉ 知らねえよそんなの‼」


 目の前の男が自分の様な羞恥心発生器の様な衣装を纏わなくともよいという事実に彼女は顔を真っ赤に染めて怒りを燃やす。


「いきなり決闘やるの?」

「いけいけー!」


 そんな様子に、周囲の少女達が囃し立てる。魔法師同士の戦闘がいきなり間近で見る事が出来るのだ。興奮もするだろう。

 そんな喧騒の中、ふと隣に立つ咲良を見る。


「……どうして」


 彼女は小さく呟いた。身体はプルプルと震えている。そこで私は彼女の考えを察してしまった。


「は、はは~……さ、咲良はどっちを応援するっすか?」

「絶対……比奈さん、です……!」


 そうして、今年度初の決闘が行われる事となったのである。



 決闘は『夢想鍛錬所』と呼ばれる空間で行われる。

 ここは主に生命の危険がある行為を行う際に使用され、この中で起こった事は全て"夢"となる───簡単に言えば、フルダイブ型のVRだ。

 お互いの力を十分に発揮出来る様に作られたここでは、毎日の様に強力な魔法が撃ち合われる決闘が行われていた。


「両者、決闘の口上を」

「一年、若草比奈。火之迦具土神ひのかぐつちのかみの御力を駆り、堂々たる決闘を!」

「一年、藤堂快人。レフストメリスの御力を駆り、荘厳たる決着を!」

「「我等の勇姿を見届けたまえ‼」」


 事前に教わった口上を半ば叫ぶ様に言い放つ。

 夢想鍛錬所の内部は円形のコロシアムの様になっており、戦闘場所を中心にひな壇状に観客席が設置されている。当然観戦が可能であり、あの場に居た一年生や決闘と聞きつけた上級生が大勢座っていた。

 そして私達も。出遅れて少し上の席になってしまったがまあ見えない距離ではない。

 所で、一つ気になる事がある。


「レフストメリス? 咲良、知ってるっすか?」

「いいえ……」

「ウチも聞いた事ないなあ。舶来の子なんかな?」


 藤堂快人が発した契約者の名前に私達は首を傾げる。その直後、私は違和感を抱く。


「え……誰?」


 何故か一つ多かったレスポンスに私は隣を見る。

 咲良と私の間、そこにはさも当然と言わんばかりに謎の少年(?)が座っていた。


「あ……鳥高さん、です」

「よろしくな雲雀ちゃん!」

「鳥高……ああ、咲良が契約したって言ってた……え、神様がなんで」

「こういうのは生で観なあかんやろ」


 その姿や言動は私が抱いていた神様像とはかけ離れていた。フランクな神が居るのは知っていたがここまで人と変わらないとは思っていなかったのだ。


「確か契約者と視覚を共有できるんじゃなかったっすか?」

「雲雀ちゃん……タイガーズ戦もテレビで観るのと現地で観るのとでは全然ちゃうやろ? それと同じやで」

「え何の話ですか」

「ウチも甲子園でやる時は絶対に行っとるからな。来週のチケットも取っとるし」


 突然謎の話を振られ、それが野球の話だと気付くのに私は数十秒の時を必要とした。

 そして次に脳裏に浮かんだのは、球場でジャージ姿でビール片手にメガホンを振る鳥高の姿。思わず吹き出しそうになるのを必死にこらえていた。

なお、実際彼はほぼそのままの姿で日々観戦に向かっているらしい。なおビールはその子供の様な見た目で売ってもらえないらしい。神だと言っても笑われるだけらしいが、正直同じ立場なら私も信じないだろう。

 この一連の話を咲良は完全に無視していた。神が外出している理由など欠片も興味はないらしい。そんな彼女が口を開く。


「始まる、ですよ」


 立会人がスタジアムから退避する。それにより、ようやく決闘が始まるのだ。


 最初に仕掛けたのは比奈だった。


「まずはジャブよ!」


 そう言うと、彼女は快人の方へ腰から抜いた刀の切っ先を向ける。そこに火の玉が現れ、次の瞬間には発射される。

 明らかに力がこもっていない、彼女の言う通り様子見程度の攻撃。契約したばかりでまだ慣れないのだろう、その調整でもあった。それに対し、彼は自らの腰にかけていた剣を抜き、迎撃する体勢を整え──



