第15話 うさんくさい?

 どうも、自分達こういうものです。とメガネの人から、二階堂委員長は名刺をもらった。国内でも有名な某企業の顧問とか書かれているが、三人でそれを覗き込んで「「「 ふぅぅ~ん 」」」と不信感バリバリ反応を見せた。


 俺は一応、膝から崩れてるお兄さんにも「お兄さん名刺ちょーだい」と、かる~く声をかけて名刺をもらった。ふむ、こちらも以下同文である。


「「「 へぇぇ~~ほほぉぉ~~ん 」」」


 三人仲良くハモリ返事をしたら、無言でもう一枚おかわりがきた。


 名前の上に─────『拝み屋』


「おーきたきた!胡散臭いヤツ!」

「田中、本音漏れすぎ」

「そこは陰陽師とか名乗るんじゃないの?」

 

 期待させられた分、残念感を惜しまない七瀬さん。委員長様、あの人も本音只漏れです。


「あそことは、イマイチ馬が合わないものでね」


「本当にいるんだ、陰陽師」


「いますよ。で、君たちは何者か聞いてもいいかな?」


「俺等────?」


 名刺を両手で持ったまま、三人そろって首を傾げた。

 あちらが本物の『拝み屋』という人種からしたら、それを知ってもなお「そうなんだ~へ~」と冷静な反応をする高校生は非常に胡散臭いだろう。

 ─────でも、俺等は何と言おうか‥‥‥‥。


「こっちの手の内見せたんだから、教えてくれてもいいと思うんだけど」


「コレが見える人間なんてそういないんだよね、しかも複数人。ひょっとしてまだまだいるとか?」


 座り込んだ彼は、片手をヒラヒラさせながら自分にまとわりついた霞を離そうとしたが、あまり離れなかった。


 ─────ピロン♪


 一瞬の静寂の中、俺の『神フォン』が鳴った。


 委員長と七瀬さんから「マジかよ」という視線を貰いながら、俺はおそるおそる『神フォン』メッセージを覗き込んだ。


『ゴメン ちょっと 手伝ってくれない?』


 短い一文。しかも、どちらさんからか分からない。三人でメッセージを確認して無言で顔を見合わせた。そして更に ピロン♪ とメッセージが追加された。


『その二人なら、君たちの事そこそこバレても大丈夫!大丈夫!問題ないよ!』


「これ月読様じゃないよね‥‥‥‥」

「そこそこって、また微妙なラインを‥‥‥‥」


「そうか、とうとうこの日がきたか‥‥‥‥」


 覚悟を決めた俺は、天に人差し指を上げながら、高らかに宣言した!


「ぼくらは─────勇者だっ!!」


 ててーん、と効果音も追加されない寒い一言が、両者の間に落ちた‥‥‥‥。


「‥‥‥‥‥‥‥‥こ、高校生だと思ったんだけど」

「あれ‥‥‥‥中学生だった‥‥‥‥?」


 ‥‥‥‥あ、もしかしてあの病気にかかってる?って遠回しに言われた。


「‥‥‥‥田中」

「田中君‥‥‥‥」


 えっ?なんでお前らまで残念な奴を見るような顔してんの?お仲間じゃん!泣くよ俺!


「ん゛ん。まあ‥‥‥‥いいや、僕らはそんな感じの者だと思ってもらえれば。他に例えるのがないんで。不本意ですけど」

「なんだよ、いいじゃん」


 二階堂委員長に俺がぷんすこしていると、委員長が突然、呪文が唱えた。


「『爆 光 炎』!!」


 ウォンと魔法陣が地上に走り、座り込んだ彼に飛んで包んだ


 ぶわっと光が彼を包んだかと思ったら、一瞬のうちにパァ──ンとはじけた。


「全部は逝かないのか」


 突然魔法を放った委員長は、結果に不服のようだ。

 彼を包んでいた黒い霞は消し飛んだが、きれいさっぱりとはいかず、半分ぐらい残った。


 ────え?なにこの人?躊躇なく魔法を放ったよ。人目のつく公園で、え?『認識阻害』で周りに気づかれないようしている?いつの間に?え?俺の宣言の後? ‥‥‥‥そこは宣言前でお願いしたかった‥‥‥無理ですね‥‥‥‥ハイ。


 魔法を浴びた彼はびっくりしたように両手を見ている。メガネの彼は心配そうに声をかけるが、聞こえてないようだ。


「‥‥‥‥同じだ」

「なんです?それより大丈夫なんですか?」


「俺がこの前にくらったのと同じ『技』?『術』?」


 彼の一言に、俺等三人が固まる。 


「前と同じ?くらった?」

「今のは、僕のオリジナルの『術』なんだけど‥‥‥‥」


 困惑する俺と、二番手扱いに不服そうな委員長様の間に、七瀬さんが割って入った。


「いるじゃん!私たちの技、完コピして試してる人が!」


「「────あっ!佐藤先生だ!!」」


「なに?呼んだ?」


突然背後に現れた先生に、俺らは盛大に高い叫び声をあげた。

せんせい~びっくりするから、 急に背後に立たないでください~っ!

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