三節 大使としての様

「この度、我が千明町ちめいちょうの特別大使に就任した石田智樹いしだともきと申します。私はかねてからこの街をもっと日本中に世界に発信したい、知ってほしいと考えておりました。今回、えんめぐまれ、大使に就任させていただきましたからには、たくさん世界への挑戦をしていきたいと考えております。私は、この千明町ちめいちょうで生まれ、育ち、いろいろなものを見てきました。十四年前の出来事、今も鮮明に覚えています。あの出来事こそ、残念ながら日本中に名を通した出来事です。ですが、私はその出来事よりもその後に私や子供たちを安心させるためにお父さん、お母さん、学校の先生、地域の人たち、そして町長がしてくれた一つ一つの行動。そこに子供ながらにかっこ良さを感じて、憧憬しょうけいねんを抱きました。町長、これまで本当に長らくお疲れさまでした。新町長や町の新たなたちと協力し、我々若者世代が町を盛り上げていきます。どうか、ご安心ください。そして、皆さま、今後ともこの町をよろしくお願いいたします。今日は楽しく我々らしく過ごしていきましょう。ありがとうございました」

 大喝采だいかっさいの中、智樹はやぐらをゆっくりと降りる。それはもはやふさわしい風体ふうていであった。

 最後に町中の豊作の祈り、事件の再発防止の祈り、そして三人へのとむらいの意を込めて黙祷もくとうが行われて開祭式は閉じられた。

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