二節 ノスタルジックな気分

 「飲もう?」

 そういえば、今年で二十歳はたちだっけ。今年は正月に帰ったきりで、成人式まではいられなかったから弟が飲酒できるようになったことは知らなかった。俺と奏詩そうしは五つ離れてて、だからなのか昔から奏詩は俺にべったりだった。歳が近いとトラブルがあったりするみたいだけど、そういうのはあまりなかった。

 「よし! 飲むか」

 川や畑で遊んだ頃の話をした。帰省したときの話題が毎年変わらないのは気にしない。そういう川や畑とか、自然に触れなくなってから大分経っていたこともあって、涙をこぼしながら、この瞬間のノスタルジックな気分を噛みしめた。

 お盆の帰省初日。奏詩そうしの提案で川に行って釣りをした。奏詩も久しぶりのようで最初は釣れなかったが、俺が先に調子を取り戻して少し川に返すほど釣った。少しすると子どもを連れた親子が来た。せっかくだからと焼き魚を食べさせてくれた。この感じが俺は好きだ。そう、やはりなつかしんでいた。

 家に帰ってから俺は家を出た三年前と未だ少しも変わっていない自分の部屋でゴロゴロしていた。

 ピコン!

 「おい、奏太そうた。お前、実家帰ってきてるらしいじゃん」

 町一番の親友の智樹ともきからの連絡だった。智樹は家を引き継ぎ、ここで石工をしている。

 ピコン!

 「明日の夜、中学校の裏山に来いよ。どうせ暇だろ」

 智樹の言ったように断る用事もなかったし、暇だったので言われたように来てみた。

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