七節 『天変地異』仮説

 「二人とも、少し考えちゃった。これ、とんでもない劇物げきぶつなんじゃないかな」

 急に不安になって言った。

 「どうして?」

 「確証かくしょうはないけど、智樹ともきから電話が来たとき、『長年の夢が叶った』って言ってた。それはこのスイッチを俺が押したことでトモキの書いた『町を復興させる』っていう夢が叶ったんだと思うからだよ。全部を確認したからわかったけど、三十八人の同級生に対して、思い出の品の数はスイッチを入れて三十九個ある。数が合わないし、このスイッチ以外には名前が書いてあるから違いようがない」

「夢を叶えてしまうスイッチ、もし本物なら奏太の言うように相当そうとう劇物げきぶつだな。でも、そんなこと信じれるか。仮にそうだとして、確認のためにもう一度押すか。それとも、タイムカプセルとは別のところに封印ふういんするか。ここを決めなきゃ」

 冷静な拓海たくみもそう続けた。

 「でもさ、もし二人の予想通りだったとしても『夢が叶う』だけなら問題ないし、もし智樹ともきの件がたまたまで関係ないならこのままだし、悪い風には働かないし、押してもいいんじゃない?」

 あやは押したがっている。

 「その通りかもな」

 拓海も賛成した。

 「え! そうだけど、怖いし押さない方がいいよ。やめておこう」

 えい! 奏太の静止も聞かず、彩がスイッチを押した。

 「何も起こらないじゃないの」

 「おい、彩! 何かあったらどうするんだ。そして少し落ち着け。昨日俺が押したときもすぐには何も分からなかった。寝て起きたとき、やっと智樹の件を知ったんだ。何も起きていないというにはまだ早い」

 「悪かったよ。でも、明日までわからないなら、今日はもうさ、お祭りに行こうよ!」

 めずしく怒った奏太に少しうつむいて言った。

 「そうだな。行くとしよう」

 拓海と彩につれられ奏太も叶明祭きょうめいさいに向かうことになった。

 三人の去ったところには拓海が持ってきた工具箱やスコップとともに何かが陰を潜めていた。

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