後節 速報
気がつけばタイムカプセルの騒動だけで丸二日使ってしまった。その後も、みんなとの同窓会が開かれたこと以外は例年と変わらずのんびり過ごしていた。同窓会は初めて当時の僕らの担任が姿を見せたことで募る話があり、それなりに楽しめ夜遅くまで続いた。休みはあと三日。そんな中、再び事件が起こった。
「本来の町内放送の時間より早いですが、ニュースを始めます。早速ですが、速報です。昨日、今日で町内の二十数名が頭痛、腹痛、発熱を訴え病院に搬送されています。原因は未だ不明だそうですが、いずれも叶明祭に参加した人だそうです。医師らは叶明祭に参加された人たちに体調管理を呼び掛けています」
!? ここの町民のほとんどは参加してるだろう。しかも二日も経ってから。
「次のニュースです。千明町出身の渡辺颯人(はやと)氏が宇宙への旅券を手にしました。日本人初の民間人として来年四月に日米の共同開発ロケットにのる予定です。明日、生放送でお話を伺う予定です」
!? 颯人が!? 智樹の件で嫌でも疑う癖がついてしまったかもな。でも、あいつ戻ってきてたよな。同窓会にもいたけど、そんなこと一切……。電話してみるか。
プルルルルル
「颯人! ニュース見たよ。すげーなお前!」
「ありがとう。宇宙に行きたくて、地学の強い高校行ったのに。気づいたら活動場所が海になってた。けど、民間の宇宙船の応募を聞いて思い出したんだ。それで、もともと行くはずだったやつが病気しちゃったからって連絡が来たんだ。こういうことがあると半生を振り返るきっかけになるよな」
「確かにお前美術の絵、ロケットと惑星ばっかりだったもんな」
「うん。タイムカプセル埋めようってなったとき、箱をロケット型にしようとしたら、女子たちに怒られて小さなロケットを思い出の品として入れたんだよ。懐かしいなあ」
「タイムカプセル!? え、なんて夢書いたの?」
思いがけぬその言葉に驚愕した。
「そりゃ、もちろん。今とも変わらず『宇宙に行きたい』って書いたよ。だから叶ったわけだな」
「そっか。じゃあ、行くのは来年だろ。その前にまた会おうぜ」
プツー。おい、待てよ。ボタンは壊したんだぞ。おかしいだろ。
ひとまず、タイムカプセルのところまで一人で来てしまった。十年後まで来ないと思ったんだけどな。あれ、あんなに土で固めたのにやわらかい。最初に掘り起こしたときと同じくらいだ。嘘だろ!
目の前にした衝撃を1人で抱えきれる訳もなく、暇を潰しているであろう拓海と彩を呼び出した。
「ふーん。なるほどな。颯人の話を聞いてここへ来てしまったと。そしたら」
「なんでボタンが増えてるのよ! ホラーじゃない。もう、処分も正解かわからないし危ないから触ることすらできないわよ」
「誰かが意図して入れていると考えるのが妥当だな。土が柔らかかったのもその証拠か」
(賢い三人よ。目の前の校舎の教室に来い)
「この声は!」
「この前まで聞こえてた謎の声だ!」
(すばらしい。その通り! さあ来い。これは命令だ)
「行く必要ないだろ。あの声を聞いてボタンを押したから問題が起きてるんだから」
(確かに貴様の言うことは合理的で正しい。ただし、次の言葉を聞けば、お前らは来ざるを得なくなる。そのボタンは俺が作った。俺が作るボタンでお前らの仲間は殺せる)
「なんだと!」
(賢明な判断を祈る)
「行こうよ。奏太。大丈夫。私たちがいる」
「わかった。お互い、身の危険を感じたらお互いを気にせず走って逃げる。いいな?」
「うん」
「行くぞ、拓海」
走り去る2人を見ながら小声で呟いた。
「胡散臭いし、居るとも限らないだろ」
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