最終章 白黒

前節 頼み

次第に救急搬送の件数は減っていったが、死者数は多く、町民の心の傷ははかりしれなかった。形ばかり十四年前と同じ隔離措置がとられたが、叶明町に出入りのある人のほとんどは祭りに出席し、一次感染だったことと感染力がそこまで強くないウイルスだったからほとんど無意味だった。これは瀬戸和樹を含めたDoc.Iの解毒剤が間に合わなかったということだ。すなわち、和樹の夢がかなわなかったのである。

犯人も隔離のもと、叶明町に閉じ込められていた。しかし、この男の事態はまるで急変していた。昨日の夜である。先生、現町長が真剣な眼差しで僕の家を訪ねた。谷先生が警察に自首したのだ。証拠を自分で揃えて自首をした。死刑が目的だったらしい。しかし、死刑は叶わず投獄されていた。

今日、僕は会いに来ていた。皮肉にも谷先生の解毒剤で感染していなく、話がしたかったからだ。

「おう、奏太か。何をしに来た?」

「死刑になろうと……?」

「ああ」

「生徒のことは?」

「生徒のためを思ってこんなものを見せちまった俺は死のうと思ったんだ」

「俺たちじゃない。今の生徒は?」

「医学に本腰をいれるために、教師をやめてこの3年大学に通っている。そういう意味ではわしも生徒だな。知らなかったか」

「ああ、そうか」

そう言い放った。この冷たさは拓海をも上回っていた。

「待ちな! 和樹に持っていけ」

「これは解毒剤の……」

「そうだ。それと今までありがとな」

といい、3人いるときに開けと言って封筒も渡された。僕は開けずにこらえた。

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