「ぶべらっ⁉」



──られなかった。その小さな火球は彼の頭部にクリーンヒットする。


「「「……は?」」」


 その声は、その時その場に居た全員が漏らしたものだった。

 そして、頭を黒焦げにしながらその場に倒れ、動かなくなる彼を見て、皆はようやく事実を理解する。


「……え、あ……しょ、勝者、若草比奈!」


 立会人もそうだったようで、一瞬の困惑の後に慌てて勝者の宣言をする。

 途端に盛大なブーイングが投げかけられる。皆、血沸き肉躍る決闘を期待してここに来ていたのだ。それをここまで呆気ない終わり方をされてしまえば文句の1つも言いたくなるというものだろう。

 未だ目を覚まさない快人に一通り罵声やどこから取り出したのか分からないゴミを投げつけた後、皆はそれぞれ解散しようとする。比奈も最初は呆気に取られ、次に怒り、最後には呆れ返って快人を叩き起し、退場する。


「私達も……帰る、ですか」

「そうっすね……」


 そんな例に漏れず、私達も帰ろうとする。いつの間にか鳥高神は消えていた。

 この後、午後からはこれからの学園生活についての講義がある。まだ時間はあるが、しかしここに居る必要もない。



「そこの方、私と決闘してくれませんか?」


 だが、そんな私達を一つの声が呼び止める。私は足を止め──咲良は止まらない。どうやら自分が呼ばれたとは思っていないらしい。


「ちょ、そこの紫髪の方ですよ!」

「……私、ですか?」

「そうです。私と決闘してくだ「嫌です」さ早い!」


 セミロングの黒髪、エメラルドグリーンの瞳、背丈は私や咲良と同じ程度──150後半──で白い肌。一目見ただけでは争いなど好まなそうな大人しそうな佇まいであるが、しかし今こうして咲良へ決闘を申し入れている。


「ご安心下さい。決闘といっても大層な物を賭ける訳ではありません。私が勝ったとしても精々昼食を奢ってくれる程度で結構です。私は力試しをしたいだけですから」

「なら……私じゃなくても、いいのでは……」

「ま、まあそれはそうですが……」

「では、私はこれで……行きましょう、雲雀さん」


 そう言い、彼女はその場を後にしようとする。


「決闘するの⁉」

「え。いや、しな「そうです! 今から私とこの方で決闘します!」い……」

「決闘‼」

「消化不良だったのよね〜」


 しかし、ここで不幸が起こる。

 近くに居た生徒が決闘という単語を聞きつけ、それにこの決闘少女が乗っかってしまったのだ。大声で宣言されたその決闘は当然周囲の生徒達にも伝わり、既成事実と化してしまう。


「まあやったらええんちゃう? ウチとしてもアンタの戦うとこ見たいし」

「……あなたが……つまらないだけ、ですよね?」

「そうやけど?」

「……」


 ぬるりと現れた鳥高神も説得に加わる。

 既に周囲はお祭り騒ぎ、既に会場を出ていた生徒も呼び戻され、お利口に席に座っている。あちらでは先程の立会人と決闘少女が何かを話し、そしてこちらに来る。


「朝露咲良、お前はこの決闘を受けるのか?」


 決闘は両者の合意があって初めて成立する。その為こう尋ねているのだが、その表情からはあからさまに「受けて欲しい」という感情が漏れ出ていた。

 彼女はしばらく逡巡していたが、やがて観念した様にため息をつく。


「…………分かり、ました」

「おお、咲良の戦闘が見られるんすね……出来るっすか?」

「まあ、一応……聞いておく、ですが……ここでは絶対に死なない、ですね?」

「安心しろ。全身が蒸発しても問題無い事は既に実証されている」

「なら……受ける、です」


 承諾した瞬間、周囲から大歓声が沸き起こる。最早ここから断る事などどう考えても出来なかった。

 彼女は観客席から降り、土のフィールドに立つ。正面には決闘少女が同じ様に立ち不敵な笑みを浮かべている。


「両者、魔装装着」


 立会人が指示し、二人は同時に魔装へと服を変化させる。

 紫のリボンが付いた帽子を被り、紫と青を基調とした和装を身に着けている。しかし刀は差しておらず、武器らしき物といえば腰に付けた扇子のみ、それが決闘少女の魔装であった。

