【処女作】呪われた生命

玄瀬れい

序章 謎の声

一節 帰省

 カタンコトン、カタンコトン……

 本当にそう聞こえるんだ。ときどきミシミシとも聞こえる。あまり聞きたくない音。そんなことを考えるほどぼーっとしていた。むしろ、ぼーっとはできていないのかもしれない。今年も、暑さの厳しいお盆の季節がやって来た。都会で一人暮らしをしている俺は、毎年お盆や正月は田舎いなかの実家まで帰省する。実家のある町は農村だ。農村で村そのものも小さい。一方で昔から代々続く歴史のある家が多く、昔の名残なごりで町と呼ばれているのだとか。まー、村でも町でも大きく変わるとは思わない。今年は久しぶりに十年前に一緒に中学校を卒業した同級生たちも、ほとんどが帰省すると聞いていて、俺自身もいつも以上にお盆を心待ちにしていた。今は長旅の疲れもあり、何度も寝落ちしそうになりながらときどき昔の夢を見ていた。

 実家までは駅から大体十分程度。道中、公園や閉まりはじめてる商店街をとぼとぼ歩いた。ただでさえゆっくりなのに遠回りをしたせいで軽く三十分はかかってしまった。実家に着くと、その頃には両親は飯を終えていた。入り口では弟の奏詩そうしが酒を抱えて待っていた。

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