第14話 霞んでる?

「無視できない単語が聞こえたんだけど」


 ────おおっと、俺らの会話のトーンがちょっと大きかったようだ。

 たしかに物騒なワードが飛びましたからな、気になって当然でしょう。


「え?どうかしましたか?俺らに何か用っすか?」


 一応すっとぼけてみるけど、無言でじーっと見られた。あっ駄目のようです。


「───星崎。不審がられてるぞ」


 声をかけてきた人の後ろからもう一人が近づいてきた。さっき座ってた人か、結構背が高い‥‥‥‥‥‥?


「あれ?」

「ん?」

「ええ~何コレ?」


 ────お顔がはっきり視えませんでした。正確には、上半身が黒い霞に隠されているようだ。


「コレって言われると傷つくな~」


「あ、スイマセン。えっと‥‥生きてますか?」


「‥‥‥‥」


「田中、それもダメだ」


 顔の見えない彼は困惑して、自分の連れに確認してみた。


「俺は死んでるように見えるのか?」

「‥‥‥とりあえず生きてると思いますけど‥‥」


 確認しあう二人をよそに、俺らは珍しい光景に興味津々になってきた。


「さっきの車に乗ってるんじゃなくって、この人に乗ってるんだ」

「すごいね~。人間あんなに憑けてても、生きていけるんだね」

「いや、この人だけだと思うよ。たぶんその手の人でしょ?」


「あれ?それじゃあ失敗しるって事じゃない?」

「田中君、そんなにはっきり言っちゃダメだと思う」

「そうだぞ。この人が可哀想だろう?」


「‥‥‥‥最近の高校生は。何というか、キビシイ」

「俺なんか泣きそうなんだけど。俺ら高校生の時、あんなだったか?」

「あなたは別の方向でとんがってましたよ」


 それはそれは大変でしたという彼に、そうか、ゴメン。っと項垂れた黒霞の人。

 この人の気配どっかで感じたんだけど、どこだったかな~?つい最近だよな


「君達、あそこの高校の生徒ですよね?」


 星崎と呼ばれた男性が、俺らの学校の校舎を指さした。そこには俺らの教室もかろうじて見えるところで─────


「─────あっ!わかった!」


 突然大声を出した俺に、全員の視線が集中した。


「この人アレだっ!教室に入ってきたヘンなのとばしてきたの!」


「あーあれね」

「あれって、佐藤先生に蝿扱いされたアレ?」


「‥‥‥‥蝿、蝿扱いされたの?アレ?‥‥‥‥俺ガチで泣きそう」


 一人ブツブツ言いながら黒霞の人は、わかりやすく落ち込んだ。霞が更に増したのだ


 なんだが可哀想になってきたので、自分は白い鳥のように見えたと答え、ちょっと素手で払ってみたが、ふわっと散らかるだけで、また元の状態もどってしまう。

 んー俺じゃあんまり消せないや


「ちょっとお互い話し合いましょうか」


「そうですね。このままだと収まりませんものね」


 メガネ同士お互いくいッと眼鏡を正して、二階堂委員長は他の三人を見た。


 黒霞の人はガックリ膝から折れている。その周りで七瀬さんが田中に、コレで仰いでみなさいよと何かキャラクター物っぽいうちわを渡している。


 ○〇パワーで力が増幅されるかもっ!と、謎台詞をむふーんむふーんと鼻息荒くはく七瀬さんに田中は「え‥‥なんか出るのコレ」とドン引き。─────なにも出ないよ

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