第9話 下校時刻?となりました
でもマジで俺らもヤバいんで、何とかしてください 。
ん? 『神フォン』に直電が入りました。
─────あ、 お久しぶりです。 はい、あ~はいはい。 え、ホントですか? はいはい、ありがとうございます。ちょっとお待ちいただけますか?
ピンポンパンポーン♪ 異世界に響く校内放送。
『せんせ────っ 佐藤先生───── !! イケメンに出会える機会を、大国主様から特別枠でくれるそうですよ─────』
「─────えぇ? 本当に?やったぁ」
振り向いた先生の向こうには、綺麗に土下座より土下座した魔王とその手下達が延々とならんでいた。地面よりめり込んだ頭からは、血濡れの出席簿がオブジェのように生えてる。
うわあ。さっきまでの勢いはどうした魔王。
「すいませんごめんなさいゆるししてくださいじぶんごときがちょうしにのってすいませんかんべんしてください‥‥‥‥」
念仏のように唱えられる、エンドレス謝罪アンド土下座。
周りの手下たちもデカい体を縮めて「すいませんすいませんすいません‥‥‥‥」
エンドレス呪文。先生怖かったんだ‥‥‥‥。
「‥‥‥‥せ、先生。 大国主様、一押しのイケメンだそうです。よかったですね」
「ホントに?確実なのよね?」
「直接聞きますか?まだ繋がってるんで」
俺の『神フォン』を手にご機嫌の会話を始めた先生を見て、俺たちは一様に安堵の息を吐いた。マジ怖かった。
「‥‥‥‥ なぜこんなことになったんだ」
テメェのせいだよ。
女性に年齢、スリーサイズ、恋人の有無は聞いてはいけない三大項目だ。踏んだら即死の特大の地雷だ。
でもさすが魔王。丈夫だね~生きてるよ。とはいっても、もう力とかなさそうだ。
ぼこぼこにやられすぎて、削られた魔力とかは人と対して変わらないだろうな。頭から生えてたネジネジぐいんぐいんしていた角もない。さっき「邪魔」の一言で蹴とばされた物体、こいつの角か。うん、一番ヤバいのは先生だ。
もう、魔王はいないようだフツーの人だ。よかったねっ! これ以上ヤラレナイヨ
地雷を踏まなければね。
なんか俺達からの無言の圧を感じたのか、元魔王は無言になった。
メッチャ目では何か言いたそうだが、言わないほうがいいよ~先生まだそこにいるから。
っていうか今なら俺でもボコれるよ。教室掃除用の箒がうなっちゃうよ。
気づけば太陽が一層輝きを増し始めた。
「あ、天照大神様だ」
どデカい朱塗りの鳥居が、地上に顕現しつつあった。
お迎えの転移門だ。あれをくぐれば神界に繋がっていて、迎えてくれる日本の神様に元の世界に戻してもらえるのだ。
やっほい。
「やった~これでスタベいける」
「あ~今回マジ疲れた」
「ホント久しぶりにローリングしたわ。サトちゃんの煽りだったけど」
「あれ?その佐藤先生は?」
「もう先に門くぐったわよ」
「え~俺の『神フォン』持ったままじゃん」
てか先生神様と電話しながら帰ったの?
と、下を見れば出席簿がめり込んだ頭があった。
痛そうだな。まあ同情はしないが、出席簿は返してもらおう。ギューと引っ張ったがかなり力がいった。どんだけめり込んだのこの出席簿。
ぽんっと間抜けな音がしたが、相手は呆けた顔で上を見ている。
「あれは女神か」
お、さすが元魔王。天照大神様の姿が見えるのかい。
潜在能力が高くないと霊格差とかの問題で見えないんだよね。
普通の人はただただ眩しいだけのだ。
「俺たちの神様だ。この世界の女神とやらは‥‥‥‥あ、あ─────いなくなっちゃった、かな?」
「─────はあ?」
驚きの顔でこちらを見るが元魔王、なかなかにボロボロだな。
神様サイドで修行の?やり直し?みたいだから、この世界に今は神がいないじゃないかな、しばらくの間は。
何年かかるのか、何千年かかるのか他の神様が来るのか知らんけど─────
そう付け加えると呆然とされた。俺はただのモブだし壮大な世界のことは知ったことじゃない。
この世界の事は、この世界の人間が何とかしろって事で─────
「よしっ、時間に間にあったな─────全員撤収するぞっ ! 」
「「「「 うぇーいっ ! 」」」」
「帰ろ帰ろ~」
「帰りに毘沙門天様に会えないかな~」
「あ~それだったら私、月読様に会いたいな」
「俺、弁天様に頭撫でてもらいたい‥‥‥‥」
「‥‥‥‥あかんやつがいる」
「俺、道真様にお願いが‥‥‥‥」
「合格祈願か!俺も会いたい!」
え!直接神様にお願いするの?聞いてくれるのかなぁ?いい加減な会話をしながらクラスメイト達は、次々鳥居をくぐって消えていく。
さて、俺も帰って佐藤先生から『神フォン』返してもらわないと、血濡れの出席簿と交換で。あっ半壊された拡声器発見。ガムテでなんとかなるかなコレ。
鳥居を潜る一瞬、後ろを振り返った。
なかなか広大に更地が広がっていた───。
モブの俺の最大のエールだ! ま、まあ頑張れ !じゃあな !!
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