 それを見た時、最初に思ったのは「露出が少ない」事だった。咲良も少ないが、こちらは更に少ないのだ。へそが出ているなど申し訳程度に露出はしているが……


「……んん?」


 ふと気付く。いつの間にか咲良の右手に木の杖が握られている事に。いつ出したのだろう。


「……? はっ、両者、決闘の口上を」


 疑問に思ったのは立会人も同じ様で、彼女は一瞬呆気にとられていたがすぐに我に返り、慌てて決闘の手続きを行う。


「一年、織主芽有おりぬしめあり。豊玉姫の御力を駆り、堂々たる決闘を」

「……一年、朝露咲良。鳥高……『神』……神の御力を駆り、荘厳たる決着を……」

「「我らの勇姿を見届けたまえ」」


 口上が終わる。

 咲良は一体どんな魔法を使うのだろう、私は少し興奮しながら思考を巡らせる。確か彼女は「山の神」と言っていた。ならば自然系の魔法なのだろうか。

 しかし、普通はこんな契約したてでは大した魔法は使えない。先程の少女は火を操っていたが、彼女は家名から想像するに恐らく"十華族"の流れを汲む者だ。つまり、本当の一般人が魔法を使うのを見るのは今が最初。

 それが一体どの様な感じになるのか。私は気になって仕方がなかった。


「決闘開始‼」


 そして、立会人が叫び──



「"ショックカノン"」



──次の瞬間、咲良の杖の先端から轟音と共に青白い光線が発射された。


「……へ?」


 あまりにも予想外の現象に、私は呆気に取られてしまう。が、時間は進む。その光線は一瞬で会場内を突き進み、決闘少女の居た空間を削り取る。

 理解が追い付かない。何故山の神と契約してるのにビームを? いやそもそも何であんなに魔法を滑らかに躊躇なく使えるの? というか、もしかしてもう終わり?

 周囲の生徒達も同じ事を思ったのか、先程まで騒がしかったスタジアム内は一瞬にして凍り付く──直後、歓声が上がる。


「お、おお……今の避けたんすね……凄いなあ」


 その歓声は咲良に対してではなく、その攻撃を避けていた芽有に向かっての物であった。

 そう、避けていたのだ。目で追う事すら出来なかった攻撃、それも開始直後という半ば不意打ちに近い物をどうやって避けられたのかは分からないが、そこは神格の力なのかもしれない。

 咲良を見ると、一瞬だけ意外といった顔をしていたがすぐに切り替え、再び杖を向ける。


「"ショックカノン" "九連装" "追尾"」

「ッ‼」


 またも攻撃、それも先程のビームを今度は九発同時に発射する。

 圧倒的な"面"の制圧に流石に避けられないかと思われたが、しかし芽有はまたも回避した。だが今度のビームは一味違い、彼女の傍を通り抜けていったそれらは暫く進んだ所でまるで意思を持っているかの様に方向を変え、再び彼女へと向かっていったのである。

 それに対し、彼女は自らの靴底からウォータージェットの如く水を噴射させ、咲良へと急接近するという策をとる。追尾してくるなら彼女に当ててやろうという魂胆なのだろう。

 それは半ば成功し、彼女の背後から接近したビームは再び彼女に間一髪の所で避けられ、通り過ぎたそれらは咲良に当たる直前で搔き消える。自分の魔法には命中しない、という事だろう。

