第16話 視えます?

「あなた達何しているの、こんなところで?」


「せんせ~びっくりするから、背後に立たないでくださいよ~」


「声かけたでしょ田中君」


コツコツと靴音を鳴らしながら、相対する二人組をチロリと見やり、委員長は先ほどまでの経緯を先生に説明した。さすが先生、委員長の『認識阻害』が効いてなかったらしく、さっき委員長が眩しいテロをしていたことはバッチリ見られてた。


 微妙な空気の中、二階堂委員長が名刺を献上するように先生に渡す。内容を確認するなり、「ほほほぉ~ん」と俺等と同じような反応をしてきた。


「こっちが本物だそうですよ」


 七瀬さんがもう一枚の名刺を追加する。 瞬間、先生の眉毛がぴくっとしてた。


「学生相手に、怪しげな勧誘は困るんだけど」


「いやいやいや、そんな事は書いてないよね」


 うん、書いてはいない。ただ『拝み屋』なんて職業が書かれた名刺なんて見れば大抵の人はそう思うだろう。高そうな革靴にかっちりスーツ。うさん臭さ倍増詐欺師である。


「では、この子達に何の用なのか聞いても?」


「いやぁ、この子達もおおいに関心がわいたけど、俺達が探してたの君みたいなんだが、僕に前会ったよね?」


「────勧誘はお断りなんだけど」


「あれ、なんか冷たい。もうちょっと聞いてくれても‥‥‥‥」

「あなたが下手なナンパ台詞、言うからですよ」


 男二人組の様子を眺めていると、チョイチョイと二階堂委員長が俺をつついてきた「あれってさぁ‥‥‥‥」と七瀬さんも「わたしもちょっと思った‥‥‥」と三人でコソコソ話が始まる。俺は、マジ?ってなったがクルっと振り返って「はいはいはーい」と挙手しながら大人の会話に割り込んでいった。


「しつもーん!先生に会ったっていつの事ですか~?」


「え~と、一昨日の夜。───だね」


 ぶった切りの質問にも、彼は連れと目で確認しながら答えてきた。何やら彼は自信があるようだが、先生の眉間にはしわが寄ったまんまだ。


「やっぱり、そうなんじゃない?」

「神推しだよね?ちょっと先生の相手には、能力に難有りじゃ‥‥‥‥」

「でもさ、普通人じゃダメって事なんじゃない?先生も結構ヤバ‥「何の話よ?」」


 眉間にしわが寄ったまんまの先生に、俺は笑って誤魔化しながら  


「───先生、たぶん一昨日の夜出会ってますよこの人に」


 ─────何したんですか?と聞けば心当たりがないらしく、彼を眺めて首が左に右に揺れる揺れる。しょうがないので、委員長の技使ったりしませんでしたか?と囁けば「あっ!」と心当たりがあったらしい。「ちょっと道の邪魔だったからさ‥‥‥吹っ飛ばしちゃったんだけどね‥‥え?人なんかいたっけ?」なんかいろいろ残念な先生がいた。


「先生たぶんアレですよ」

「アレ?」

  

「「「ご褒美」」」 


 俺等の答えに先生は一瞬固まった後、また首が右に傾いた


「ん────それってどうなんだろう?そもそも‥‥‥‥私この人よく視えないんだけど。大丈夫なの?生きてる?」


 先生の発言に二階堂委員長は首をかしげたが、七瀬さんは先生の言っている意味がわかったらしい。


「眼鏡かけてる人は大丈夫だけど、もう一人はブレてる感じですよね?」

「そうそう」

「俺の視力が悪くなったわけじゃないんだ。よかった~」


「え、僕には何言ってるかわからない」


 一人見え方が違って悔しそうな二階堂委員長に、眼鏡とってみ、と提案する。

裸眼で見て見ると、二人の言っている意味がわかるらしい「ホントだ」と裸眼と眼鏡を比べてる


「それにさっき委員長が散らしたのに、また集まってきてるよね?この霞みたいなやつ」


 さっき二階堂委員長がきれいさっぱりとはいかなかったが、吹き飛ばした黒霞はまた徐々に彼の周辺に集まり始めていた。


「先生としては、どう視ます?」


俺が訊ねると、先生はまた眉間にしわを寄せながら、彼をもっとじっくり視ていた。


「なんか魂?中身?がブレてるように視える。なんだろうねコレ?なんか大物が憑いてる?呪い系かな?そっち系は細かいし面倒だからあまりやった事ないけど、これって最終的に連れていかれるんじゃ‥‥‥‥」


 二人に向かって言うと、心当たりがあるのか無言で見合っている顔色が悪い。


「で、田中君メッセージ来てるんでしょ?何て?どうしろって?」


「いやそれが‥‥‥‥」


 メッセージは確かに来たが、いつもの月読様じゃない?から勝手がわからない。

 俺達に何を手伝ってほしいのか、わからない状態なのだ。


ピロン♪ ピロン♪ ピロン♪


─────俺の『神フォン』が鳴り響いた。

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