第12話 野性の感?
「───ええっ!?」
「マジか!?」
追跡型の式神が入っていったのは、市内の高校の敷地内だった。
ただ今、時刻にして平日のまっ昼間。入ろうものなら確実に不審者案件だ。
「これはちょっと‥‥‥‥」
「どこまでいった?」
敷地のギリギリを回りながら、行方を追っているたが ついっと校舎の開いている窓から、式神が入ってしまうのが見えた。
─────パアァン!!
「せんせー、そりゃないっすよ~」
「は?なに?蝿でしょ蝿」
「え、蝿って‥‥‥‥」
風に乗って、途切れ途切れに会話が聞こえてくる。
式神が入った窓から、パンパンと何かが捨てられた。
ひらひらと風に乗って舞い散る元式神。見事に木端微塵にされ、紙吹雪以上の粉雪状態。
「え?マジですか」
その光景に驚いて振り返れば、隣にいたはずの彼がいない。はっと足元にを見れば見事に目を回した彼が転がっていた。
先生が出席簿ではたいた物を外にポイしていたら、窓際席の八乙女が窓を開け、周囲を見渡し身を乗り出した。
「私の授業中にいい度胸だっ!」
うなる右腕、ビシィと回転しなら飛ばされたのは、教師アイテム白チョーク。
うわぁ回転しながら変な雲引いてるよあのチョーク。そして舞い散るプリントと教科書。
バァン─────!バチバヂィッ
「‥‥先生、僕じゃない思うんですけど」
狙いの隣にいた二階堂委員長。防御の陣を展開しながら防いだが、まだ勢いを殺しきれずチョーク本体がヂリッツヂリッと震えている。煙出まくってるけど。
「アカン。火災報知器が作動する」慌てて周りの皆が風魔法で煙を外へ排出し始めた。
「ごめーんうまく当たらなかった~」
「当てる気なんですか‥‥‥‥コレ」
二階堂委員長がドン引きしているなか、「え?これぐらいでないと君たちには効かないじゃない」もうちょっと回転数あげるか~。としれっと言ってくる先生が、何だが怖いです。
先生のレベルも怖いんですが、あの威力を受けて放たれて形を保っていられるチョークはなんなんでしょね?もはやチョークという名の違う何かなのかな?
「八乙女~。お前のせいでプリント散ったじゃないか~」
「私のノートがどっか行った~」
「八乙女のせいで前髪崩れたじゃん~」
「え?それ俺のせいなの?いや、そうじゃなくてさ先生。今のなんか変じゃなかった?」
「変?どこが?」
「蝶々でしょ?」
「え?私なんか白い塊にしか見えなかった」
「俺、何も見えなかったけど」
「え~なんかこれぐらいで、変な気配してたじゃん」
これくらい、と八乙女君が手で大きさを示した。大雑把な性格なのだが、野性の感なのか変な気配を感じたのだと説明するが、イマイチみんなの反応が芳しくない。
「だから蝿でしょ」
ふんっと自信満々の斎藤先生。
「‥‥いや‥‥蝿デカすぎ‥‥もう、いいです」
『八乙女があきらめた』どうした、いつもはもっと頑張るのに。
「俺はなんか、こう、鳥みたいに羽根が生えてる感じに見えたんだけど」
もちろん本物の鳥じゃないけど、俺がそう付け加えると八乙女君が泣きながら激しく抱きついてきた。 やめれ、暑苦しい。七瀬さん目ぇガン開きはやめてください、ちょっとしたホラーです、怖いです。
そんな風に視えた視えない、視えはしたけどうやら個人によって見え方が違うようだ。
「え?じゃあ何か判らないものが窓から入ってきたって事? え~勘弁してほしいな~ 捨てちゃったじゃない。──あれ?まさか田中君ひょっとして『神フォン』に連絡が来たりしてないよね?」
「────へ?ないですよ。え、やめてくださいよ」
「え、まさかのフラグがたっ‥「「やめろ」」」
「こっちの世界では私もちょっと‥‥‥‥」
「あの姿を誰かに見られる可能性があるなんて、マジ無理」
「え、こっちの世界パターンがあるの?」
「現実は結構厳しいわ‥‥‥‥」
「俺、妹に見られでもしたらマジで凹むからな」
「お前の妹かわいいもんな‥‥‥‥小学生だけど」
「お前‥‥‥‥」
勇者のチートなんてものは、現実にはこんなものである。
新しいポージングの準備か!っとアップしだした五人組がいるが。右斜め角度25度ぐらいにむっちゃ飛びだしていく五人組のお世話は無理です。
散らかった教室に、授業終了のチャイムが鳴った。
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