四節 天才中学生バンドHERB!?

奏太そうたは本部のテントにいる智樹ともきの元へねぎらいに向かった。

 「智樹、様になってたぞ」

 直前まで智樹にカプセルとスイッチのことを伝えるかを迷っていた。というのは嘘で、実際は心の中では決まっていた。同級生で、何より俺に謎の声のことを伝えた張本人である彼には勿論もちろん、知らされる権利はある。でも、親友が本気で願ってた夢な上、本当にスイッチによって起こったのか不明確だから、そんな曖昧あいまいな情報で智樹を悲しませたくなかったから伝えないつもりだった。

 「ありがとな。俺がこの町を変えていくぜ。見とけよ、奏太!」

 こんなに分かりやすく浮かれてる智樹ともきを見たら、やっぱり伝えられなかった。

 一方、そのとき開祭式が終わり、やぐらの前には特設ステージができていた。


 ビーーン!

 「は~い。みんな~。十年ぶりに天才中学生バンドHERBが帰ってきたよ~」

 「わ~。みおじゃん」

 あやが思いっきり手を振る。澪も振り返す。

「ありがとうー。久しぶりの顔ぶれも来てくれているし、テンションあげていくよー。ファイブ シックス ファイブ シックス セブン エイ」

 「驚いたな」

 拓海がそう呟く。三曲ほど聞いた頃、拓海が小さい声で言った。

 「待って、そういえば」

 何か思いついた拓海たくみがスマホをポケットから取り出す。驚きのあまり彩にすぐさま声をかける。

 「見ろ、あや

 拓海たくみが見せた写真には

 「え、これは?」

 「一応、全員分の夢をカプセルの中から取り出して写真を撮っておいたんだ。でね」

 「え! みおの夢、『仲間ともう一度ライブがしたい』だったんだー。 え!?」

 「うん」

 「もしかして、私がさっき押したから?」

 「そうかもね。奏太そうたに連絡できる?」

 「あれ、奏太といつ別れたっけ?」

 「智樹ともきに会いに行ったよ」

 「そっか。じゃあ、電話かけるね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る