 そして、ここでようやく彼女のターンがやってくる。


「"叢雨簪"‼」


 何故かもう既に考えられている技名と共に、彼女から無数の水の槍が放たれる。

 その数実に数十本。しかしそれらは咲良に当たる直前、謎の紫色の膜によって阻まれてしまう。


「な、何なのあの二人……」

「ホントに私達と同じ新入生……?」

「もしかして先輩が紛れ込んでた?」


 ここまでくると二人の異常性に周囲も気付き始める。契約したばかりだというのに魔法を使いこなす二人。観客席は騒然となる。

 だが、試合は止まらない。咲良はビームを撃ち、芽有がそれを避ける、というのが続いている。


「しっかし……」


 そこで私は気付いてしまった。二人の"差"に。芽有はかなり必死の表情で動いているのに対し、咲良は表情を一切変えていない……しかも、よく見れば開始から一切場所を動いていないのだ。

 もしや、咲良はまだ何かとんでもない物を隠しているのでは──そう思った直後、彼女はとんでもない行動に出る。


「"ショックカノン" "二五六連装" "追尾"」

「え」


 咲良が呟いた瞬間、彼女の前面に膨大な数の魔法陣が形成される。そこに隙間など無く、芽有は目を見開き、そして靴底ウォータージェットで咲良へ急接近しようとする──が、もう遅かった。


──刹那、魔法陣から一斉にビームが発射される。鼓膜が破れるかと思う程の轟音、眩い光。

 それが収まった時、芽有の姿は消えていた。スタジアムに立っているのは咲良ただ一人のみ。


「……へ?」

「あれ……もう一人は?」

「何、今の……魔法……?」


 会場がざわつく。無理もない、まさかこんな新入生同士の決闘で"身体が消える"程の攻撃を見るとは想像すらしなかっただろう。当然私も、だ。

 私は暫く呆然と咲良を見つめ──そして、それに一番早く気付く。


「──ああっ⁉」


 彼女の背後の地面が盛り上がり、そこから芽有が飛び出てくる。彼女の右手には水の槍、咲良は流石に反応出来ない──


──次の瞬間、芽有が紫の膜に包まれる。よく見るとそれは徐々に収縮しており。



 そして咲良は全裸になった。


「えっ」


 え?


「──きゃあああああっ⁉」


 咲良が顔を紅潮させて身体を隠す様にその場に座り込み、芽有を覆っていた紫色の膜が消える。だが芽有は反撃せず、何故か顔を蒼白にしてその場にへたり込むのみ。

 ちょっとまって、状況が理解出来ない。今までで一番理解出来ない。

 何で咲良は全裸になったの? 何で芽有は反撃しないの? 疑問が疑問を呼ぶこの状況、私が目を回していると「ぶべえっ‼」という汚い声が耳に入る。見ると、何故か鳥高神が数メートル程吹き飛ばされ、倒れていた。

 犯人は一目瞭然。咲良はいつの間にか制服を身に纏っており、顔を深紅に染めた彼女はその拳を固く握り締めていた。

 その後三人の間に立会人が割り込み、何やら話した後に試合終了が宣告される。結果は引き分け。

 だが、それが告げられた瞬間、会場のボルテージは最大になった。色々と意味不明な展開ではあったが、それでもあの派手な魔法の応酬は皆の目をとても楽しませたのだ。まあ、私も割と楽しめはしたが……


 色々と疑問が残った決闘。しかし私は考えるのをやめ、咲良を迎えに行くのだった。


 因みにもう観客の大半が忘れてしまった前回の決闘についてだが、比奈が勝利したという事で快人には暫くパンツ一丁で過ごす事が命じられたらしい。

 これは自分と同じ羞恥心を彼にも味わわせるという目的のもと行われ、実際に彼は多少恥ずかしがっていた。が、それ以上に女子達が物珍しさから彼を囲い──彼の身体はよく鍛えられており、単純にその姿がさまになっていてビジュアルが良かったというのもある──嫉妬からなのか比奈自身が中止させた事で結局パンイチ生活は数十分で終わりを告げたのだった。


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