五節 同窓生

 ぜーはーぜーはー。山はきついな。広い山の中で帽子なんて見つかるか? あれ? 人影ひとかげがある? 誰かいるのか?

 「奏太そうた!?」

 「わーい。奏太だ。おひさ~。奏太も見に来てたんだね」

 「拓海たくみ! あや! 久しぶり」

タイムカプセルを一緒に埋めた中学時代の同窓生たちだ。

 「元気にしてたー?」

 この天真爛漫てんしんらんまんあやは保育士をしている。奏太との付き合いも深い。

 「元気にしてたよ。拓海たくみも戻ってきてたんだな」

 「まあ、俺とはあっちでも何度もあってるだろ」

 拓海もここを出て都会で活躍している人の一人だ。東京に出ている同窓生も少なくなく、上京した同窓生だけで同窓会が開けるほどだ。拓海とはたまたまだけど、東京でもよく顔を合わせるんだ。

 「さて、なぞの声に引き続いて起こった智樹ともきの大使の件について気になったんだね。明らかに変だ。奏太何か知ってるかい?」

「謎の声?」

奏太の頭の中は疑問でいっぱいになった。

「知らないのか? 俺らだけに聞こえる声」

なんのことだ? でもその言葉どこかで聞いたような……!

 [――押したまえ我に近づき少年よ]

そうか!

「そう、正にこれのこと。知らなかった?」

「昨日、智樹に連れて来られて聞かされた。智樹が肝試しを用意してくれたんだと思ってたけど」

「そんなことはないよ。第一、最初の発見者は智樹じゃないし、智樹がいなくても起こるからね」

「そうだったんだ」

 拓海は奏太より数週間早く町に戻ってきていてこの声のこともとっくに耳に入っていたようだ。

「俺たちは謎の声の調査で来てたんだ。でも今日の町内放送を聞いて俺は拓海の件とこの声の件には関係がある気がしてならない」

「でも、さっきの話だとさ、奏太は昨日、声の出てくるスイッチをタイムカプセルの中から見つけて、押したんだよね?」

「うん」

「じゃあ、そのスイッチを少し調べてみたら?」

あやの言葉にしたがいタイムカプセルをまた掘り起こした。

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