二節 櫓の明かり

 この一件で農家らの収益しゅうえきは不作時に相当そうとうするほどまで落ち、子供たちもやがて成長すると町を出ていくようになった。現在、東京で同窓会が開けるほどの人が流れていることの原因であり、それはこの二年、叶明祭きょうめいさいが開かれなくなるほどの少子化へ大きな影響を与えた。そんな中、今年は当時、事件の中、町長として村民とともに菌と戦った町長の退任とあって、かつての町民らを含む多くの人々が集まった。

 静まり返った。夏の寒さの中、太鼓が並ぶ。それを囲うように集まる人々。その中にはもちろん奏太そうたたちの姿もあった。

 ドーン! ドーン! ドドドドカッドードカッ! ドッカドッカカッ! ドーン ドドン! ヤー!

 大きな太鼓の音とともに始まったド派手はで叶明祭きょうめいさいの開祭式。地元の小学生の合唱。太鼓教室の子供たちの演奏。村をあげての開催で、地域のほとんどの施設から灯火ともしびが消えていた。それはまるですべての魂がやぐらの上にあるようで子供たちはもちろん大人も村中の人々の目に景色が焼き付いていく。会は進行し、旧村長から新村長に引継式ひきつぎが行われ、ついに櫓に智樹が現れた。

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