どこへ向かえば
田山 凪
第1話
目の前に現れた現実が希望的観測を打ち砕き突如として道が見えなくなった。右も左もわからなくて、いつものように振る舞おうとしてもざわざわとした気持ちは晴れやしない。
できるできると思っていた確信のない、何の確証もない自信なんてのは、挑戦してない人間の妄想と大差ないことだ。
右へ左へ、寝返りを打って数十分に一回、目が覚める。寝苦しい訳じゃない。寝具はまともだ。なのに目覚めてしまう。
どこにもないはずの時計の針が時を刻む音が聞こえる。上の階の物音がなぜか鮮明に聞こえ、外を走るパトカーのサイレンが不気味にさえ感じた。
そうこうしているうちに朝を向かえた。ぼんやりとした窓からははっきりしない光が朝を告げる。朝だと確信するのはスマホの時間を見てからだった。
ひとりぼっちだからか?
未来が見えないからか?
胸のざわめきは今日もしつこく絡んでいる。
ふと、強引に一歩を踏み出してみた。
確信も確証もない一歩は、まるで見えない足場を渡るようだ。
なのに、一歩が踏み出せたとわかった瞬間、さっきまでのざわめきが徐々に落ち着いていくのがわかった。
それは夜中腹痛にうなされたあの感覚とよくにている。いつまでたっても眠れないそんな夜。
でも、ずっと痛いことなんてなかったことは覚えてる。
このざわめきも同じで、今この瞬間は最初よりも静かだ。
なんでおさまったか?
よくわからない。
でも、不安で頭を悩ませて、袋小路に閉じ込められていたから、なんでもいいからと前へ進んでみた。
そしたらおさまりはじめた。
まだ、踏み出した一歩の先はわからない。
ただ、進んだという実感が孤独や未知に対して、強い武器になってくれたんだと思う。
まだなにもわからないけど、とりあえずは進まなきゃ。ひとつの不安で全てが壊される前に。
どこへ向かえば 田山 凪 @RuNext
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