四節 知らせの違和感

 [――押したまえ我に近づき少年よ]


  また、あの声だ。押したまえ、これのことだよな。よし、押してみるか。

 ポチ。何も起こらないやん。こんなガラクタを誰が入れたんだろう。もうそろそろ暗くなるし、帰るか。そっと、でもしっかりとタイムカプセルを元に戻した。そういえば、智樹ともきはどこだ?

 「おーい、智樹! もう遅いから帰るぞ」

 「ごめん。急用入ってさ。一人で帰ってくれ」

 トモキはあわただしそうにして走って帰っていった。

 「はあ? なんだよ、急に」

 結局一人で帰省したときとは別の道で町並みを眺めながら帰宅した。


 次の日。

 『こんにちは。今日は二年ぶりの開催となる夏の風物詩ふうぶつし叶明祭きょうめいさいです。都会に出て行った若い町民も本日に合わせてもどってきいます』

 懐かしいな。町内放送か! 帰省する度に聞いてるけど、やっぱり子供の頃を思い出す。

 『ここで速報です。石田智樹氏二十七歳が千明町ちめいちょうのPR特別大使に任命されていることがわかりました。本日の叶明祭叶明祭にて挨拶される予定です』

 智樹がなんで? もしかして昨日、先に帰ったのはこれがあるからだったのか?

 

 ピロロロローン。ニュースが終わって数十分すると、智樹から電話がかかってきた。

 「もしもし、奏太そうた。長らく願ってきた町の復興と改革の一歩目だ。大人になっても自分の夢のために挑戦するものだな。昨日の今日で初仕事だ。いっちょ、頑張るで」

 「昨日の今日!?」

 「おう。こんなにも嬉しいのは十四年前のあの日からの俺が掲げてきた夢だったからだ。叶明祭きょうめいさいで挨拶するから、お前も見に来いよ。じゃあ、祭りでな」

「……」

昨日の今日で、大使っていう大役でできることに違和感を智樹は感じてないのか。

「あ、あとそれと昨日、裏山に帽子を忘れちゃって取りに行ってくれないか」

「いやだよ」

「まーまー」

  プツー。切られた。それよりも、昨日の今日で仕事なんてこと、本当にあり得るのか……? に落ちないまま、智樹の帽子探しに裏山に向かった。

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