第7話 ホット?

 ─────そう、このクラス転移は、先生付きなのだ。ちゃんと最初からいたのです。

 この先生も最初のころは、教師という使命感で大騒ぎだった。─────が、今はもう達観してらっしゃる。

 生徒たちだけでイケイケ~やれやれ~やっちまえ、私は休憩してるからよろしくって感じ。教師としてそれはいいんかい。


「ねえねえ、微〇コーヒー持ってるでしょ?頂戴よ」


「何で知ってるんですか。ていうか、生徒にたからないでくださいよ」


「いいじゃなーい。自分の持ってるの見学してるうちに全部飲んじゃったのよ~後でちゃんと返すから」


 パイプ椅子に腰かけた「あれ?これ、体育館用じゃん」先生に、俺は缶コーヒーをイベントリから出して渡した。先生、パイプ椅子の事は不問で。


「お~ホットのままじゃん! さっすが田中君」


 いそいそと蓋を開けはじめた先生。ちゃんと返してよ~


「それでどう?終わりそう?」


「終わらせますよ二階堂が。今日、その、金曜日なんで‥‥‥‥ 」


「あ‥‥‥‥今日金曜日だったわね」


 哀れ魔王。超優秀委員長様は、皆が引くほどのオタク様。推しアニメの前では魔王も放送開始前のCМ扱いだ。

 繰り出される魔法陣のエフェクトの数々に彼のこだわりが‥‥‥‥あるような、わかるような、わかりたくないような。

 委員長、男から見てもカッコいいヤツなのに‥‥‥‥。


「 チビッ子サイズの魔王なのね。二階堂君ちょっと火力が足りてなんじゃないかしら 」


 とても教育者の発言ではございませんな。

 いつの間にか、我が家の双眼鏡でのぞきながら寛ぐ様は、どこぞの昼休憩中のサラリーマンのようだ。

 まあ、あそこにいるのは


「さすがに魔王なんで、委員長も手こずっているかと ─────よっとっ! 」


  俺はまた、こぼれ魔獣をスイングヒットした。 んふ~ これぐらい俺にでもできるのです。


「それ教室の箒でしょ。ちゃんと返しときなさいよ 」


「 へ~い 」


 俺たちがのんびり会話をしている間に、ゲーマーチームが魔王城の破壊に成功したようだ。

 城なんてもう原型がありません。あんなにでかかったのに瓦礫の山となり果てたようだ。 なんか瓦礫の中から、人型ロボットみたいなのがポージングしながらドッパーンと出てきんですけど。なんかあの五人組に感化されてる子が増えてるのかな。

 本命の魔王は、委員長とタイマンでやりあっているみたいだ。


「 お前らなんか沈めてやるっ !」

「 こんなことをしておきながらただで済むと思うなよ! 」

「 地獄を見せてやる! 」

「 落ちろ!落ちろ!落ちろ! 」

「くらえッ!我の必殺の秘術!」


 響き渡るソプラノボイス。続いていく破壊音


 ─────あの魔王、メッチャ喋る。


 あれかな?言わずにいられないタイプなのかな、俺には無理です。なんか「 まだまだまだぁ! 」とかどこかの熱血野郎みたいな台詞はいてます。

 しかしさすが魔王だけあって、なかなかにしぶとく、さすがの委員長も決め手に欠けているようだ。絵面が大人対子供みたいでひっどいけど。


「う~ん。そろそろ片を付けないと時間が‥‥‥」


「時間?」


「本日の帰還予定時刻は、委員長時間 1600ひとろくまるまるだそうです 」


「‥‥‥‥あ、ら そうなの 」


  先生は俺達がお空を移動している間に、異世界の酒とか珍味を物色して回ってるのだ。金?聞いちゃあいけないね~。

 先生のイベントリに何が入ってるのかなんて、みんな知っててスルーしてます。

  んで、ある程度満足したら、俺達の所に瞬間移動でのんびり合流するのである。


「んじゃ、ちょっと」


 先生が取り出したのは『拡声器』。先生、『職員室』って書いてあるんですけど。


『んん゛っ 二階堂君!もうケリ付けちゃいなさい!そこの魔王君も、いい加減「ごめんなさい」しなさい。勝てやしないんだから、』



「うるせぇっっ! ババぁっっ !! 」

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