第22話 ツブシチャオウカ‥‥?

「なんか寒くない?」

「え、そう?空調が効きすぎてるのかな?」


「ねえ、なんか揺れてる気がしない?」

「地震?そお?気のせいじゃない?」


 ─────外野の皆さま、気のせいじゃないです。

 絶賛、魔王様(先生)からのイライラオーラで、このビル全体が細かく揺れております。


 先生の「ああ、どうも」というスルー気味の挨拶をガン無視し、男女の二人連れが先生に近寄っていく。


「ね~ね~こんな所で何やってるの~?てか相変わらず一人なのね~」

「何なに?友達?美人じゃ~ん、紹介してくれよ」


 アカン、絶対先生の嫌いなタイプだわアイツ。隣に連れがいるのにも関わらず、ニヤニヤしながら他に近寄っていく空気の読めんタイプ。


  おわ~お前ら周り見てみろよ、空気読んでくれよ、このビル倒壊するかもよ。

 ─────あ、星崎さんダウンですか?普通の人より敏感そうですもんね。先生のイライラオーラの圧に負けて撃沈しました。


「やめなよ~彼女、学校の先生なんだから~」

「うぇ~まじぃ?そうなんだ~せんせ~ぼく気分悪いんで~保健室連れてって~」

「ばかねぇ、やめなさいよ~。それより私達の結婚式のお祝い。三次会後の打ち上げ、もちろん来てくれるよねっ!どうせ一人だし!」

 

『 あ゛ぁっ?』


 ─────うわぁ、なにあの自己中女。 あれが先生の不機嫌の元、祝儀袋の行先ですか。先生が嫌がるのも無理ないわ~俺でもイヤだわあんな人種。近寄りたくないわ~。

 

 先生、冷気と共にイライラ思念飛ばさないでください。 凍り付きそうです、それにしてもあの二人鈍感なの?全然関係ない人達が「なんかおかしくない?」って感づいててざわつきはじめてるのに、まったく気にする様子もない。鈍いにもほどがある。ある意味スゲーわ


「この子、周りに男いないからさ~、紹介してやってよ~」

「え~俺立候補しようかな~」

「も~なにいってんのよ~」


 『 コイツラツブソウカナ‥‥‥‥』


アカン怖いっ!委員長、なんとかしてっ! え?先生のオーラにはじかれて無理? じゃあ、あそこに割って入ってきてよ! お前が行け?確実に逝っちゃうじゃんっ!やだよ !!


 その時、右手側のエレベーターの扉が開き、フローラル臭が付いた服を着替え、片手に紙袋をいくつもぶらさげた男が現れた。

 そしてわかる人には解る、冷え冷え惨状に目を見開いた。


「いたっ!きたきた !! 委員長、大人の人来たよ!救世主だ!」


「勇者だ!勇者が現れた!」


 こちらの視線に気づいた彼に、二人そろってあっちあっちとジェスチャーを送る。


 『ア レ ナントカ シテ !』 


 パタパタパタと委員長と二人で合図を送ると、彼はわかり易く逡巡した。

 解るよ~俺達もいやだもんっ!怖いモンっ!

でも、俺等学生だし? 若いしっ!無理っす無理無理無理っ!


 ─────ってほら制服だし?って二人でビシッて制服の襟を正したら、めっちゃ胡乱な目でみられた。


 やっぱここは、大人男の人がサラッと間に入って、先生の機嫌をめっちゃ取ってくださいっ!


 ─────じゃないと、このビル崩壊しちゃうよ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る