第8話 魔王VS勇者(魔王)?
────ぱきっ。
握られた拡声器の握り部分が、ありえない方向に曲がった。
ひいいいいいぃぃぃぃぃいっ─────!
おっまっ!なんということをっ !
その瞬間俺は、佐藤先生の一番近くにいた。
メッチャ怖い委員長様より、更に斜め上。物理に感じる冷たさ。
瞬間的に天使の笑顔が、地獄の使いのような、とってもいい笑顔に変貌する。周り空気も気配もゾンッと一気に低下して、リアル足がガクガクするのだ。
魔王は姿通りの年齢ではある。魔力はバンバンあろうが、角がグイグイ生えていようが、見かけ通りの年齢である。
───── 一応彼の名誉のために言っておこう。
ピッチピッチの高校生でも小学生から見たら、十分おっさんおばはんの部類に入るのである。繰り返す。高校生でも小学生から見たら立派な年寄りなのである。
他のクラスメイトたちが必死で作り上げた防空壕に逃げ込んだ俺は、他のモブ要員たちと共にみんなに緊急を知らせる。
─────異世界に『防災サイレン』が鳴り響く。
続いて、他の後方要員により、大量の赤い照明弾が上がる
聞きなれない大音量と赤い光に魔王は辺りを見渡したが、もっと混乱しているのは勇者側だった。
『 緊急 緊急!! 佐藤先生 発動 !! 繰り返す 佐藤先生発動 !!レベル
田中の声が、周辺一帯に響く。続けてサイレンも鳴り響いた。
動揺する委員長。近くにいた和泉は、文字通り逃げ出した!
「なんという事だ」
「あかん! ヤバいやつやん!」
「マズイまずいマズイ」
「 退避だ─────!退避───── 急げッ! 巻き込まれるぞっ!! 」
魔王は歓喜した。今までふてぶてしい態度でやってきたやつらが、まとめて逃げ出したのである。何が起こったかはわからないが、まさにやつらは!
尻尾巻いて逃げ出したのだ!!我は勝ったのだ !!
「は、は、ははは ハハハハハ!?─────ボグアアァっ !! 」
何が起こったかもわからない速さで魔王は吹っ飛んだ。
それで止まれることなく、更に転がりつづけ瓦礫にたたきつけられる。
「 今ゆうたヤツ その青臭いけつ八つにしばいたる 」
わあ、本物の勇者様(魔王様)の降臨だ~。
先生の怒気の煽りで、俺のお手製『陣幕結界セット』が吹き飛んだ。うわ~ん。
ガチの佐藤先生の前では、俺たちは生まれたての小鹿並みのプルプルである。
「 ぎょほほほおおおお!キビシ~ 」
「 ぬおおおお───── 」
俺たちのいる防空壕に、和泉と八乙女が顔面スライディングをかまして、ついでにバットも飛び込んでくる。
「 八乙女、バットを放り投げるな」
「 投げてない。チョーク飛んできて、放り出されて、ドラム式洗濯機みたいになった 」
といった彼の背後に火炎がドーンと通り過ぎる。 あぢい
「佐藤先生メッチャキレてるやん。誰や怒らしたヤツ」
「 俺聞いた。 魔王やった 」
「 俺も見たけど、地雷踏んだよな 」
「あのチョークって回転しながら音速で飛ぶんだよな。俺知らなかった」
「出席簿っ鈍器だったんだ。メッチャ重い音してるけど」
「角でやられると頭陥没変形するんでしょ。メッチャ痛そう 」
「俺もアレは食らいたくない」
顔半分だけ外に出しながら、外の様子をうかがう。
みんな佐藤先生の物理な荒れっぷりに、ドン引きしている。ちょいちょい熱風が向かってくるので要注意だ。
おー、今度はヒールが顔面にめり込んだ~そして頭部が吹き飛ぶー
「ヒールの踵に『硬強化』入ってるとか、こわすぎる」
蹴り飛ばす前提だからね。
ふと隣の防空壕を見ると、そこは委員長様が逃げ込んでいた。他のクラスメイトも避難しているようだ。
こちらに向かって合図している 『神フォン』しろって言ってる。
「いやもうしているんだけど返事が」
ちょっと大変なことになってきたので、神様サイドに連絡をしているのだが、まだ返事がないのである。
先生一人、魔王軍団相手にバッチンバッチンやらかして、ホントにバチバチいってるから耳痛いです。
ドタマカチ割ったるーとか。
てめえら全員去勢やーとか叫んでる。
ピンクの集団が出来上がりそうです。
「また祝儀袋がいるとかっ!式に参列しろとかっ!ふざけんなよっくそがっ!」
「あんたどうせ一人だから二次会もよろしくとかっ!そのニヤけた顔がムカつくんだよッ!」
あ、それ魔王関係ないやつ。八つ当たりだな完全に。かわいそうに
だが誰も止められない。‥‥‥‥魔王スマンな。 クラスメイト全員で合掌した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。